スポーツウェアがタウンウェアとして登場する映画はこれまでも何本か紹介してきた。でも、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)の場合、ほぼ全編が〈ナイキ〉で締められている。なにしろ、主人公のアドニスはボクシングのリングに上がるため、亡き父親、アポロのライバルで盟友でもあったロッキー・バルボアにトレーナーを依頼し、血と汗と涙のトレーニングに挑戦する。そのプロセスを描いたのが、『ロッキー』シリーズ初のスピンオフ映画である『クリード~』なのだから。これほどスウェットが必要不可欠な映画も珍しい。
   


劇中に登場するスウェット類とアドニスが履くエアジョーダンを含めて〈ナイキ〉ブランドの総数は160点以上。〈ナイキ〉のロゴマークであるスウィッシュマークを数えるのはけっこう楽しい。ジョギングシーンで着るパーカー(エア・ジョーダン オールアラウンドFZフーディ)とスウェットパンツ(テックフリース)の上下、トレーニングシーンで着る黒のタンクトップ(コンプレッションまたはジョーダンブザービータータンク)、グレーのドリフィット、ナイキブラックのショートパンツ、グレーのタイツ(ナイキプロウォームコンプレッション)等々。また、アドニスは恋人のビアンカと語らう時も〈ナイキ〉のテックフリースを着ているし、〈ナイキ〉のジョギングジャケットやコービー・ブライアントウーブンデストロイヤージャケットをタウンウェアにしている。マジで〈ナイキ〉だらけなのだ。こうなると、スポーツとタウンが完全に地続き状態だ。
   


とりあえずシューズ類も紹介しておこう。エアジョーダン6インフラレッドレトロ、同じタイプのパックブラック、リング上で履くハイパーKOボクシングジューズ等々、〈ナイキ〉マニア垂涎のシューズが次々登場する。また、アドニスの敵役、”プリティ”リッキー・コンランは〈ナイキ〉のライバル会社、〈アンダーアーマー〉のギアを着用している。まるで役柄の関係性にプロダクトが呼応するように。『ロッキー』シリーズほどスポーツブランドと縁が深いフランチャイズは他にないのだ。
それだけに、纏う俳優のボディメイクは大事。アドニスを演じるマイケル・B・ジョーダンは週6日のウエイトトレーニングと1年に及ぶ食事療法で24ポンド(約12キロ)の筋肉増強に成功している。結果は映画を観れば明らかだ。特に、ジョキングシーンでスウェットの生地を中から突き上げる大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋の存在感は半端ない。それは、スポーツウェアが正しく着こなされた瞬間だ。
『クリード チャンプを継ぐ男』
製作年/2015年 原案・監督・脚本/ライアン・クーグラー 製作・出演/シルベスター・スタローン 出演/マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、アンソニー・べリュー
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文=清藤秀人 text:Hideto Kiyoto
photo by AFLO