テレビ朝日開局65周年記念ドラマと鳴り物入りで始まった木村拓哉主演「Believe−君にかける橋−」だが、早くも「ウソっぽい」と評判はよろしくない。木村は大手ゼネコンで橋づくりに情熱を燃やす土木設計部長・狩山陸という役どころなのだが、建設現場を知るプロたちは「ありえねえことばっか」だという。

「橋脚がほぼ完成しているのに、キムタクの部長は上部のデザインも構造も変更すると言い出しますが、そんなことありえないですよ。下と上で違う橋になってしまって、何が起こるかわかりません。また、キムタク部長は現場で下請け会社に作業を早めてくれるよう要請しますが、それをやるのは施工管理部門で、設計ではありません」(大手ゼネコン技術者)

 果たして崩落事故が起こり、狩山はその責任をかぶって懲役1年6月の実刑判決を受け、刑務所に収監される。これも、「不自然すぎる」と検察OBの弁護士はこう言う。

「業務上過失致死傷罪で実刑となるのは、過失というより、事故を予見できたのに対策を取らなかった悪質なケース。懲役1年6月と軽いのに執行猶予がつかなかったら、普通は量刑不当で直ちに控訴します。そうすれば保釈もされます。ましてや脱獄なんて、いくらドラマとはいえねえ……」

 そもそも、これまでも木村のドラマはウソっぽかった。「風間公親-教場0-」では新人刑事を育てる刑事指導官という役だったが、刑事指導官は各警察署を巡回して組織運用や捜査方針のアドバイスをしたり、警察本部への連絡を管理するのが職務で、刑事の教育係ではない。階級も警視とエライ。風間の階級は警部補という下っ端のほうで、同僚刑事に「交番勤務に戻ってもらう」などと人事権限を持っているかのような暴言を吐いたら、風間こそ処分を受ける。

■例の“予定調和”がネックに

「HERO」でも、ジーンズ姿で現場捜査に出かける型破りな検察官はいいとしても、秋霜烈日の検察官記章(バッジ)を突き付けて、平気で職務質問をしたり、建物に立ち入ったりする。検察官にも捜査権はあるが、こうした“実力行為”は警察官の職務で、検察官には許されていない。

 なぜ木村のドラマはウソっぽいか。ドラマ制作会社のプロデューサーは「キムタクを見せるのが最優先で、ドラマの設定やストーリーは二の次だからですよ」と苦笑する。「途中に挫折や失敗、裏切りなどの波乱がちりばめられていても、最後はキムタクがカッコよくキメるという予定調和なんですよね。だから、いつも同じような展開だし、何をやってもキムタクになっちゃう」

 それでも、これまではキムタクファンがついていたからそれでよかったが、ジャニーズ事務所解散、木村51歳、ファンも中年になって、木村が出演するだけでは見てもらえなくなっている。世帯視聴率もここ数作は2ケタ維持が精いっぱいで、前作の「教場0」はとうとう10%を切った。「Believe」の初回は11.7%となんとか大台に乗ったが、「教場0」の初回より低く、とても順調なスタートとはいえない。さしものキムタクもオワコンということか。

(コラムニスト・海原かみな)