4月9日、政府は少子化対策のための「こども・子育て支援金」について、会社員などが加入する被用者保険での年収別負担額を発表しました。 「こども・子育て支援金」は社会全体でこどもや子育てをしている人々を支えるという理念の下、今の公的保険料に上乗せして個人や企業から集めるものです。 新たな負担になるのでは、という危惧もありますが、実際にはどのような制度なのか、確認してみましょう。 平日朝に放送されている情報番組『CBCラジオ #プラス!』、4月10日の放送ではCBC論説室の石塚元章特別解説委員が、この制度について解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーです。

     

児童手当が拡充

「こども・子育て支援金制度」は2026年度に徴収が開始され、3年かけてだんだん支払額を増やしていく予定で、最終的には総額1兆円を毎年集める予定です。

政府は少子化に歯止めをかけるには、若年人口が急減する2030年代までがラストチャンスと考え、今からお金を集めようとしています。

集めたお金の使い道ですが、ひとつは児童手当制度の拡充に使われます。

現在、児童手当には所得制限があり、一定の所得以上の方は児童手当が減ったり、なくなったりしていますが、この所得制限が撤廃されます。

また、支給対象が18歳までに拡大され、3歳までは月額1万5千円、18歳まで1万円が支給されます。

さらに第3子以降は3万円にまで増額されます。

こども誰でも通園制度とは?

また、親が働いていなくてもこどもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」にも支援金は使われます。

永岡「専業主婦だった方が『パートへ働きに出たい』と思った場合でも預けることができたり、個人の能力はあるものの、園に行ってるこどもの方が話すスピードや動きが成長していると感じて園に行かせたい、という場合にも対応できるんじゃないか」

さらに、共働きの親がふたりとも育休を14日ずつ取得して、合計28日間休んでも手取り収入が減らないよう、育児休業給付の額を引き上げるとのことです。

子育て世代は損か?得か?

いいことづくめのように感じられますが、これらを実現するためには当然お金が必要なので、多くの国民の負担が増えることになります。

年収600万円を例にすると2028年度では月1,000円、一番高い年収1,000万円の場合は初年度(2026年度)は月1,000円ですが、翌年は1,350円、最後は1,650円にまで上がります。

一方、この徴収は子育て世帯も例外ではないので、メリットがあるのかどうかわかりづらいところ。
例えば夫婦共働きで年収600万円ずつ、小中高のこどもが3人いる家庭の場合、小中のこどもは児童手当が今は年30万円ですが、制度改正では年60万円に倍増します。

一方で支払いは年2万4千円ですから、全体で見ると得ですよという考えです。

ただ、こども家庭庁の以前の説明では、個人の負担額は医療保険の4〜5%ということでしたが、政府は「集める金額が1兆円と決まっているため、賃上げが進めば収入に占める負担の比率が減るから」と弁明しています。

発表の方法が失敗?

子育てにとってお金の問題は重要ですが、お金があるからといってこどもを望むとは限りません。

石塚「お金とこどもを作ることがイコールかというと、お金の問題は間違いなく大きいけど、今の若い人の考え方を見てると、お金があっても別に結婚しなくてもいいやとか、ふたりだけでいいやとか。
そういう考え方が、(少子化対策における)もうひとつのハードルかなと思っていて」

さらに石塚は政府の発表の仕方があまり良くないと語ります。

石塚「今回ヘタ打ったなと思うのが、いまいろいろ指摘された課題に加えて、政府は最初、『ひとり500円ぐらいで良い』って言ってたんですよ。

計算がすごくざっくりで、人口割しちゃったらだいたい500円かなって言っちゃうもんだから(あとに発表した方が金額が高くなった)」

「最初は多めに金額を言っておいて、後で少ない金額にする」というのは、常套手段ですが、今回は完全に逆を行ってしまいました。

特に今回のように、現在こどもがいるいない、既婚か独身か、また現在何歳なのかによって、大きく個人によってメリットが異なる政策を行う際は、政府の説明が重要となってきます。その点で、今回の説明はあまり良くなかったのかもしれません。
(岡本)