『新聞記者』(19)、『余命10年』(22)といった多彩なジャンルでヒット作を生み出している藤井道人監督が、初の国際プロジェクトに挑んだ日台合同作『青春18×2 君へと続く道』が5月3日(金・祝)より公開される。

台湾と日本、18年前の18歳と現在の36歳。2つの場所と年代を舞台にした1組の男女の青春模様を描いた本作にちなみ、18歳と36歳、またそれぞれに近い年齢の観客を対象とした特別試写会を実施してみると、

「終始感動していて、後半からはずっと泣いてしまいました」(女性・36歳に近い)
「18歳での青春の想い出、36歳での挫折と再出発。そしてジミーとアミの純愛にいろいろな感情が湧いて感動しました」(男性・36歳に近い)
「単なる恋愛映画じゃなくてよかった。涙が止まらなかったです」(女性・18歳)

など世代を問わず「感動した」「泣けた」との感想であふれていた本作。観客の涙を誘う、その魅力についてアンケートに寄せられたリアルな声と共に迫っていきたい。

■台湾の風景も魅力的な思わず胸がときめく青春模様

ワンマンぶりがたたり、自分で起こしたゲーム会社を追い出されてしまった36歳のジミー(シュー・グァンハン)は、久しぶりに台南の実家に帰郷。かつてこの地で知り合った日本人女性、アミ(清原果耶)から届いた絵ハガキを見つけ、彼女との過去に思いを馳せていく。

18歳の夏、ジミーがバイトするカラオケ店に、財布をなくしてしまったバックパッカーのアミが訪れ、オーナーの善意から一緒に働くことになる。天真爛漫なアミにジミーは恋心を抱き、一緒に夜景を眺めたり、映画を見たりと少しずつ距離を縮めていくが、そんなある日、突然アミが日本に帰国することになり…。

ジミーとアミの清らかな初恋の様子が綴られた2人の物語が動きだす台湾のパート。ノスタルジックな街並みや人々の人情味など、2人の恋を淡く演出する異国情緒にあふれる台湾の風景もまた魅力的だ。

「ランタンを飛ばすシーンがロマンティックできれいだった」(女性・36歳に近い)
「映像も2人の演技もすごくよかった」(男性・18歳に近い)
「美しく青春だと感じた」(女性・36歳に近い)
「言葉がなくても2人の想いが通じ合っていく様子が心に残った」(女性・36歳に近い)

と印象的なシーンとして多くの観客が挙げたランタンフェスティバルを筆頭に「アミと2人でバイクに乗ってたシーンが青春だなと感じた」(女性・18歳に近い)「台湾のあるあるでキュンキュンした」(女性・18歳に近い)といった声が寄せられた夜の台南を駆けるバイク2人乗りなど、美しい景色で繰り広げられる青春のひと時には年齢関係なくときめきを覚える人も多かったようだ。

また「心躍るシーンのジミーがとにかくかわいかった」(女性・18歳に近い)「鏡に向かって告白の練習しているシーンがかわいかった」(女性・36歳に近い)というジミーの舞い上がり方や、「若い時よくやったことなので懐かしいです」(女性・36歳)とのワイヤー付きイヤホンのシェアはどの国でも変わらない若者の“あるある”。チャーミングな様子には思わずほっこりさせられてしまうことだろう。

■ジミーの旅に意味を与える、日本での数々の出会い

若者たちのひと夏の青春がみずみずしく描かれた台湾パートに対して、日本を舞台にジミーが人生を向き合っていく様子が静謐なトーンで描かれる36歳のパート。若かりし日のひと夏の恋から18年が経ち、人生につまづいたジミーはアミが生まれ育った日本への旅を決意。東京から鎌倉、長野、新潟へと足を運び、その道中で様々な一期一会を繰り返していく。そしてアミの故郷、福島へと向かい、18年前、突如、日本へと帰ってしまった彼女の本当の想いに触れることになる。

「旅先で出会う様々な人との会話はどれも印象的でした」(女性・36歳に近い)「新しい出会いがいろいろな思い出をよみがえらせていてとてもよかった」(男性・18歳に近い)と寄せられたように、ジミーをランタン祭りに連れていくネットカフェ店員の由紀子(黒木華)や、アミが生まれ育った町に降り立ったジミーを生家まで送り届ける中里(松重豊)など人との交流が旅を続けるジミーに重要な意味をもたらしていく。

例えば、松本の居酒屋の店主で台湾出身のリュウ(ジョセフ・チャン)がジミーにかける「一休みはより長い旅のため」という言葉。これには「休んでみることも大事だと思わせてくれました」(女性・18歳に近い)「共感を覚える言葉でした」(女性・36歳)など、劇中のジミー同様に心動かされた人も多かったようだ。

なかでも「一期一会を感じて好きなシーンでした」(女性・36歳に近い)など観客から多くのコメントが寄せられていたのが道枝駿佑演じる幸次とのシーン。長野県を走る飯山線で一人旅をするノリのいい18歳の若者、幸次と出会ったジミーは、トンネルを抜けた先に広がる雪国の景色にかつてアミと見た日本映画『Love Letter』(95)を思い浮かべると、幸次の提案で電車を途中下車。降りしきる雪のなか、思い出を語っていく。

「幸次との雪のシーンが幻想的できれいだった」(女性・18歳に近い)
「電車のトンネルを抜けた時に広がる雪の景色がとても神秘的でどこかその先の切なさを感じて印象に残った」(男性・18歳に近い)
「トンネルを抜けた先での雪景色のシーン。音が消えて、観ているこちらまで吸い込まれそうで強く印象に残っている」(女性・18歳に近い)
「幸次は18歳として当時のことを思い出させるキーパーソンだと思った」(女性・18歳に近い)
「トンネルを通って白い景色が広がり『ずっとこの景色を見たかったです』と言ったシーンが印象的」(男性・36歳に近い)

若者らしい幸次との触れ合いからかつての自分を思い出す物語にとっても重要な一幕は、雪化粧の美しさとも相まった印象的な場面として多くの人の心に残ったよう。そんな旅もついにアミの故郷へと向かい、ジミーの旅の意味が明らかになる。自分の歩んできた道を確かめるような旅路のラストは観客にも様々なことを考えさせる。

「ジミーが心のなかで(幸次を)『二度と会うことのない友人』というシーンは、会うだけが友情ではないという初めての考え方を知った」(男性・18歳に近い)
「旅へ出ることの意味には様々な想いがあると感じた。自分探しだけでなく青春を終わらせるシーンが印象に残とった」(女性・18歳に近い)
「生きてきた道を確かめる旅。自分の生き方を振り返ってみるのもよいなと思いました」(男性・36歳に近い)

■美しい青春を体現したW主演の演技に心奪われる

台湾と日本で繰り広げられる恋模様は多くの観客の感動を誘っているが、それもせつない青春を体現したW主演のグァンハンと清原の存在があってこそ。2人の演技には多くの絶賛が寄せられている。すでにアジア圏で大人気なグァンハンは、日本語を操りながら18歳と36歳のジミーを1人で演じ分ける演技力がすばらしい。

「初めて拝見した俳優さんでしたが、とても人の心を惹きつける演技をされる方だと印象的だった」(女性・18歳に近い)
「台湾俳優の演技を初めて見たけど、自然体でよかった」(女性・36歳に近い)
「演技がすばらしかった」(男性・36歳に近い)
「同じ人が演じていると思えないくらいいい感じに歳を取った感じでした」(女性・36歳に近い)
「18歳の不器用さの表現が非常に印象的だった」(男性・36歳に近い)

とのコメントにもある通り、本作をきっかけに認知を広め、さらにの多くの日本のファンを魅了していくことだろう。一方の清原も天真爛漫なバックパッカーのアミを好演しており、チャーミングな演技が光る。

「少し年上でからかうお姉さんを見事に演じていた」(男性・36歳)
「演技が上手すぎて引き込まれた」(男性・18歳に近い)
「大人なアミと年下男子のジミーの組み合わせがよかった」(女性・18歳に近い)

青春の物語にふさわしい透明感のある表情はもちろんのこと、これまでのイメージとは一味異なるどこか“お姉さん”な一面も覗かせており、心惹かれる演技は劇中のジミーのみならず多くの男性の心を奪ったよう。明るい表情にふと影が差すさりげない演技など、秘密を抱えるアミの繊細な内面をさりげなく匂わせる演技は見事だ。

■何度も観て理解したい深みのある物語

2つの年代を行き来しながら青春のきらめきとその行く末を描く本作は終盤にある事情が明かされることもあり、「何度でも観たくなる内容でした」(男性・36歳近い)など、観返したくなる一面も持っている。

「十数年後にもう一度観て、人と出会うことの大切さを思い出したい」(男性・18歳に近い)
「いろいろなキャラクターからの視点で観てみたいなと思いました。一回ではわからない考察ができそうですし、旅もしてみたくなりました」(女性・18歳に近い)
「アミの立場でもう一度観てみたい」(女性・36歳に近い)
「今度はアミの視点で観てみたいです。その次は細かいところに意識を向けて観てみたいです」(女性・36歳に近い)

物語の大半がジミーの視点から描かれるだけに、アミの視点から物語をもう一度作品を観たいとの意見も。彼女がどんな気持ちで旅をし、ジミーと接していたのかを考えながら観れば、その青春の儚さがより深みを増すことだろう。

またジミーとアミがデートで観た岩井俊二監督の『Love Letter』など随所に登場する日本のカルチャーの内容を知ってより本作への理解を深めたいという熱心なコメントも多く、それだけ本作が心を揺さぶる作品であることがわかる。

「『Love Letter』とつづけて観たいです」(女性・36歳に近い)
「岩井監督の『Love Letter』を観てから、再度観ると見るものまた違うのかなと思いました」(男性・36歳に近い)
「Mr.Childrenの主題歌『記憶の旅人』でやられました。次は歌詞と重ね合わせながら観てみたいです」(男性・18歳に近い)

2人の若者の初恋をせつなくも優しい包み込んでいく本作。「好きな人と一緒に観たいと思った」(女性・18歳に近い)「人生の節目節目に観たい作品」(男性・18歳)「あの時に場所に行ってみよう、あの人に連絡してみようという気持ちにさせてもらえる」(男性・36歳に近い)などの言葉が並んでいたように、鑑賞後は、これまでの人生で出会った大切な人をふと思い出したくなるような普遍的な感情を描いており、どの世代の人が観ても共感を覚えることだろう。

構成・文/サンクレイオ翼