G7サミットが始まった19日、世界最強ともいわれるアメリカ海軍の原子力空母『ニミッツ』が佐世保に入港しました。
サミットとの関りはあるのか、入港の背景も含め取材しました。

「動く航空基地」小雨の中、9年ぶり入港

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山口 仁記者:「原子力空母『ニミッツ』が佐世保港に入ってきました。甲板には艦載機の姿もみえ、まさに”動く航空基地”といった感じです」

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午前9時半、小雨の降る中姿を現した『ニミッツ』。
全長333メートル、排水量は9万7千トンと世界最大級の原子力空母です。

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戦闘機などおよそ80機を搭載でき、乗組員は4700人あまり。今回はインド洋から西太平洋にかけての海域で訓練をしながら、パトロールの任務に就いています。

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乗組員の休養や、物資を補給するため、佐世保に入港しました。

原子力空母の入港に賛否両論の佐世保市民

原子力空母の佐世保寄港は9年ぶりで市民からは賛否両方の声が聞かれました。

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70代女性・賛成:「基地がある限りは政府的な契約がしてあって寄港しても受け入れないとしょうがないのかなと思ってます」

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90代男性・賛成:「戦争反対だと思ったけど、そういう体験をしたからね。国際情勢がこうだからね」

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30代男性・賛成:「人いっぱいくるんで賛成ですね。地域盛り上がればいいんじゃないですか?」

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30代女性・反対:「怖いと思います。そういう武器を使うのもあんまり自分は嫌だなと思いますけど」

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70代男性・反対:「サミットと合わせて佐世保に入るなんて絶対許せない。55年前のエンタープライズの寄港の時も反対行動をやったので」

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40代男性・反対:「日本は唯一の被爆国だと思ってますので。アメリカの核兵器とかを自重させる力はないかと思いますけど、もうちょっと強く言っていいのかなと思いますけどね」

”航空自衛隊基地 2つ分”を超える戦闘機搭載の空母ミニッツ

九州からおよそ600キロ離れた洋上。入港に先立ち、アメリカ軍は地元の報道機関に対しニミッツでの訓練の様子を公開しました。

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山口 仁記者:「東シナ海を航行中の空母『ニミッツ』に来ています。これから艦載機の離発着訓練が行われます」

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爆音を轟かせるのは、戦闘攻撃機”スーパーホーネット”
20~30秒間隔で発艦と着艦を繰り返す激しい訓練です。有事がいつ起きても即座に対応できるアメリカ軍の力を見せつけていました。

自衛隊OBの香田 洋二さんは、ニミッツの攻撃力を日本の航空自衛隊基地 2つ分と表現します。

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元海上自衛隊・自衛艦隊司令官 香田 洋二さん:
「航空自衛隊の基地 2つ分を超える戦闘機を積んで、非常に大きな打撃力を持っているということで、必要とあれば、世界のどこにでも必要な行動をできるという、ここが1番大きな特徴だと思います」

現在、神奈川県横須賀基地には原子力空母『ロナルドレーガン』が配備されています。今回『ニミッツ』の佐世保入港で、日本周辺に2つの空母が揃ったことになります。

米軍「たまたま揃った」G7開催との関連を指摘する香田氏

『ニミッツ』で空母グループ全体を指揮するスウィーニー司令官は「特別なメッセージはない」としましたが、香田さんはG7との関連を指摘します。

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空母「ニミッツ」打撃群司令官 クリストファー・スウィーニー司令官:
「大きな目的があるわけではなく、たまたま『ニミッツ』と『レーガン』が揃っただけのことです。日米同盟の証として佐世保を訪問しましたが、特別なメッセージはありません」

香田さん:
「やはりG7の(広島から)少し離れたところで、アメリカの空母がいるぞ、ということを中国だけじゃなくて、テロリストとか、そういう人たち全部に向けて示しているわけです。(入港を)G7と合わせたということは充分考えられます」

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一方、独自に空母を建造するなど近年、海軍力増強を図る中国。スウィーニー司令官は、空母運用の習熟には時間を要するため「脅威とは感じていない」としています。

スウィーニー司令官:「我々は100年前から、空母を使った洋上での飛行機の運用に取り組んできた。この能力を持つためには長い時間がかかるので、中国が空母を保有しても心配していない」

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香田さん:「中国は今、空母を3隻目も4隻目も造ろうとしているんですけども、使いこなすという面でいうと、もう少し時間がかかるよと。ただし5年も経てば、追いついてくるということですからね」

アメリカが保有する原子力空母は現在11隻。
これに中国側がどこまで対抗し、軍拡を進めるのかが注目されています。

「被爆県の県民感情を逆なでするもの」反対派団体は出港まで抗議活動

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抗議集会のコール:「ニミッツは出ていけ〜、ニミッツは出ていけ!」

一方、ニミッツの佐世保寄港に対し、労働団体や平和団体などが入港に合わせ抗議集会を開きました。

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参加者は「ニミッツの艦載機の中には核爆弾を搭載可能なものもあり、被爆県・長崎に入港するのは、県民感情を逆なでするもの」だと主張。
出港するまでの間、抗議の座り込みやデモ行進などを計画しています。

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佐世保地区労・山口 原由 事務局長:「動力が何より原子力であるということは大きな問題でありますし、戦争の道具でしかないものが、この佐世保に入ってくるということに、私たちははっきりと反対の声を上げていかなければならない」

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原子力艦船が入港できる港は日本に3か所しかありません。
圧倒的な攻撃力を持つ原子力空母の寄港地として、佐世保基地の役割はますます重要になるとみられます。

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空母『ニミッツ』は今月23日に佐世保を出港する予定です。