ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。

こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング実践編』(後藤 宗明著、日本能率協会マネジメントセンター)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。


リスキリングの動きはまだ始まったばかり

読者が選ぶビジネス書グランプ2023のイノベーション部門賞も受賞された前作『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』の第2弾が本書です。実践編と銘打っているように、実際にリスキリングをするときの壁とその対処法が語られています。

本書の定義によると、リスキリングは、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」を意味します。

昨年、岸田政権は所信表明でリスキリングに5年間で1兆円の投資をすると発表しました。その背景にはほぼすべての会社で抱えている、「これから求められるスキル」と「今までに育成してきたスキル」のギャップがこれまでになく広がっていることにあります。

その要因はAIの進化が中心にあり、他にもSaaS型のサービスの普及や、新型コロナウイルスの流行によって促された働き方の多様化もあるでしょう。

リスキリングは誰のためのものでしょうか。まずは働く個人のためで、次にスキルを獲得した人を雇っている企業のためにもなります。

必要なスキルを持つ人を新たに雇うコストと比べて、社内の人を育成してそのスキルを獲得するのは、かかる費用がおよそ1/6であるという試算もあります。個人のためでありながらも、企業が本気で取り組むという背景があるものです。

人生100時代に備えてというような悠長な話ではありません。ここ数年で起こるだろうAIの浸透に備えて、私たちは今リスキリングをしなければならないのです。


リスキリングの最新トレンド

2023年5月の世界経済フォーラムで衝撃が走りました。今まで一貫して雇用が増えると言われてきましたが、それが逆転することが予想されました。今後5年間の雇用創出される6900万件に対して、雇用消失は8300万件になり、約1400万件の純減です。

3年前の予想が5000万件超の雇用創出の純増だっただけに、いかに急激に環境が変化しつつあるのかを物語っています。

この環境の激変の背景には、ChatGPTに代表されるような生成AIの想像を上回るスピードでの進化があります。マニュアル化できる定型的な業務や一定の規則に従った論理的あるいは数理的処理は、段階的に生成AIが仕事を担っていくでしょう。

それに限らず、文章や画像の作成、マーケティングや企業戦略の策定などの発想力が問われそうな領域ですら、カバーされる可能性を秘めています。


これから必要とされるスキル

今後はITと同様にAIを駆使して働く人が今後増えていくことは自明です。その時代に求められるスキルが本書で触れられています。

第一位から、クリエイティブ思考、分析的思考、テクノロジー・リテラシー、好奇心と生涯学習、レジリエンス・フレキシビリティ・アジリエンス、と続いていきます。AIの知識に留まらず、求められる思考や行動の特性が変わっていくことも示唆されています。

スキルは主に仕事上で発揮するものであることを踏まえると、環境変化にさらされるビジネス環境ではスキルには寿命があることを理解しておくと良いでしょう。

マインドセットや気質に関わるスキルは概ね7年以上の耐久性がありますが、産業・業界に関わる知識は概ね5年前後、プログラミング言語や組織特有のスキルは2.5年以下だとされています。そのため、何を学ぶかが大切であることに加えて、一度学んで終わりではないことにも注意が必要です。

なお、海外における採用面接では、fast learner(習得が早い人)であることが、評価の高いポイントになるそうです。新たに学ぶ姿勢を持つとともに、早く習得することが求められるのです。