幼稚園・保育園からの小学校へ、どうスムーズに移行すればいいの? 毎年春になれば頭を悩ませるママ・パパが続出しますが、実は本当に子どもが傷つきやすいのは、子どもたちが初めて挫折を知る「小2,小3」だと言います。

見逃せない小2、小3の壁の詳細と、親が注意して見てあげてほしいポイント、そして思春期の入口となる10歳前後の子の自己肯定感の高め方を解説します。

※本書は『子どもの自己肯定感の教科書』(中島輝著、SBクリエイティブ刊)より一部抜粋編集したものです


自己肯定感の小2・小3の壁とは?

自己肯定感の最初のつまずきポイントがあるとすれば、小学校2、3年生のころではないでしょうか。子どもが小学校に入学したばかりのころは、はじめてのことがたくさんあります。

だからお子さんも親御さんも一生懸命とり組み、乗り切っていくことが多いのです。なかには「学校に行きたくない」というお子さんもいますが、むしろ悩みはシンプルです。

それが小学校2、3年生くらいになると、少し複雑化してきます。具体的にこの時期は、3つのポイントがあります。


小学校1年生と2年生で何が変わってくるのか?

1つは、コミュニケーションのとり方が複雑になってくること。

これまでは家庭では親と、学校では担任の先生や仲のいい友だちなどと、シンプルにコミュニケーションがとれれば意思疎通ができました。

そこから少しずつ小学校生活にも慣れ、学校では「○○委員会」「○○係」などの役割が決まりはじめたり、クラブ活動がはじまってきます。

また家庭によっては習いごとが増えたり、塾に通いだしたりする子もいるでしょう。小学校1年生までは、何かと世話を焼きがちだったお母さん、お父さんも、子どもに任せることが増えてきます。そのぶん、仕事に時間を割さくことができ、忙しくなる親御さんもいます。

たとえば、1年生のあいだは仕事帰りに学童保育にお迎えに行っていたお母さんがお迎えに行かなくなる、またときには、子どもだけで家で留守番をさせる機会も出てくるかもしれません。

子どものまわりのさまざまな環境の変化は、子どもにも少なからず影響を与えます。

別の見方をすると、この時期の子どもはコミュニケーションのとり方が下手になってくる、つまり子どもとコミュニケーションをとるのが難しくなってくる時期でもあります。少なくとも家庭では、お子さんと接する時間が短くなっても、肯定的なコミュニケーションのとり方をしてあげる必要があるでしょう。


学力の個性が出て、他の子どもと自分を比較する時期


2つ目のポイントは、学習面で個性の違いが出てくる時期だということ。

学校の授業では、小学校2年生から九九がはじまります。子どもによっては「国語は得意だけど算数はキライ」「算数は好きだけど、国語はまったくダメ」などの個性が出てきます。

お子さん自身が友だちと比べて「自分はダメなのかな」「できないのかな」とまわりを意識しはじめるのもこの時期。もちろん、お母さん、お父さんもわが子の学習面が気になりはじめ、ほかのお子さんと比較することが増えはじめます。

たとえばこの時期に「○○ちゃんはもう全部九九覚えたんだって」「もっと音読をちゃんとしないと、どんどん国語が苦手になるわよ」などと、ほかの子と比べたり、その子の悪いところにフォーカスするようなことをいってしまうと、子どもの自己肯定感は下がってしまいます。


性格の違いがはっきりとしてくる年齢

3つ目のポイントは、この時期に性格やパーソナリティが出てきやすいということです。

Aくんは社交的で活発であるとか、Bちゃんは内向的でおとなしい、Cくんは繊細、などといったような違いが出てくるのです。いじめのご相談がはじまるのもこの時期です。

ですからなるべくこの時期くらいから、その子の個性に合ったサポートをしてあげる必要があります。

たとえばこんなことがありました。ある教育者の講演会に出席した小学校2年生のDくんのお母さんが、「子どもには低学年のうちから武道を習わせるといい」と聞いたのです。武道を習わせると礼儀正しい子になるし、ハキハキと声が出せるようになるから、絶対におすすめだと。

日ごろから何ごとにも消極的だったDくんのことを心配していたお母さんはすぐに、息子に剣道を習わせることにしました。

でも、数回通っただけで子どもは行きたがらなくなりました。大きな声を出して竹刀をもって戦うのは嫌だというのです。泣く泣く剣道をやめさせましたが、3年生になるとDくんは自分から「学校のクラブ活動の吹すい奏そう楽がくをやりたい」といい出したのです。はじめて習う楽器で演奏するDくんはイキイキとしていました。

ここに来てようやくお母さんは、自分がDくんの個性を無視して、やりたいことも聞かずに習いごとを押しつけていたことに気がついたのです。

先ほども触れたように、さまざまな調査で、自己肯定感のターニングポイントが9〜12歳くらいであるという報告があります。

コミュニケーション、学習面、パーソナリティの違いによる個性が子どもの成長に深くかかわってくるこの時期。ぜひお子さんに寄り添い、サポートをしてあげましょう。