高校生のラグビーワールドカップ(W杯)として親しまれる「サニックスワールドラグビーユース交流大会」が、28日から5月5日まで福岡県宗像市のグローバルアリーナ(GA)で開かれる。歴史を重ね25回目となる今大会では、発信役として有名インフルエンサーに白羽の矢を立てたり、観戦しながら九州の食材を味わえる席を設けたりとリニューアルにも挑戦。さらなる集客アップを目指す。(大窪正一)

 ■W杯の登竜門

 環境・エネルギー関連事業のサニックス(福岡市)の創業者、故宗政伸一氏が「スポーツ・文化を通じて世界中の子どもたちが集う場を」と私費を投じて完成させたGAを会場に、2000年にスタートした大会。13年から女子の7人制ラグビーも始まった。これまで日本やニュージーランド、イングランド、トンガなど20の国・地域から延べ約1万4千人が参加した。

 運営するサニックススポーツ振興財団によると大会経験選手のうち、これまで各国・地域の代表に選出されたのは約150人。5年前に日本で開催されたW杯で26人、昨年のW杯フランス大会では35人が選ばれるなど「W杯の登竜門」とも言える大会だ。日本ラグビー協会の共同最高事業統括責任者の池口徳也氏も「世界各国の高校生世代が一堂に会し、頂点を競う極めてユニークで希少」と、その意義を強調した。

■コロナ禍以前に戻った

 ■寝食を共に国際交流

 国際交流も特色だ。期間中は男子は全選手がGAの宿泊施設に寝泊まりし、一緒に大風呂に入り、空き時間は芝生広場で楕円(だえん)球のミニゲームに興じる。同じ釜の飯を食べながら「違い」を認め合う。各チームが出し物を披露するウエルカムパーティーは名物。父の遺志を継ぎ、大会を後押しするサニックスの宗政寛社長は、「ある年、『ウィー・アー・ザ・ワールド』を日本の高校生が歌うと、自然に全チームでの大合唱になった。小さいことかもしれないが、世界平和につながる思いを感じた」

 今年は男子の出場チーム数がコロナ禍以前のフルバージョンに戻り、海外と国内それぞれ8チーム。国内組は、冬の全国高校ラグビー大会「花園」で優勝した桐蔭学園高(神奈川)、準優勝の東福岡高、今春の選抜大会で優勝の大阪桐蔭高、準優勝の石見智翠館高(島根)など。海外組は、ニュージーランドなどの強豪やアジアから中華台北と韓国。ナミビアと米国から初出場する。全参加チームからの選抜で構成する2チームのフレンドリーマッチもある。女子は海外、国内それぞれ4チーム。国内組は地元から福岡ラグビーフットボールクラブが出場し、海外組はタイが初出場する。

■25回目の節目に

 ■集客あの手この手

 PR役として初めて設けた大会アンバサダーに、ラグビー王国のニュージーランドに留学経験のあるタレントの新谷あやかさん=筑紫野市出身=を起用。動画投稿アプリ「TikTok」や、動画投稿サイト「ユーチューブ」などに方言で投稿し、合わせて100万以上のフォロワーがいる発信力に期待する。

 メインスタジアムには有料エリアを初開設。九州の地元食材を生かした料理を楽しみながら観戦できる。また、従来あるJR赤間駅とGAを結ぶ無料シャトルバスとは別に、福岡・天神とJR博多駅、会場をつなぎ1日2往復する有料のラッピングバスも運行する。

 新たな試みを盛り込んで迎える節目の大会。財団の渡辺敏行事務局長は「ラグビーに関心が薄い層にも宗像で『世界』を味わってもらいたい」と意気込んでいる。