1968年に一大センセーションを起こして以来、シリーズ化やリブートによって世界中の観客を熱狂させてきたSF映画の金字塔「猿の惑星」。そのシリーズ完全新作『猿の惑星/キングダム』が、いよいよ5月10日(金)より公開される。

シリーズ未体験者が観ても楽しめる本作は、最新鋭のVFXを用いられた緻密で壮大な世界観や、伏線が張り巡らされたドラマ、シリーズならではの衝撃のラストまで見どころが盛りだくさん!今回は、 “映画紹介マンガ”でおなじみの大友しゅうまによる描き下ろしマンガと共に、『猿の惑星/キングダム』の魅力を紹介していく。

■『猿の惑星/キングダム』で描かれるのはどんな物語?

「猿の惑星」シリーズは、知能の著しい発達により言葉を話すようになった猿が、文明崩壊を経て衰退の一途をたどる人類を支配しているディストピアの物語だ。人類にしてみれば、まさに悪夢のような世界。なぜ、こんなことになってしまったのか?シリーズはそんな未来を、濃密な恐怖とスリル、エンタテインメント性を盛り込みつつ描いてきた。

さて、注目の最新作『猿の惑星/キングダム』は、どんなストーリーになるのか。舞台となるのは、いまから300年後の未来。ウィルスの流行によって多くの人類が命を落とし、文明が滅んでしまっている。生き延びた人々の大半はウィルスの影響で話すこともできないほど知性を失い、動物的に暮らしていた。

一方で、知性を得た猿たちは巨大な帝国を築き、人間を迫害していた。その中心にいるのが、独裁者プロキシマス・シーザー(ケヴィン・デュランド)。“進化”は人間ではなく猿を選んだと信じ、帝国を強力なものにするために人類を徹底的に追い込む冷徹なリーダーだ。
しかし猿たちのなかには、そんな帝国主義に疑問を抱くものもいる。若い猿ノア(オーウェン・ティーグ)はプロキシマスの支配により、棲んでいた村や家族を失った後、残された仲間を救おうと旅をしていた。その矢先に出会ったのが、人間の女性ノヴァ(フレイヤ・アーラン)。人間のなかで誰よりも賢いとされる彼女は、プロキシマスの最優先ターゲットとなっていた。それも当然で、ノヴァは人類と猿の立場を再逆転させかねない、ある秘密を握っていた!かくしてノアとノヴァは協力し合い、帝国支配に終止符を打つべく戦いに挑んでいく。

猿に支配された世界のビジュアルは、シリーズ最大スケールと呼ぶにふさわしい。「アバター」シリーズをはじめ多くのヒット作を手がけてきたVFXスタジオ、WETAデジタルの最先端の技術が光る。この強力な“武器”を得て監督を務めたのは、「メイズ・ランナー」シリーズで知られ、人気ゲーム「ゼルダの伝説」の実写化に取り組むことが決定しているウェス・ボール。猿と人類の種を越えた共闘を描きながら、ドラマチックな物語を演出する。はたしてノアとノヴァは帝国を打ち破ることができるのか!?完全新作として描かれる新たな“猿の惑星”に注目だ!

■これを読むともっと楽しめる!「猿の惑星」リブート三部作をおさらい

「猿の惑星」シリーズとしては7年ぶりとなった本作。完全新作となるため、本作だけを観ても十分に楽しめるが、2010年代に製作され、高評価を得た三部作とは世界観を共有している部分もあるので、この3作を知っていれば、より本作を堪能できるに違いない。そこで、このトリロジーについて簡単に紹介しておこう。

2011年に製作された『猿の惑星 創世記(ジェネシス)』は、人類と猿が逆転した起源を描く物語。製薬会社に勤務する科学者がアルツハイマー病の新薬を開発。これを投与された実験用の雌の猿の知能が向上した。この猿の仔であるシーザー(アンディ・サーキス)は、母の高度な認知機能を受け継ぎ、科学者の家で飼育される。しかし人間を傷つけてしまったことから施設に送られ、冷酷な職員に乱暴されてしまう。人間に対して絶望したシーザーは研究施設に侵入して新薬を奪い、ほかの猿にも薬を与えることに。かくして、知能を得た猿は横暴な人間に反旗を翻すことになるのだ。

実は、この新薬は人間にとって危険なウィルスとなりうるもので、研究施設からの漏洩により“猿インフルエンザ”と呼ばれる死の病が瞬く間に広まった。このパンデミックによって、文明社会の壊滅が始まっていく。2014年製作の第2作『猿の惑星 新世紀(ライジング)』は、そうしてディストピア化する世界が舞台だ。シーザーは知能を高めた猿たちを率いて森の中で静かに暮らしていたが、そこに人間の生存者が水力発電を求めてやってくる。猿たちのなかには人間のせん滅を訴えるものもいたが、シーザーは不干渉の方針を取る。一方、人間の側にも武装して猿との戦いを訴える者が現れ、戦争は避けられないものとなっていく。

続く第3作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(17)では、猿と人間の戦争が激化。シーザーは妻と子を殺されたことから深い恨みを抱き、人間の軍の大佐に復讐するべく群れを離れる。一方、人間の軍勢には深刻な分断が生じていた。変異した“猿インフル”に感染した人間は言葉を話せなくなるばかりか、知能を奪われて動物化してしまう。大佐はその蔓延を防ぐため、軍に反旗を翻して新規感染者を抹消していた。猿たちは大佐の反乱軍に加え、正規軍をも相手にしなければならない。それはシーザーにとってラストスタンドとなり、この三部作は完結する。

『グレート・ウォー』にはノヴァ(アミア・ミラー)という口の不自由な少女が登場し、シーザーと心を通わせた。それからおよそ300年後の物語になる『猿の惑星/キングダム』にもノヴァと呼ばれる女性が登場しており、関連が気になるところ。ともかく、このシリーズは人間と猿の共存の可能性を描きながら、平和な世界の在り方を問いかけてきた。完全新作となる本作もそんな見応えのあるドラマとなるに違いない。

文/相馬学 マンガ/大友しゅうま