電気通信大学は2025年度からのキャンパス再開発で、同大の先端技術を建物に導入したPFI(民間資金を活用した社会資本整備)を始める。参加企業は生産や販売、物流、教育などをデジタル変革(DX)する実証・開発拠点に位置付ける。企業が自社事業にセンサーやビッグデータ(大量データ)、人工知能(AI)、IT、ロボットなどを実装し、将来の収益確保につなげる新しいPFIとして注目される。

国立大学のPFIは一般的に病院や学生寮、マンションなどの収益事業で行われる。今回は情報理工系単科大学である電通大の先進技術を生かし、企業が先行投資する場として位置付ける。

対象は東京都調布市のキャンパス内にある学生寮や国際交流会館など7棟の跡地で計約9000平方メートル。大学機能と、大学の教育・研究と関連した民間活用分の複合施設を新設する。

電通大は「ビッグデータと機能のネットワーク化」「AI解析や制御」「セキュリティーに配慮した社会実装」を連動、高度化する「共創進化スマート社会」を全学の柱とする。食事スペースやベッドを備えたキャンパス内の仮想介護施設では、認知症患者の生体・環境データを用いた徘徊(はいかい)や暴力の防止策を研究。図書館では試験期間中の緊張感に伴う二酸化炭素(CO2)濃度の変化と換気制御などを進めてきた。

田野俊一学長は「キャンパスを新産業創出の社会実験の場にしたい」と強調する。PFIの導入に向け、建設コンサルタントの佐藤総合計画(東京都墨田区)の支援を受けて企業向けのアンケートを始めた。受け付けの締め切りは9月15日。