コンタクトセンター業界大手のベルシステム24は2024年1月、最先端のAI(人工知能)プラットフォームの開発や提供を手がける台湾のインツミットと業務提携を締結したと発表した。ベルシステム24の事業開発本部 海外事業開発部 田中啓士郎マネージャーは「当社とインツミットで、AIと人のハイブリッドによる新たな顧客対応パッケージを共同開発する。2024年春頃に、『Smart BPOサービス(仮称)』としての提供を目指す」と話す。田中マネージャーに業務提携の狙いや概要、今後の展望などについて聞いた。


――インツミットとの業務提携の狙いについて伺いたい。

インツミットのサービスは当社の有人対応との親和性も高いため、2021年頃から協業の検討を開始し、2022年にはテクマトリックスも含めた3社で共同サービス「CRM Next」を提供した。2023年8月に、業務提携に向けた協議を開始し、同11月に業務提携の方針で合意した。顧客対応での自動化ニーズが高まる中、インツミットが提供する先進的なソリューションを活用したAIと人のハイブリッドなサービスを開発・提供するため、今回の提携に至った。

――インツミットの事業内容についても伺いたい。

インツミットは、AI技術を強みとし、独自のアルゴリズムや機械学習などを活用したサービスを開発・提供している。

その中の一つである対話型AIプラットフォーム「SmartRobot」は、ウェブサイトやLINEといったメッセージングアプリ上で問い合わせを受け付け、生成AIとの連携による、音声データのテキスト化や問い合わせ内容の分析、返信レコメンドの自動生成などを行う。スムーズな問い合せ対応の自動化を実現する。 

これは国内においては、他社にはないサービスとなる。「生成AI」が問い合わせの一次受け付けから回答の振り分けまでを担うという新たな形が可能になる。

――今回の業務提携による取り組み内容はどのようなものなのか?

先ほど申し上げた「SmartRobot」を活用し、人とAIを掛け合わせた新たな顧客対応サービスを共同で開発していく。まずは台湾での提供に注力していく。

台湾では日本と比べて顧客対応での自動化は進んでいるが、自動化ソリューションを導入したものの、顧客対応の知見や技術を持つ人材不足により、顧客満足度やCX(顧客体験)向上につながらないという企業も多い。そのため、当社の持つ1000社を超えるクライアント企業の顧客接点の運用メソッドを活かし、顧客に合った最適な自動化を設計するための初期設定や導入後の定期的な情報メンテナンス、自動化と有人対応の配分など「SmartRobot」の導入支援を当社で担う。

また、「SmartRobot」による回答の振り分けをもとに、有人でのメッセージ送信や、電話での対応など、自動応答だけでなく状況に応じた最適な顧客対応も行う。断片的ではない、シームレスな自動対応と有人対応を一気通貫のパッケージプランとして提供する。


▲サービス図

――まずは台湾での提供を考えているとのことだが、将来的には海外展開も考えているのか?

考えている。台湾で成果を残し、日本、ベトナム、タイなど、各国へのサービス提供も考えている。

――自動回答の内容は生成AIが作成するとのことだが、精度はどうか?

インツミットによると、台湾では「SmartRobot」を活用したチャットボットでの問い合わせに対して、有人での対応を必要とする割合は約8%だという。それだけ高い精度を誇っているということだ。

――台湾で有人対応が約8%とのことだが、日本ではどのように考えているか?

当社では、日本だとその倍程度は有人対応を必要とするのではないかと考えている。台湾は顧客対応に関して、LINEでの返信に慣れている高齢者の人も多い。だが、日本では、高齢者を始め電話での対応を求める人も多くいるため、有人対応の返答率に関しては、台湾よりも高くなると感じている。

――ベルシステム24だと、同様のサービスはこれまで提供していなかったのか?

AIチャットボット、ボイスボットによる自動化ソリューションの提供はしてきた。「SmartRobot」のような新しい自動化ソリューションを活用した、チャットボットだけでは解決できない問い合わせへの有人対応を組み合わせた包括的なサービス提供はしていなかった。

――費用感はどうなのか?

業務の規模や内容に合わせて個別試算を予定しているため、明確にはお伝えできない。だが、初期費用が数百万円、月額費用で50万円程度を想定している。

――その費用感だと、年商10億円くらいの売り上げの企業でも導入できそうだ?

できると思う。日本はますます高齢化と働き手が少なくなる。そのことを踏まえると、このようなAIと人のハイブリッドにより、人手を多く必要とせず、確実に顧客対応を実現できるサービスの導入は重要になってくる。