およそ3年前、「親ガチャ」という言葉が流行語になるほどの社会問題となったが、今度は職場での不運を嘆く、「上司ガチャ」「配属ガチャ」なんてものも流行りだしている。さらに中には、同期との相性で悩む、「同期ガチャ」なるものまで現れ、新入社員のスピード退職に拍車をかけている。

「同期ガチャ」もスピード退職の理由に?

今年も新入社員のスピード退職が大きな話題となっている。4月初旬には、入社してからすぐに辞めてしまう超スピード退職がテレビなどでも報じられたが、ゴールデンウイーク明けの5月になると今度は、五月病から退職を決意するパターンも増えているという。

仕事を辞めてしまいたくなる理由の一つとして、ここ最近注目を集めているのが「上司ガチャ」や「配属ガチャ」。2021年に「親ガチャ」という言葉が流行語大賞にノミネートされるなど社会的問題にもなったが、昨今は自分を担当することになった上司とそりが合わない「上司ガチャ」失敗、希望する部署に配属されない「配属ガチャ」失敗といった理由で、仕事を辞めるケースが相次いでいる。

そしてここに、「同期ガチャ(同僚ガチャ)」なるものまであらわれ、新入社員のメンタルを削っているというのだ。同期ガチャとはその名の通り、自分の同期が誰になるのかを指すもの。これに失敗すると途端に会社に行く気力を削がれ、“転職”の二文字が頭に浮かんでくることらしい。

同期ガチャの失敗として挙げられる一つ目の例が、同期が上司に媚びを売りすぎるタイプであること。入社したての同期が上司に媚び売っている姿を見ると、周りは「自分もそうしないといけないのかな?」「自分は愛想悪いと思われるのでは?」と焦りだして、余計な心配や思惑が生まれてしまうのだ。

また、勝手に媚びを売っているだけならまだいいが、周りを巻き込んでしまうケースもある。4月中旬、Xにて〈同期が研修が今週で終わるので、感謝の気持ちを込めて人事に人数分の色紙をプレゼントするとか言い出した。マージキモイ。学校じゃねーんだよ〉〈色紙だけでなく、お酒用のガラスも人数分プレゼントすることが決定しそうな模様。ふざけんなまじ〉というポストが投稿されると、ポスト主に同情する声が殺到した。

意識高すぎ、低すぎ同期にウンザリ

そのほかにも、媚びる同期をめぐっては〈同期の1人まじきもい。人の物を自分の物みたいして先輩に渡して媚び売るのきもいねん〉〈上司は媚び売られてることも気付いてるし同期はキツイって思ってるからそういうのやめて欲しい〉〈なんも仕事しないで先輩に媚びLINEだけは一丁前に即レスするから、仕事してないのにした感だけあるんだよな。私は即レスしないけど、いろいろやってるよー〉といった不満の声があがっている。

また、「意識が高すぎる同期」にも困る人が相次いでいる。

定時の30分前には会社につき、昼休憩は早々に切り上げて午後の仕事の準備。そして定時になってもなかなか帰らず、最後まで残って仕事をする。雑談をする際にも、将来のビジョンや資格の話ばかりなど、とにかくモチベーションが高い人もまた、周りからすると「同期ガチャ失敗」と思われている可能性が高い。

特に最近は、出世欲がなく、仕事とほどほどの距離感を保ちたい若者が増えているため、仕事にやたらと熱心でいる同期がいると、息苦しいと感じてしまうのだ。

ただ、その逆もまたしかりで、あまりにも意識が低い同期も当然ながら、疎まれてしまう。なにをするにもネガティブで、「どうせこの会社に長くいるつもりないから」「仕事はお金を稼ぐ手段でしかない」とわざわざ口に出し、仕事に熱心な人を冷笑するタイプももれなく「同期ガチャ」失敗だと思われていると言っていい。

そして、意識高い・低い、媚びを売る……などよりも最悪な「同期ガチャ」失敗の例もある。今年、新社会人になり、同期との関係に悩んでいる、くすりふ(@hahaha_25__)さんが胸の内を明かしてくれた。

「食品関係の仕事で工場勤務、毎日パック詰めなどをしてるのですが、同期が嫌で仕事を辞めようとも考えています。僕が配属されたところは同期が3人ほどの小規模な部署なのですが、自分が高卒であるのに対して、周りはかなりいい大学を卒業された人たちばかりなんです」

キミ、ほんとにやばいね」

「そんなプレッシャーや慣れない現場ということもあり、単独事故を起こしたり、体調を崩したり、5分ほどの遅刻をしたりなどをしていて、すごく落ち込んでいるときのことでした。同期は『キミ、ほんとにやばいね』と言ってきたり、上から目線での言葉をぶつけてきたりと、助けてくれるどころか、追い打ちをかけるように攻撃をしてくるのです。

『勉強するのでいろいろ教えてください!』って頭を下げても、『自分で考えろ』と突き返されて、挙句の果てに無視。お昼休憩のときに何を言っても無視、LINEも未読という状態です。

確かに自分もだらしない部分があったとは思いますが、悪口を言われたり堂々と無視されるのはしんどいものです。昔、学生時代に無視されている頃があったというのもあって、無視されるのはトラウマが蘇ってしまいます。彼らと勤務時間が被る度にストレスで、心が苦しい。ほんとにいなくなってほしいとまで思ってしまいます」(くすりふさん)

職場で上司のプレッシャーやパワハラに押しつぶされて、最悪の選択をしてしまう事件がよく報じられているが、同期からの圧力もまた、ときとして上司からのプレッシャー以上に恐ろしいことがある。

ただ一方で、同期のおかげで苦しいことを乗り越えられたというケースはもちろんたくさんある。まさにどんな出会いが待ち受けているのかは、“ガチャ”ということなのだろうか…。

取材・文/集英社オンライン編集部