◆サンズ野田氏、“巨乳路線”と決別
小池栄子(43)やMEGUMI(42)らを発掘・育成し、「巨乳の巨匠」と呼ばれたサンズエンタテインメント会長の野田義治氏(77)が宗旨替えした。「巨乳」路線を捨てたのだ。
野田会長が今春から女優として本格的に売り出す矢崎希菜(22)は筋トレを趣味とするスリムな8等身美人。野田会長は路線変更の理由を「もう随分前から水着で売れるスターは出てこないと思っていますから」と説明した。
「AKB48らグループアイドルの水着が氾濫したためです」(野田会長)。もう水着姿には希少価値がないと踏んでいる。
矢崎が都内の夏祭りの会場で野田会長の事務所のスタッフから声を掛けられたのは8年前。中学3年生のときだった。それに応じ、学業の合間に限って芸能界の仕事をすることを決めたが、野田会長が「巨乳の巨匠」、あるいは「巨乳バカ一代」と呼ばれていたことは知らなかった。
「あとになって知人たちから『おまえが野田さんの事務所にいるの?』と不思議がられました」(矢崎)
矢崎の野田会長の第一印象は「うわ、コワッ」。確かに野田会長はトレードマークがギョーカイ人風のヒゲと色付き眼鏡ということもあって、コワモテ風。
「だけど、接しているうちに全然怖くない人だって分かりましたけどね」(矢崎)
そう、「巨匠」は温和な人柄で知られている。それもあって、小池やMEGUMIはバラエティ番組などで野田会長をネタにする。
◆マネージメントする女性に共通する「顔」
矢崎はスリーサイズを公表していない。
「別に隠しているわけではないんです。測って明かしてもいいんですけど…」(矢崎)
「いや、スリーサイズが売り物じゃないから」(野田会長)
大幅な方針転換をした野田会長。しかし、昔からマネージメントする女性には共通点があるという。
「顔です。嫌われない顔、長く見ていたい顔の女性を探します。具体的に言うと、和顏(やわらいだ顔つき)。そのほうが受け入れられやすいと考えている。僕が手掛けた堀江しのぶ、かとうれいこ、小池栄子、佐藤江梨子、MEGUMIらはみんな和顔。矢崎もそう」(野田会長)
1996年、高校1年生だった小池をスカウトした決め手も和顔。『週刊プレイボーイ』に載った1枚の写真を見て惚れ込んだ。水着姿ではなかった。
「すぐに東京の下北沢にある小池の実家に行き、スカウトしました」(野田会長)
MEGUMIは1999年からマネージメント中。スカウトしたのではなく、知人から事務所に入れてくれるよう頼まれた。
「だからMEGUMIについては最初、何も分からず、戸惑いもありました。もっとも、デビューに向けて顔写真を撮った途端、『いける』と確信した」(野田会長)
和顔だったからだ。
◆女優業よりも学業を優先
矢崎の場合は高校1年生のときに女優デビュー作として映画『君の笑顔に会いたくて』(2017年)に出演させたが、本人の意思を尊重し、学業を優先させた。パートタイマー的な女優だった。
以後もTBS系『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』(2022年)、NHKのBSプレミアム『大富豪同心3』(2023年)などに出演したものの、仕事は学業の合間に限定。都内の大学を卒業したのを機にやっと女優を職業とする。
「スカウトされる前から、川口春奈さんに憧れていて、自分も同じ世界に行ってみたいという漠然とした思いがありました」(矢崎)
スカウトされたときにはグループアイドル全盛期だった。前田敦子(32)や川栄李奈(29)らのように女優に転身しての成功例も多い。まずはAKB48などの一員を目指すという道は考えなかったのか?
「アイドルを自分が出来るとは思いませんでした。スカウトされたときは中学の部活でバスケットをバリバリやっていて、かわいらしい自分というのがイメージできませんでしたから」(矢崎)
目標は演技派の杉咲花(26)。
「いつかは共演させていただきたいと思っています。近くで杉咲さんのお芝居が見てみたい」(矢崎)
◆多方面で活躍する所属女優たち
これまでに野田会長にどんな教育を施されたかというと、学業に支障が出ない限り、あらゆる仕事をさせられた。映画『神の発明。悪魔の発明』(2019年)の主演も務めたが、一方でセミドキュメンタリー番組の再現ビデオにも登場させられた。
「養成所などで演技を学んでいない分、さまざまな現場で経験を積ませました。周囲から『なんで、こんな仕事をさせるの?』と言われても構わないと思った」(野田会長)
それ以外のことはうるさく言わなかった。
「うちの事務所は放し飼い。仕事をやるのは僕じゃないから」(野田会長)
その方針が功を奏しているのか、野田会長が発掘・育成した女優には多彩な個性派が目立つ。小池はドラマ、映画で活躍するのみならず、2016年に演劇界の権威である読売演劇大賞で最優秀女優賞を獲得。一方でバラエティ番組の司会も易々とこなす。
MEGUMIはクリエイターとしても活動。動画配信サービス「NETFLIX」で近く配信する2つの番組のプロデュースに携わっている。うち1つは「ヤンキーたちによる恋愛リアリティーショー」というから新しい。
野田会長には、もう1つだけ方針がある。パワハラ、セクハラ気味のジョークをあえて口にする。
「撮影現場ではもっと厳しい目に遭う可能性もあるから」(野田会長)
「巨匠」の親心らしい。
◇矢崎希菜(やざき・きな)
2001年3月24日、東京生まれ。都内の大学の英文科を卒業。現在も英語の勉強を続けており、「ゆくゆくは海外作品にも出てみたい」(矢崎)。趣味・特技は阿波踊り、モダンバレエ、バスケットボール。現在はライジングプロダクションに籍を移したが、野田会長がマネージメントを続けている。
【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 放送批評懇談会出版編集委員。1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立