高齢化が進む日本で、近年高い注目を集めているのが「介護脱毛」。将来、自分が介護を受けるときに備えて行う脱毛のことです。要介護になり、自分で排せつができなくなると、家族や介護士が介助を行います。そこで介護を受ける側と介護をする側の肉体的・精神的負担を軽減する目的で行われるものです。40〜50代の方を中心に介護脱毛の需要が増えてきていますが、どのようなメリットやデメリットがあるものなのか、共立美容外科の遠山貴之さんに聞きました。

◆大きく分けると3つの種類がある 「介護脱毛」の施術方法とそれぞれの効果

 そもそも介護士さんにムダ毛の処理もしてもらえるのではないかと感じるかもしれません。しかし、実際には自治体の多くが、介護士が髭剃りや体の剃毛を行うことを禁止しています。そのため、介護脱毛を受ける方の多くは、「介護が楽になる箇所」と「本来は定期的に手入れをしたい場所」の施術を希望されます。なかでも特に施術が多いのは、“VIO”と呼ばれるデリケートゾーンです。

 脱毛方法は大きく分けると「医療レーザー脱毛」「ニードル脱毛」「光脱毛」の3種類があります。医療レーザー脱毛は医療機関のみで行える施術で、医療用レーザーを照射してメラニン色素に反応させ、熱を生じさせて毛母細胞にダメージを与えます。太いゴムで弾くような強い痛みがありますが、麻酔クリームの使用が可能です。術後2〜3週間で毛が抜け始めます。

 ニードル脱毛は、毛穴に針を差し、電気を流して毛根を破壊する施術。術後は数日で毛が抜け落ち、一度施術した毛穴からは毛が生えません。痛みは他の脱毛法よりもかなり強いですが、麻酔クリームが使用できるクリニックもあります。

 光脱毛は主にエステサロンなどで行われる施術で、医療レーザーよりも出力の低い光を照射します。あくまで減毛・抑毛効果を求めるもので、繰り返し施術を受けると毛が細くなり目立たなくなりますが、施術をやめると再び毛が生えることがあります。3つの施術法の中では最も痛みが少ないと言われています。術後1〜3週間で毛が抜け始めます。

◆「介護脱毛」の具体的なメリットとデメリットは?「介護の負担軽減だけでなく、衛生状態が良くなる」

 介護脱毛は本当に必要なのか、悩んでしまう人も多いはずです。そこで、具体的な介護脱毛のメリットとデメリット紹介していきます。介護脱毛の一番のメリットともいえるのが「排せつ介助がしやすくなる」こと。アンダーヘアには排せつ物が絡まりやすいので、拭き取りに時間がかかります。おむつ介助になった際にはさらに手間がかかってしまうでしょう。脱毛により排せつ介助にかかる時間が短くなれば、本人と介護士の双方の負担やストレスが軽減されるはずです。

 共立美容外科では医療用レーザーを使用した医療脱毛サービスを提供しており、「介護脱毛という理由で来られる方で人気の部位といえば、やはりVIOの需要が高いです」と遠山貴之さんは言います。

 次に「衛生状態が良くなる」こと。デリケートゾーンは雑菌が繁殖しやすい部分ですが、アンダーヘアがあると蒸れも生じやすく、汚れが残っていた場合には雑菌がどんどん繁殖していきます。介護が必要な状態の方は免疫力が下がっているケースも多いため、雑菌が入り込んで感染症を引き起こすリスクも高いです。脱毛をすれば蒸れにくくなる上、汚れも拭き取りやすくなるので、デリケートゾーンを衛生的に保ちやすいです。

「介護脱毛のメリットは本文にもあるように、1つは排泄時や入浴介助時の双方の負担の軽減が挙げられます。また、脱毛をすることで細菌が繁殖しにくくなり、炎症などのトラブルや臭いの軽減などのメリットも挙げられます。正直、やらない理由がないと思います」(共立美容外科 遠山貴之さん)

 さらに、「肌トラブルを予防できる」というメリットもあります。アンダーヘアには排せつ物が絡まりやすい上、デリケートゾーンの皮膚は薄いため、汚れをゴシゴシと拭くと皮膚が傷つき、かゆみや炎症などの肌トラブルを引き起こす可能性があります。脱毛していれば、ソフトな拭き取りできれいにできるので、肌トラブルも起きにくいです。

 注意点としては、脱毛を受けたことで「肌トラブルが起こる」可能性もあります。一時的な赤み、腫れ、かゆみ、色素沈着、毛嚢炎、やけどなどが挙げられます。これらの症状がでた場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。また、医療レーザー脱毛・ニードル脱毛・光脱毛のどれを選んでも、自己処理の手間がかからない程度まで脱毛するには、「複数回通う必要がある」というのも注意点のひとつかもしれません。

「医療脱毛で使用する医療用レーザーは、“黒い毛”に反応することで脱毛効果を発揮します。歳を重ねて、毛が白くなってしまうと医療用レーザーは反応しなくなってしまうので、脱毛を考えている人は白い毛になってしまう前にできるだけ早めに受けてもらうほうが良いでしょう。意外に知られていないのですが、VIOの毛も歳を重ねると白くなってしまいますよ。悩んでいる人はぜひ一度、共立美容外科の無料カウンセリングにお越しください」(共立美容外科 遠山貴之さん)

 人にデリケートゾーンを見られることに抵抗があり、自分で行うVIO脱毛を検討している人もいるかもしれません。しかし、家庭用脱毛器はあくまで減毛・抑毛効果が得られるもので、効果が半永久的に続くものではありません。本格的に介護脱毛をしたいのであれば、医療機関やクリニックで施術を受けたほうがいいでしょう。アンダーヘアが白髪になると医療レーザー脱毛の施術はできなくなるので、気になる場合は早めに検討してみてください。

共立美容外科 遠山貴之さん
日本美容外科学会認定専門医/麻酔科専門医
1997年、順天堂大学医学部卒業。1997年、順天堂大学医学部付属病院・麻酔科に入局。2006年、共立美容外科・歯科に入局。2020年、共立美容グループ・総括副院長に就任。