大人が無理やり勉強をさせても、子どもの脳は育ちません。
自ら好奇心を持って勉強する子に育てるために、親が心掛けるべきこととは? 医師の成田奈緒子さんが解説します。

※本稿は、成田奈緒子著『子育てを変えれば脳が変わる 』(PHP研究所)から、一部抜粋・編集したものです。


おりこうさんの脳は、勉強させても育たない

「おりこうさんの脳」は、私たちが「脳」と言われて最初にイメージする、しわしわの部分。部位で言えば大脳新皮質にあたります。

おりこうさんの脳が司るのは、言語能力や計算力、記憶力、スポーツの巧みさや手先の器用さなど。加えて、知識や情報を蓄積し、それらを必要なときに思い出しながら考えをまとめる力も、おりこうさんの脳の領域です。社会のルールや常識も、この脳に蓄えられます。

おりこうさんの脳は、からだの脳より少し遅れて1歳ごろから育ち始め、18歳ごろまで成長し続けます。成長の中核期となるのは、6〜14歳ごろの小中学生時代です。

従って、おりこうさんの脳育ては1歳から始めるにしても、本格化させるのは小学校に入ってから。乳幼児期は「からだの脳」が最優先、と心得ましょう。

そしてもう一つ、覚えておいていただきたいことがあります。「おりこうさんの脳」を育てることは、学校の宿題をさせたり塾に行かせたりすることではありません。親が無理やり勉強させても、おりこうさんの脳は育ちません。

「おりこうさんの脳を育てる」とは、本人が「勝手に勉強しだす」ような脳をつくること。物事に興味関心を抱き、好奇心の赴むくまま自発的に知識を求め、思考や探求を深めていこうとするベースをつくることです。

では、そのために親ができることは何でしょうか。

その答えは、経験を積ませることです。子供が、自分をとりまく世界を見る・知る機会を多く与えることです。

その機会のなかで、もっとも重要なのが「家庭生活」です。

家庭は、もっとも小さな単位の「社会」。そこでの生活は、他者との共同生活を学ぶことを意味します。子供が、家庭という社会の一員として自らを位置付けることが、広い世界を知るための、最初の一歩となります。

「家庭で生活するなんて、どの家でもしていることではないか」と思われたでしょうか?

では振り返ってみてください。皆さんは子供を、家という社会に参画させているでしょうか。あれこれ世話を焼いたり、失敗しないように先回りしたりして、「お客様」扱いをしていないでしょうか。

これもまた、愛情のつもりで、脳の成長を阻む育て方です。

それよりはるかに簡単で、それでいて子供の知性を伸ばす育て方を知っていただきたいと思います。