子どもが困っている行動の背景を多角的に捉えて

子どもの行動に「発達障害では?」と決めつけない

発達障害ということばや概念が広まってきています。そのような中、すぐにかんしゃくを起こす、集団活動ができないなど、大人から見て好ましくない行動をとる子どもを、「発達障害では?」「愛着の問題では?」などと捉える傾向が見られるようになりました。しかし、その決めつけには問題があります。それは、その子どもの理解をあきらめ、行動の理由や背景に思いをめぐらせなくなるからです。

乳幼児期の子どもの発達はそもそもアンバランスで、大人から見ればちょっとした出来事や環境の変化に大きな影響を受けます。見守っていてよいケースもあれば、適切な支援が必要なケースもあるのです。発達障害の可能性を考えながらも決つけないことが大切です。

保育現場では、障害であろうとなかうと、目の前の子どもを多角的に捉え、その子に合ったかかわりや環境を工夫していきます。大人から見て気になる行動は、子どもにとっては「困っている」姿です。適切な支援の結果、子どもにとって困った状況が減るのであれば、その子が「発達障害」かどうかは必ずしも重要ではありません。


子どもの行動の背景になにがあるか考える

子どもの行動には、なにかしらの理由や背景があります。大人から見て好ましくない行動をとる子どもに気づいたら、「なぜ、この子はこのような行動をとるのだろう」と考えてみましょう。そして、いろいろな可能性から問いを立て、ひとつずつ検証していきます。

たとえば、集団活動で大人の指示が通らず、ボーっと立ちすくんでいる子どもがいたとします。

その場合、
「耳の聞こえが悪いのでは?」→
「音は聞こえているようだ」→
「ことばは理解できている?」→
「ほかの場面でことばは理解できている」→
「視覚優位で耳からの情報が入りにくい?」→
「目で見てわかる指示を工夫してみよう」
などのように、順を追って考えます。

ことばでのやりとりができる子どもであれば、「なにか困っている?」と聞いてみてもよいでしょう。もしかしたら、自分が困っている状況を「……ができない」「どうしたらいいかわからない」などと話してくれるかもしれません。場面緘黙などで話せなくても、表情や態度でなにかを示してくれることもあります。

子どもの行動がどのような環境(時間・場所・状況・周囲のかかわりなど)で起きているかを分析することは、子どもが過ごす環境を見直すことに繋がります。子どもを変えるというより、環境を変えていくことが大切です。