東京・青山の結婚相談所「マリーミー」の代表・植草美幸氏と婚活中の男女に密着したフジテレビ『ザ・ノンフィクション』(2月4日、11日の前後編で放送)の「結婚したい彼と彼女の場合〜令和の婚活漂流記2024〜」は大きく話題になった。密着者のひとりである内田さんは再婚希望の55歳。「夫婦ならラブホ」発言がSNSでも話題になったが、お見合い相手の女性たちとの距離感がつかめずに”空回る”姿に親しみを感じる視聴者も多かった。

 現在も、運命の人を探して活動中の内田さん。植草美幸氏との対談形式で、密着の裏側と近年増えている中高年ならではの婚活の現実を振り返ってもらった。

 撮影期間は約8カ月の長きにわたったという。植草氏の服装がノースリーブからセーターに変わっていく様子からも時間の経過が伺えた。番組の密着は20代の男女と50代の内田さんで、いわゆる適齢期の2人とは対照的で年を重ねた世代の婚活市場におけるリアルが垣間見られたが……。

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 ――数ある会員さんのなかで内田さんが密着された経緯を教えてください。

植草美幸氏(以下、植草) 50歳を過ぎると、頑固で人の話を聞かない人も多いのですが、内田さんは自分磨きも含めて努力を惜しまないので、多くの方の参考になると思いました。それに態度は大きいけれど心が純粋で青年のようなところがあって、私の言うこともひとつずつちゃんとメモを取って「気をつけます」と確認していくので、番組のディレクターとも相談して、同世代の婚活中の方や視聴者の皆さんに伝わりやすいのではないかということで密着して頂くことになりました。

内田さん(以下、内田) そうですね。当時、仮交際している人がいたんですが上手くいっていなくて、植草先生にお話をいただいて、「テレビに出るのは千載一遇のチャンス」だと思ったんです。僕が自分では気づけていない部分をいっぱい教えてくれるだろうと。あとは密着されることによって、中高年の婚活がどれだけ大変なのかを伝えるメッセンジャーになろうと思いました。

 僕は寂しさを紛らわすためもあって、友達を作るための社会人サークルに入っています。登録制で500人ほどいて、バーベキューやテニスをやったり、旅行にいったりして、興味ある人たちが集まって楽しんでいます。だけどそのうちの50代は、女性も男性もほとんど結婚していなくて、僕が一生懸命婚活しているのをいくら言っても信じてもらえないから、中高年の婚活がいかに大変か、理解してもらおうと思ったんです。

 あとは、若い頃からずっとスポーツをやってきたので、自分を叩いて気合いを入れる気持ちもありました。僕は決してスタイルがいいわけでもないし、めちゃめちゃイケメンじゃないので努力型なんですよ。叩かれて努力して、成長してきた人間なので顔出しの密着にOKしました。

 番組の前編放送後、内田さんのある発言が大きく注目されることに。シングルマザーの40代女性とのお見合いで、会話が弾んで手ごたえを掴んだはずが、翌日お断りの連絡があった場面だ。旅行についての話題で、「旅館が満室だったら、夫婦ならラブホテルでもいいよね」と話したことで、デリカシーに欠けると受け取られてしまった。

 ――お相手からのお断り理由として「生理的に無理」との厳しいコメントが印象に残った視聴者は多かったと思います。内田さんは植草氏から告げられた後、「ああ、そうですか」と冷静に答えられていましたが、お相手に伝えたい真意が誤解して受け取られた部分もあるのでは?

内田 プロフィールの写真が綺麗な方だったので、すごく嬉しい気持ちでお見合いしたんです。実際に会った後も女優さんのように美しい人でした。彼女は結婚生活について「とても酷かった」と悔やんでおられました。僕は自分自身の結婚が素晴らしかったことを伝えたくて「奥さんが仕事から遅くに帰ってきたら、リフレッシュに外へ連れ出して、車中泊か、夫婦だからラブホテルに泊まって、翌日は牧場へいって馬に乗ってリセットすることもありました」と経験談を話したのですが、なんだかダメになってしまって。

植草 初対面で「夫婦ならラブホ」というのは、女性にはセクハラになってしまう。これが恋人同士ならいいんですけど、初対面の最初の1時間で相手を見定めるとなると、ものすごく厳しい目で見られます。内田さんは熱くなりすぎですから、もっと冷静に話を聞いて次につなげないとね。

内田 そうですよね。あまりに自分のタイプだったからちょっと熱いスイッチが入っちゃいました。

植草 彼女は、お断りするのだけど嫌われるよりも感じ良くして早く帰りたいって思ったから、その後は内田さんを褒め殺し。内田さんはその態度を「すごく気に入ってくれたからよかった」と勘違い。女性は「ラブホテル」って聞いた瞬間にサーっと冷めちゃってるのに。

内田 結婚について熱く語れてよかったんじゃないかなと思ったんだけど、全くそうじゃなかったということです。そこがクローズアップされてしまって。でも、「婚活ラブホおじさん」が取り上げられたから、今の僕があるわけで。結果よかったんじゃないですかね(笑い)

 ――番組後編では、40代後半の中国出身の女性との真剣交際に発展も、「成婚退会」に至りませんでした。

植草 お相手は他の相談所の会員で、内田さんが言っていることと、先方の相談所が言っていることが食い違っていたんです。

内田 彼女とはデートを重ねて僕の家まで来たんですよ。それで将来の話をして「生活費を私が10万円くらい払えばいい?」と僕に聞くので「それではお願いします」と返事をしたんですが。

植草 内田さんは「成婚退会」しているけど、女性の方の結婚相談所は「確認事項がある」からそこまでいっていないと。最終的には「生活費は全部男性が出してほしい、結納金が欲しい、成婚料は女性の分も払ってほしいの」と言われました。結婚生活に対しての考え方は、文化的な違いもあるのでしょう。それでもいいと内田さんは一度は進めようとしましたが、いやいや内田さんが思い描く結婚生活とは違うんじゃないかという話をしてお断りしました。

「植草さんの前ではまな板の上の鯉です」(内田)

 実は、内田さんの”婚活人生”には『ザ・ノンフィクション』が大きくかかわっているという。植草氏との出会いも「この人しかいない」と感じたそうだ。18年の結婚生活に終止符を打ったのが51歳。再婚を考えたのはバツイチだった内田さんが同番組で放送された『結婚したい男と女 〜婚活クルーズ それから〜』(2019年12月)を視聴したからだ。

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 ――再婚を考えたのはどうしてですか。

内田 僕は34歳の時に31歳の方と結婚しました。結婚してよかったなって心から思ってるんですよ。彼女はものすごくいい人だったので、なぜもっと守ってあげられなかったのか、どうして離婚する気はないと言えなかったのかと思っています。最後の2年間は口もきいてくれなかったんですけどね。

 実は子どもができなかったんです。不妊治療を試みたのですが、彼女の体に負担がかかりすぎて、フラフラになってしまって。その姿を見て自然の成り行きに任せることにしました。でも、当時は若かった僕は心のどこかで「子どもが欲しい」って思っていて、彼女は気づいたのかもしれない。最後まで2人の今後についてちゃんと話をすることができなかった。結局すれ違ってしまい別れてしまったんです。

 後悔はありますし、結婚は素晴らしいことだと思ってるんです。僕はやっぱり夫婦で寄り添って生きていきたいし、2人の家族が欲しいですね。

 ――そこで数多の結婚相談所から「マリーミー」に入会されたのはどうしてですか。

内田 離婚して一人暮らしを始めたころ、たまたま『ザ・ノンフィクション』で豪華客船に乗って婚活パーティーをしながら航海するという企画を見ました。パーティーでいい人を見つけてプロポーズをするのですが、その様子を見て、「一生のパートナーがほしい」と思ってしまって、結婚相談所に入りました。ただその当時僕は体重が105キロあったので、受け入れてくれる相手がみつからず。これじゃダメだと一念発起してそこから25キロダイエットしました。

 その後、3つ目の相談所で活動していたある日、『ザ・ノンフィクション 結婚したい彼女の場合〜コロナ禍の婚活漂流記〜』(2022年1月放送)で婚活事情をやっていて。主人公のミナミさんは”個性的な女性だな”と思ってましたけど、それ以上に植草先生のインパクトが強くてびっくりしました。言っていることが全部正しいし、こんなに厳しくも親身になってアドバイスしてくれる方がいるんだって。「この人しかいない」って思って前の相談所を退会し、「マリーミー」のドアを叩きました。

植草 内田さんがこちらに来られたのは4カ所目。他の相談所にいらっしゃった当時は、100キロ以上あったことも影響し、1年に3人ぐらいしかお見合いができなかったんですよね。2年前ですね。今は自分磨きも続けていますし、1週間に2人お見合いを組めています。

 ――番組では植草氏との”掛け合い”も注目されました。信頼関係がありますね。

内田 僕はまな板の上の鯉です(笑い)僕のお姉さんが、一生懸命弟に「ダメだよ、ダメだよ」って叱っているみたいですね。あるいは、いつも自分磨き怠るなって、監督とか師匠に言われてる感じです。

植草 内田さんはときどき女性からコテンパンにされることがあるんです。「マリーミー」の会員同士の場合は、両者の話を聞いて、もし女性の方が悪いならば、私は内田さんの味方になりますよ。「どうしてそう言ったの?お相手の気持ちを考えてあげて」と女性を叱りますし、彼には「私の教育が悪いよね」と謝ります。根底には絶対的な信頼がありますから、言い合いになっても「また来てね」ってね(笑い)

内田 裏で相手の女性に謝ってくれていたり、僕のために動いてくれることを、以前の僕は気づかなかったんです。それを知らなくて先生と言い合いになったこともあります。それでも一生懸命僕にアドバイスをしてくれたので、すごく嬉しかった。ああ、泣きそう。

植草 会員さんに対しては、若い方なら息子や娘、私と年が近い方なら妹や弟だと思って接しています。お客様だと思ってニコニコしながら「頑張っていますね」って言っているだけなら誰も結婚できない。お見合いも全然組めないですね。

 放送後はX(旧ツイッター)をはじめ、SNSでも大きな反響があった。「何よりも街を歩いていて『一緒に写真をお願いします』って声をかけられました」(内田さん)。

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 激励もあれば批判もあったが、婚活にも影響があったという。【後編】では、引き続き密着後の周囲の変化や50代の婚活について語ってもらう。