Maki Shiraki

[東京 8日 ロイター] - 日産自動車が三菱自動車に生産を委託している軽乗用車のうち、電気自動車(EV)を自社工場へ移す方向で検討していることが8日までに分かった。販売拡大が今後も見込まれる軽乗用車EVのコスト競争力を強化し、収益力向上につなげたい考え。事情に詳しい関係者5人が明らかにした。

関係者らによると、日産は2028年度以降に投入する軽乗用車のEVを子会社の日産自動車九州(福岡県苅田町)で生産することを検討中。軽乗用車の生産を委託している三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)ではEV以外の生産は続ける方針で、日産と三菱自は現在、協議している。

日産にとって、「サクラ」のような軽乗用車EVは有望な成長分野の1つ。22年6月に発売したサクラは、23年には前年比69.7%増の3万7140台を売り上げ、日本の乗用車EV販売全体の約4割を占める日本で最も売れたEVだった。

航続距離への不安や価格の高さなどから、EVは世界的に足元で需要が鈍化しているが、日産はサクラの堅調を踏まえ、比較的安価で短距離移動に適した軽乗用車のEVが日本では順調に伸びるとみている。関係者の1人は、自社生産に切り替えることで「効率を上げ、コスト削減につなげたい」と話す。

日産は、軽乗用車を三菱自と折半出資の合弁会社NMKVで企画・開発しており、三菱自の水島製作所で生産している。関係者の1人によると、NMKVでの協業は続けるとしている。

日産九州工場は年50万台の生産能力で、23年度は約40万台を生産する見込み。現在は第1ラインでミニバン「セレナ」と北米向けスポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」(北米名ローグ)を生産している。今後は国内と北米以外の海外向けエクストレイルを手掛けている第2ラインに北米向けも集約し、ローグの代わりに第1ラインで軽乗用車のEVを生産できないかどうか検討に入っている。

日産と三菱自の広報担当者はロイターの取材に対し、「そのような計画はない」とコメントした。

日産の23年4─12月期の営業利益率は5.2%。原材料高が落ち着き、円安効果もあって前年同期の3.9%から改善したものの、7.6%から12.5%に上昇したトヨタ自動車、5.9%から7.2%に上昇したホンダに比べるとやや見劣りする。

同じ期の世界販売(連結ベース)も、日産は前年同期比1.2%増だったが、トヨタは同12.4%増、ホンダは同22.6%増だった。