出勤前、通学前の朝の時間を、バタバタと忙しなく過ごしていませんか? 高いパフォーマンスを発揮するには、余裕をもって1日をスタートさせることが重要です。医師の小林弘幸さんが自律神経を整えながら、快適な1日を過ごすための朝の習慣について紹介します。

※本稿は、小林弘幸著『「ゆっくり動く」と人生が変わる』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。


「朝の過ごし方」が、その日一日の出来を決める

朝の過ごし方は本当に重要です。

なぜなら、朝の自律神経の状態は長く持続する傾向があるからです。つまり、朝の過ごし方がその日一日のみなさんの自律神経のバランス、ひいてはパフォーマンスや精神状態をも大きく左右するといっても過言ではないのです。

そして、ここで鍵となるのは「ゆっくり」です。

最近人気の朝ヨガや早朝禅は、自然と「ゆっくり呼吸」になり、その日一日を自律神経のバランスのいい状態で始められるのでおすすめです。ただ、休日の朝ならともかく、平日の朝にそんな時間はとてもない、という人がほとんどでしょう。

「ゆっくり」といっても特別なことをやる必要はないのです。毎朝やっていることを少し「ゆっくり」を意識してやるようにする。たとえば、少し早めに起きて、ゆっくり朝食をとり、ゆっくり新聞を読み、ゆっくり歯を磨く。それだけで、みなさんの自律神経は整い、その日一日がうまくいく方向に変わるのです。

逆に、朝、ギリギリに飛び起きて、朝食もとらずに、バタバタと出かける。そうすると、その人の呼吸は乱れ、自律神経のバランスもかなり乱れてしまいます。

そして、一度乱れた自律神経は、よほど意識してリカバリーしないと尾を引きますから、その人は、その日一日をずっと自律神経のバランスが乱れた状態で、バタバタと焦りながら過ごすことになってしまいます。

そうなると、頭も五感の働きも鈍くなって仕事などのパフォーマンスが上がらないばかりか、血流が滞って血がドロドロの状態になるので、肉体の健康という面から見ても非常にマイナスになってしまうのです。


「ゆっくり歩く」で、一日を快適にスタートする

歩き方というのは、じつは、その人の自律神経のバランスが如実に出るものです。さらに言えば、歩き方ひとつで、その日一日、すべてが変わってしまいます。

ですから、もしもみなさんが、「今日をすばらしい一日にしたいな」と思われるなら、とりわけ朝の歩き方を意識していただきたいのです。

まず、背筋を伸ばして、肩の力を抜きます。それから、頭の中心がまっすぐ空につながっているような意識で首を伸ばし、脚ではなく、おへそから前に出すような気持ちでゆっくり一定のリズムで歩く。これが、理想の歩き方です。

なぜなら、この歩き方をすると、まずは気道がストレートになります。すると、呼吸も自然にゆっくり深くなり、副交感神経の働きが上がって、自律神経のバランスが整い、結果、血流もよくなり、気持ちまですっと爽やかに落ち着いてくれるからです。

ですから、「今日はちょっと調子が悪いな」「何か気分が晴れないな」と思ったときほど、目線を上げて、この理想の歩き方を意識してみてください。

調子が悪いからといって、うつむいて背中を丸めて歩いていると、気道が狭まり、呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが乱れて血流が悪くなり、心も体もどんどん悪いほうに向かってしまいます。

また、「時間がない」と、焦ってバタバタ歩くのも禁物です。バタバタ歩くことによって、残念ながら、その日一日の自律神経のバランスはかなり悪いものになってしまうからです。

つまり、美しい姿勢でゆっくり一定のリズムで歩くということは、一日を快適にスタートできるだけでなく、その日一日の成功・不成功さえ左右する大事なことなのです。

ですから、みなさんもぜひ、この美しい姿勢での「理想の歩き方」を日常生活の中で意識していただけたらと思います。美しく歩くことは、美しい人生を開いてくれる鍵でもあるのですから。