◆柔道 全日本選手権(29日、日本武道館)

 体重無差別で日本一を争う大会で、男子100キロ級で世界選手権3大会連続出場の実績を持つ飯田健太郎(旭化成)が1回戦で敗れた。阿部拓馬(山形県警)を相手に終始優勢に試合を進めて内股で技ありを奪ったものの、その後、横四方固めで一本負けを喫した。

 実力者のまさかの初戦敗退。飯田は「投げた技を一本と決めつけてしまった。自分の中では完全に(一本で)決まったという感覚があった。プラス場外に1度出たという認識もあったことから(横四方固めから)逃げられなかった」と話した。

 4月上旬の全日本選抜体重別選手権(福岡市)は計量オーバーで失格。5月の世界選手権への道を断たれた。男子100キロ級だった同選手権では1・8キロのオーバーだったといい「完全に自己管理不足だった。選抜に向けて計画的に減量することができなかった自分の落ち度」と振り返り強化指定からも外れた。「世界選手権につながる大事な試合で失格となり、もう1度自分を見つめ直して、大会に出ずに練習をしたほうがいいじゃないか、1度柔道と距離をとりたい気持ちも少しあった。出場するか悩んだ」。再出発の舞台でもあった全日本選手権だったが思わぬ結末となった。

 一時はパリ五輪の男子100キロ級の日本代表選考で1番手としてリードしたが、大舞台への切符を手にすることはできなかった。苦しい時間が続いてるだけに、さまざまな考えが駆け巡る。階級を上げて挑戦する選択肢もあるが「まだちょっとわからなくて。自分の中では100キロ級でやりたい思いは強いですし、100キロ級でもう1度世界と闘いたい気持ちもある。ただ自分の年齢も上がっていくにつれて、体調だったり自分の体重がどう変化していくかわからないので、そこは自分が納得できる選択をしていきたい」と言う。

 心も複雑な思いを抱えており、整理ができていない状況だという。「もう1度世界と闘いたい気持ちはあると言っているけど、100パーセント次に向けて力を注げるかと言ったら、やはり引きずっている部分もある。モチベーションの低下というのはあります」と率直な心境を明かした。

 その上で「五輪を目指していく中で、なかなか結果が出ず長く苦しかった。そこで家族や近しい人に『昔の方が明るく楽しそうに柔道をしていたよ』と言ってもらった。気づかないうちに結果にこだわりすぎた。結果を求めないといけないが、結果を求めすぎて自分の本当にやりたい柔道ができていなかったのかな」と話す25歳の実力者は、体と心を整えながら復活の時を見据えていく。

 今大会は男子100キロ超級の斉藤立(JESグループ)らパリ五輪代表内定者、5月のアビダビで開催される世界選手権の代表は出場しない。2017年に取りやめた旗判定が復活したほか延長戦は廃止された。試合時間は4分から5分に、決勝は8分に延びる。