PRESIDENT Online 掲載

ドラマ『おっさんずラブ』が人気になるなど認知されつつあるボーイズラブ(BL)。タイ、中国、韓国などアジア発のBLドラマも目白押しだ。コラムニストで漫画家の辛酸なめ子さんが、4月下旬に都内で開催された台湾のBLの出演者が勢ぞろいしたファンミーティングに潜入した――。

■イチャイチャしても妊娠しない平和な癒しのBL世界に浸る理由

ここ数年で人気がますます沸騰し、定着してきているアジアのBLドラマ。コロナ禍にタイのBLドラマのファンが増え、中国や台湾、韓国、フィリピンなどでもBLドラマが次々と制作されるようになりました。

良作が多いタイBLについで台湾のBLも日本国内で人気が高まっています。タイも台湾もルックス的に日本人と近くて、感情移入しやすいのが魅力のひとつなのでしょう。

「CP」と呼ばれるドラマ内のカップルで、テレビのバラエティー番組に出たり、ファンミーティングを行なったりして、ドラマ以外にも供給が多いです。コロナが開けてから来日イベントも頻繁に開催されています。

一般的に、BL人気の背景にあるのは、「恋愛に伴う生々しい性(生理・妊娠・結婚・出産などの現実)と切り離した形で、イケメンたちがイチャイチャする様子やファンタジーの世界を見て楽しみたい」といった女性の心理です。

もしかしたら現代人の恋愛離れも影響しているのかもしれません。誰かと交際したり関係性を築いたりするのは大変で、エネルギーを消耗します。恋愛感情の時点で、心身が翻弄されて疲れてしまいますが、その感情から適度に距離を保ち、ときめきや萌えを体感できるのが、BLドラマなのかもしれません。

感情移入しすぎず、美しい2人を見ているだけで満たされます。現実世界では見かけない、優しくてビジュアルも最高な「スパダリ」(スーパーダーリン)的な男子たちが、恋愛ドラマを繰り広げます。美しい箱庭を眺めているような感覚で、日常の不安も忘れて多幸感に浸れます。