<掛川支局 伊豆川洋輔記者>
「素敵な名刺入れですね」

<石川紀子 掛川市副市長>
「地元・掛川葛布の名刺入れです。3年物になります。ますます風合いが出てきて素敵な名刺入れです」

今回のしずおか産は、副市長も愛用する「掛川葛布」の名刺入れです。手がけるのは、城下町・静岡県掛川市の特産品「葛布」を扱う「小崎葛布工芸」。創業は明治時代。150年以上もの歴史がある名店です。

葛布は鎌倉時代から生産が始まったとされ、800年以上の歴史を持つ伝統工芸品です。材料となる「葛」は、マメ科の植物で秋の七草の一つです。ツルの長さが6m以上にもなります。

「葛布」は、その「葛」のツルを鍋で煮た後、発酵させ、取り出した繊維を紡いだ織物です。「織子」とよばれる職人が丁寧に手作業で織って行きます。

<小崎葛布工芸 5代目小崎隆志社長>
「縦の糸には、綿か、絹を張って横に葛を織り込んでいく。非常に繊細な糸なので、織子さんの力加減一つで生地の風合いが変わってきますので、この辺りは長年の熟練した技」

<織子歴40年以上 野中啓子さん>
「(小物用の葛布を作るほうが)気を使う糸が細いので、若い方にもっと使ってもらえたらいいなって思っています」

掛川周辺で葛がよく取れたことや宿場町として、数多くの織り問屋ができたことから、名産品となったと言われています。一方で、時代の流れから安い外国産の織物や化学繊維の登場などにより、掛川市内の織り問屋もいまではわずか2軒です。

<小崎葛布工芸 5代目小崎隆志社長>
「グリーンモンスターと呼ばれる繁茂している葛から、絹のような光沢のある繊維がよくとれるなと。(葛布は)実際に仕事しながらも、不思議に思うほどその美しい光沢を放つ繊維」

真珠のような品のある光沢が魅力の葛布。軽くて丈夫なうえ、虫にも強いため、長く愛用できます。実際、220年前に葛布で作られた衣服が今もきれいな状態で残るほどです。また、時が経つことで、あめ色にゆっくりと変化していくのも魅力の一つです。

<小崎葛布工芸 5代目小崎隆志社長>
「ついたての生地は、150年経っています。ここまで良い味のある色に変化していくのが、葛の特徴。糸をさばいたりするもので人によって違うので、その風合いも変わってくる。一つとして同じものはない」

葛布の名刺入れも職人技で作られたオンリーワンの製品です。カラーバリエーションも30種類以上と豊富で、自分のお気に入りの色を見つけるのも楽しいですね。

<小崎葛布工芸 5代目小崎隆志社長>
「1000年も続く伝統工芸を絶対に継承していかくてはいけないと使命感に燃えている」

地元・掛川市もなんとか伝統を残そうと、市長応接室の壁紙に採用するなどアピールを続けています。

<小崎葛布工芸 5代目小崎隆志社長>
「葛布は長く持ちますので、大切に自分の味を出していってもらいたい」

伝統のある葛布を手軽に。歴史をこれからも残したいと作り手の思いが詰まったしずおか産です。