小学校受験と聞くと、「幼い子供に受験なんて……」という印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし、小学校受験は、子どもの力をぐっと引き出すことのできる貴重な機会であり、挑戦するだけでも大きなメリットがあります。

私立小学校教諭として18年勤務されたなごみゆかりさんが、小学校受験初心者の親御さんに向けて「小受の5つのメリット」を解説します。

※本稿は、なごみゆかり著『忙しいママでもできる! 私立小学校を受験しようと思ったら読む本 』(日本能率協会マネジメントセンター)から、一部抜粋・編集したものです。


小学校受験のメリットとは?

そもそも小学校受験のメリットは、何でしょうか。それは次の5つです。


1.教育への関心が高いご家庭のお子さんが多い
2.教育の質が高く教育熱心な先生が多い
3.受験に挑戦することによって親子で人間力(知力・運動力・コミュニケーション力)が高まる
4.脳の「黄金期」(6歳までに脳は9割作られる)を有効活用
5.受験によって子どもの力を最大限に引き出し、未来につなげるチャンス

では、それぞれ詳しくお話していきますね。


1.教育への関心が高いご家庭のお子さんが多い

「国立・私立小学校に入学させたい」と思うご家庭は、「高い教育と豊かな経験をお子さんにさせたい」と願うご家庭です。そもそもが教育熱心なご家庭の上、受験をくぐりぬけてきたお子さんたちしかいません。


特に私立小学校は、「建学の精神」というものが各校にあり、学校の教育方針に賛同するご家庭のお子さんたちが受験・入学します。基本的に落ち着いたお子さんが多く、みんな「机に向かって取り組む」ということに慣れているお子さんたちです。一年生初日もきちんと席についてお話が聴けるのがスタンダード。

ですから、公立学校から私立校へいらした同僚が、「やはり子どもたちの基本姿勢が違う」と驚いていたことが記憶に残っています。公立では、地域やクラスのメンバーによりますが、こうはいかないところがほとんどと聞きます。

もちろん、ちょっと集中力に欠ける、教師の話をさえぎって割り込んで話してくる子もいますが、クラス全体を大きく乱すようなことにはなりません。国立も同じです。

また、受験を通して、言葉や数の概念など、「思考の基礎」がすでにできています。子どもたちの生活指導に時間をとられることがあまりないので、全体を通して落ち着いた、質のいい授業になります。


2.教育の質が高く教育熱心な先生が多い

次は教師の話です。公立の先生が熱心でないということでは決してありません。私立の教師は、その学校の出身者か、学校の教育方針に賛同した教師が就職していることが多いので、「自分の惚れ込んだ教育方針をさらに子どもたちにしっかりと浸透させていきたい」と尽力します。国立の先生も、自分の研究を通し、子どもたちの力を最大限伸ばしたいと考える、教育熱心な先生ばかりです。


学習も生活指導も学校行事も、すべてが「学校の望む子どもに近づけるために」という意図の元、作られています。しかも、私立校は、専科制が充実しているので、担任でも、国語と算数のみを教えて、あとの教科は全て専科の教師が教えることが多いです。そのため、高い専門性を持った教師が、複数の目線、複数のアプローチでお子さんの力を引き出し、伸ばしていく体制ができています。

学校内でも、教科に分かれて毎月さまざまな工夫を凝らして、お子さんの力を高めていこうとします。実は、私立は、退勤時刻を過ぎても、遅くまで授業やクラス運営のことを考える教師や、学校行事が多いため、分担する係の仕事を複数掛け持って計画・実行している教師が多かったりします。

熱心な先生がとても多いのです。


3.受験に挑戦することによって親子で人間力(知力・運動力・コミュニケーション力)が高まる

この人間力(人間としての力)を幼児期につけられるということは、親子ともに今後の人生において、大いに励みになることだと思います。


学校側が求める子ども像は、もちろん各学校によって少しずつ異なりますが、広く言うとこの力を持った子どもであると言えます。全部完璧じゃなくていい。うまくいかないときにかんたんにあきらめずに、工夫しながら、乗り越えられるまで努力を続けられる子どもなのか、そこを受験で見せていただくわけです。ご家庭でそんな力を持つお子さんに育てることは決してマイナスにはならない。プラスだらけだと思うのです。

今後のお子さんにとってもその力は財産となりますし、親御さんにとっても、幼児期にお子さんの力をしっかりと引き出させる経験をすることで、親御さん自身にもお子さんを見守る力・励ます力・信じる力が備わり、よいことだらけです。小学校受験をするメリットは無数にあります。


4.脳の「黄金期」(6歳までに脳は9割作られる)を有効活用

小学校受験に向けて準備をする子どもたちの年齢は、およそ3歳〜6歳。この時期に受験で必要となる力を育てることは、脳の発達を促すことにも大いにつながっていると言えます。


脳は、その「重さの変化」に着目したとき、6歳までの間に爆発的に大きくなると言われています。

生まれたばかりの赤ちゃんの脳の重さは約350グラムですが、6歳になる頃には約1,300グラムにまで大きくなり、大人の脳の重さの9割ほどとなり、これ以降、脳の重さはほとんど変わらないわけです。このことから、脳の発達においては6歳までが特に大事な時期だと言うことができるのではないでしょうか。

幼児期の脳は、たった1ヵ月で大人の10年分の発達をすると言われています。「話す・聴く」という受け答えをすること、話を集中して聴き、内容をある程度覚えること、身体を動かして遊ぶこと、紙を折ったりハサミで切ったりして手先を使うこと…。受験に向けて練習するこれらの経験が、まさに脳の成長を育んでいます。この「脳の黄金期」ともいえる時期に、適切な働きかけをすることで、脳の発達をしっかり促すことができるのです。


5.受験によって子どもの力を最大限に引き出し、未来につなげるチャンス

受験は、お子さんの持つ力をぐんぐんと引き出す絶好の機会。素直で一生懸命。これからいろいろな経験をするとともに、可能性が無限大のこの時期。受験に備えるすべてのことが、お子さんの成長に密接にかかわっているのです。

そう考えると、受験にはもちろん結果がついてきますが、この経験は、何にも代えがたい貴重なもの。ここでじっくりお子さんに向き合うことができた親御さんは、お子さんの力を最大限に引き出し、親子で宝物のような時間を過ごすことができたと言えるのではないでしょうか。