投資に興味はあるが、リスクを考えると一歩を踏み出せない。そんな人におすすめなのが「優待株」への投資から始めることだ。 初心者にもわかりやすい投資情報サイト「やさしい株のはじめ方」を運営する竹内弘樹氏に、優待株投資の基本をレクチャーしてもらった。

※本稿は、『THE21』2024年4月号特集「普通のサラリーマンが定年までに『お金の自由』を手に入れる方法」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

※本稿は2024年2月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。


優待株が投資の入門に最適な理由

いくら投資をすべきと言われても、いきなり資産の多くを株に振り分ける、というのは精神的に厳しいことと思います。そこでおすすめしたいのが「優待株投資」からのスタートです。

優待株とは、一定数の株を保有する株主に、配当金とはまた別に、独自の特典をつける銘柄のこと。その会社の商品に使える割引券や引換券などが特典の代表例です。バラエティで活躍する投資家・桐谷広人氏の投資法としても知られていますね。

投資の第一歩に「優待株」を推奨する理由は3つあります。1つは、ただ持っているだけで手軽に「投資の実感」を得ることができるという点です。優待を通じて投資そのものに前向きな気持ちを持てるようになればベストでしょう。

続いて2つ目の理由は、あくまでその傾向があるというだけですが、比較的「株価の値動きが穏やか」であることです。 これは、優待を目的に買われた株はその後も保有され続ける可能性が高く、激しい売買による株価の急変動が起こりにくいため。

また、値下がりした場合もその分「優待込みの利回り」が上昇するため、再び買われやすいという理由もあります。

そして3つ目の理由は「参入のハードル」が低いこと。つい10年ほど前までは、1株で100万円以上する銘柄、といったものもありました。これでは個人にはなかなか手が出せません。

それが近年、その状況を憂慮した取引所の主導で「個人投資家向けに株価を調整する」という動きが生まれ、今では多くの銘柄が「1株あたり5000円以下」となっているのです。

もちろん「資産の大半を株式にして、値上がりで儲ける」といった投資法の場合、1株の価格はさほど問題ではないのですが、優待株は「優待を受けられる数(多くの場合で最低100株から)」だけ株を持てばいい投資ですから、この恩恵は大きなもの。

これにより、今では20〜30万、安ければ数万円で、株主優待を受け取れる規模の投資を行なえるようになりました。


狙える「優待株」を 見抜く方法

しかし、だからと言って「優待を受けられる数の株を、5万円で買える企業を探すぞ」などと、手の出しやすさだけで投資先を決めるのは損のもと。 たいていの場合、あまりに株価が安い企業というのはそれだけ不人気だということ。思わぬ「トラップ」が隠されていることも少なくありません。

優待の内容や有無は会社が毎年判断するものですから、最悪「優待目当てで買ったのに、業績不振で優待が廃止に」といったことが起きる可能性もあるのです。

では、そうした企業を見抜くには何をすればいいか。まず一つは、当然ながら利益や売上高の推移を確認することです。ネット証券に口座を持ってさえいれば、企業の基本財務状況は簡単に調べられますから、少なくとも「利益が右肩上がりか」「売上が右肩上がりか」は必ず確認するようにしてください。

そして、もう一つのチェック項目が「優待の内訳が、自社商品に使える割引券や無料券」かどうか。それ以外の、例えば「クオカード」のような汎用性の高い金券による優待は、怪しんでおいたほうがいいのです。

というのも、自社商品の割引といった優待がその会社の売上にもつながる「win-win」なものであるのに対し、クオカードのようなあまりに汎用性の高い商品は、送る側にほとんど利点がありませんよね。

そもそも「色々経費をかけて1000円分のクオカードを送るなら、1000円分配当を増やしてよ」という話。こういった優待内容の場合、その会社の業績が芳しくない場合はもちろん、ある程度好調な場合でも、突然優待を廃止される可能性を否めないのです。

その意味では、優待株投資で狙うべきは自社商品を優待に活かせる「BtoC」型の企業、ということにもなるかと思います。


竹内氏イチ押しの 「優待銘柄」とその理由

逆に、今後も期待できる「優待株」とはすなわち、優待内容がその企業の商品やサービスに使える優待券で、配当と優待を合わせた総合利回り(優待利回り+配当利回り)が高く、財務が健全な銘柄のこと。 具体的なおすすめ銘柄についても、4つピックアップして上の図でご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

中でも私のイチ押しは「イオン(8267)」です。その理由は、優待が「定額」ではないから。基本的に優待は「○○円引き」というサービス券の形をとることが多いのですが、イオンの場合「イオンでの購入額の3%(※保有株数によってはそれ以上)」がキャッシュバックされるという内容なのです。

上限として「半期(半年)につき購入額の算入は100万円まで」という縛りつきですが、そこまでいく人は少数派ですよね。普段の買い物がイオンだという人なら、誰もが破格の利回りを得られる投資先だと思います。


「優待株投資」の よくある落とし穴

優待株投資に意外とよくある失敗が「優待を受けるために必要な株数」や「どれだけ保有すればどのくらい優待がグレードアップするか」を勘違いして投資してしまうという事例です。

100株から優待が受けられる銘柄が主流ではありますが、中には「最低500株から」という銘柄もありますので、そこは注意が必要でしょう。

また、先述の通り、最近では桐谷広人氏を通じて優待株投資を知った、という方も増えました。それ自体は歓迎したいことなのですが、優待株投資そのものは、桐谷氏のような巨額の資産を築くためのものではなく、もっと堅実な投資法。

リスクを承知で大きく資産を増やしたいという方には、他の投資法をおすすめしたいと思います。


【竹内弘樹(たけうち・ひろき)】
ライフパートナーズ(株)代表取締役。1978年、愛知県出身。岐阜大学農学部を卒業後、大手食品メーカーに入社。その後FPの資格を取得して独立し、株式投資初心者でもわかる投資情報サイト「やさしい株のはじめ方」を立ち上げる。瞬く間に人気サイトへ成長し、現在のアクセス数は延べ1,000万人超。その他の運営サイトとして「楽しい株主優待&配当」「やさしいIPO株のはじめ方」などがある。