ひと昔前から「プリン体ゼロ」をうたうアルコール飲料が出てくるようになった。確かに痛風の症状がある人にとってプリン体を含むビールなどは悪者だろう。だが高血圧を改善するためには、プリン体を控えすぎることも体にはよくないという『薬も減塩もいらない 1日1分で血圧は下がる!』よりプリン体の本当の話を抜粋・再構成してお届けする。

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NOの材料となるタンパク質を積極的に摂取しよう


これまで、高血圧を改善するにはNO(エヌオー:血管内で発生し、血管を柔らかくする物質)の分泌を増やして血管を柔らかくすることが不可欠ということをお伝えしてきました。NOは、第1章で紹介した加藤式降圧体操を行うことによって分泌を増やすことができますが、降圧体操の効果を高めるためには、食事でNOの材料をしっかり摂取しておくことも大切です。

ではNOの材料とは何なのでしょう?NOとは一酸化窒素のことで、窒素はタンパク質を構成する要素ですから、NOの分泌を増やすためにはタンパク質の摂取が必須となります。

そもそも、血液を末端まで運ぶ補助ポンプでもある筋肉は、タンパク質抜きでは再生しません。せっかく降圧体操を行って筋肉の質を高めようとしても、材料となるタンパク質が足りなければ効果も半減してしまいます。健康のためにと思ってお肉を避けて野菜中心にすることは、高血圧の原因となってしまうのです。



プリン体は悪者どころか、体に必要なものです!


NOと同様、プリン体もN(窒素)を含んでいます。

ビールなどのアルコール飲料のテレビCMには、「プリン体ゼロ」などとうたったものが多く見られます。少しでもプリン体が入っていると痛風になるかのような悪者のイメージですが、本当にそうなのでしょうか?プリン体の名誉回復のためにも次の説明をしておきたいと思います。

そもそも私たちの体は37兆個の細胞からできていて、その細胞の中にはDNAという遺伝情報が描かれた設計図が入っています。そして、そのDNAは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4つの物質で構成されていて、その配列に違いがあるため、同じ人がこの世に一人もいないのです。

その中のアデニン、グアニンの2つが「プリン体」なのです。ということは、DNAを持つ生物は、半分がプリン体でできているということ。プリン体は、体に悪いどころか非常に大切な物質なのです。

逆に、プリン体をつくる材料が体に入ってこないと、細胞分裂ができなくなりますから、ものすごく早く老化するということにもなるのです。

ちなみに、ビール100㎖に含まれるプリン体は8㎎以下、もやしのプリン体は100g中45㎎、ワカメはプリン体262㎎です。

いかがですか?つまり、もやしはビールの5倍、ワカメは30倍のプリン体を含有しているということ。でも、もやしやワカメを食べて痛風になるでしょうか?このことからも、プリン体が多く含まれている食品を摂取したからといって、痛風になるわけではないことがわかります。

血圧の話と大分ずれましたが、ここまできたら、痛風の予防法もお話しいたしましょう。痛風は、腎臓が健康であれば発症しません。痛風予防としては、血液検査で尿酸値が高めの方は、正常値になるまで毎日水をいっぱい飲んでください。ほとんどの方は、これだけで尿酸値が下がると思います。


血圧上昇ホルモンを抑えてくれるお酢を摂ろう


血圧を下げる食べ物といえば、お酢は非常にお勧めです。お酢の主成分である酢酸は、血圧を上昇させるホルモンを抑制する働きがあるからです。

ただしお酢で血圧を下げるためには、毎日摂り続ける必要があります。止めてしまうと、また血圧は上がってしまいます。酢の物を1品作るとか、食後にお酢のドリンクを飲むとか、そういった方法なら簡単にできると思いますから、ぜひ毎日の食事にお酢を取り入れてみてください。

ちなみに私は穀物酢をコップに大さじ1杯入れて、オレンジジュースを注ぎ、ブラックペッパーを少々ふってカクテル風にして飲んでいます。とてもおいしいし、安上がりなのでお勧めです。

酢の物やお酢ドリンクをわざわざ作るのは面倒臭い、という人は、フルーツや梅干しを食べてください。フルーツや梅干しに含まれるすっぱい成分はクエン酸ですが、このクエン酸も体の中に入ってしまえば最終的に酢酸に変わるのです。また、いろいろな食べ物にレモンを搾ってかけるとビタミンCも摂れて、血圧が下がるだけでなく、美肌にもなれますよ。



体が疲れていないから眠れない


睡眠不足が続くと確かに血圧は上昇します。ですから、高血圧の改善には充分な睡眠が必要です。まずは加藤式降圧体操をしっかり行って体を適度に疲れさせましょう。寝る前に運動をして疲れすぎると交感神経が優位になってしまい、かえって寝つけなくなってしまいますが、降圧体操なら時間も短く適度に疲れますから、きっと睡眠の質を上げてくれるはずです。

そもそも睡眠がなぜ大切かというと、寝ている間に細胞の修復が行われるからです。よく、歳をとるとだんだん眠りが浅くなって、「毎朝5時に目が覚めるんだよね」などとなるのは、細胞の修復時間が短くてすんでいる証拠。それこそ、老化現象です! 歳が若ければ若いほど、睡眠時間は長かったはずです。古い細胞から新しい細胞に生まれ変わる作業時間が長くかかるため、睡眠時間が多く必要なのです。

しかし今の医療は「眠れない」と相談すると、原因も探らず、安易に睡眠薬や睡眠導入剤が出されます。眠れないということは、そもそも体がそんなに修復を必要としていないということなのに、薬で無理矢理眠らせるなんて、とてもおかしな話なのです。

歳をとると「もう歳なんだから無理をするな」と言われますが、ある程度は無理をして、修復が必要な状態にしてほしいと思うのです。


眠れなくても横になるだけで血圧は下がる


細胞の修復が行われるためには睡眠が必要ですが、血圧という観点から見れば、眠れなくても体を横にするだけで充分効果があります。

心臓は血液を全身に循環させているわけですが、体が立っているときは重力に逆らって血液を送らなければなりません。そのため強いポンプ力を必要としますが、横になると心臓と全身の血管が同じ高さになりますから、それほど強いポンプ力がなくとも血液は全身を一周しやすくなるのです。

寝ることには、脳を休ませる以外に心臓の負担を減らす、という意味もあるわけです。体に不調を感じたときや疲れたとき、「とにかく横になりなさい」というのはそういう理由があるから。強制入院というのも、主には強制的にベッドに寝かせて体を修復させる、ということが目的なのです。

なかなか寝つけないと、「明日も忙しいのに」などと気になってもっと眠れなくなったりしますよね。ですが横になっているだけで血圧は下がり、体はそれなりに休まっているもの。別に熟睡できなくても大丈夫なのです。眠れないときは、このことを思い出してください。そうすれば気が楽になって、かえって眠れるかもしれません。

なお、水分は心臓の働きを助けてくれますから、寝る前はコップ一杯の水を飲むといいでしょう。途中で目が覚めてトイレに行った後も、また一杯の水を補給するようにしてください。


お風呂は高血圧によいだけでなく、ウイルスも撃退する!


お風呂に入ることは血圧にとってよい作用があります。温かいお湯に浸かると血流がよくなりますし、降圧体操ほどではありませんが、お湯が体に圧をかけるので、NOの分泌も増えます。

ただし、お風呂の温度によっては、高血圧にプラスにもマイナスにもなりますので、注意が必要です。お風呂の温度が40℃より高いか低いかで、体の自律神経は大きく変化します。40℃以上の熱めのお湯では、交感神経が活発に働くので、興奮状態になり心拍数が上がり血圧も上昇します。一方、40℃以下の少しぬるめのお湯ですと、副交感神経が働くことでリラックス状態になり血圧も下がってきます。

私自身お風呂の温度を利用して、自律神経をコントロールしています。「これから頑張って仕事をするぞ〜」というときは熱めの温度の朝風呂に入りますし、また執筆中など「夜中に眠気を覚ましてもうひと頑張り」というときは、熱いシャワーを浴びます。逆に、これからしっかりと体を休めて眠りたいときは、40℃以下のお風呂にゆっくり浸かるようにしています。

血圧の話からはずれますが、お風呂をお勧めする理由はほかにもあります。なんと、インフルエンザウイルスが撃退できてしまうのです!

というのも、インフルエンザウイルスはお風呂で感染力を失ってしまうからです。インフルエンザウイルスは湿度に非常に弱く、湿度70%以上では1時間ももちません。だからといって、部屋の湿度を70%以上にするとカビが生えてしまいます。ですから、インフルエンザ予防にはお風呂なのです。

ちなみにインフルエンザにかかったときに抗生物質を出す病院が未だにありますが、抗生物質は細菌や微生物などの発育・繁殖を抑えるための薬。ウイルスには効果はありませんよ!



「インフルエンザ予防のマスク」の本当の意味とは!?


私たちがなぜインフルエンザにかかってしまうのか、本当の理由についてお話ししましょう。

空気が乾燥する季節にインフルエンザが猛威を振るうのは、乾燥によって喉の粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザウイルスがつきやすくなるからです。

インフルエンザウイルスはどこにでもいますが、同じ職場や学校でもかかる人とかからない人がいるのは、ウイルスが増えたわけではなく、自分の喉の乾燥が原因だったのです。

ですから、インフルエンザを予防したい方は、マスクを活用しましょう。マスクで喉を乾燥から守るのです。ぜひお試しください!


写真/shutterstock


140/90という基準値だけを迷信する危険性
なぜコレステロールの薬を安易に飲んではいけないのか


『薬も減塩もいらない 1日1分で血圧は下がる!』(講談社)

加藤雅俊

2023/11/17

968円

160ページ

ISBN: 978-4065340165

ノーベル賞受賞理論を実践し、
「シンプルな体操で、血圧を下げる」と話題を呼んだ人気書籍が、
待望の新書化です。

【血圧は簡単な体操で下がる!】

血圧を下げるには、薬を飲むか、減塩するしかない……そう思っている方がほとんどでしょう。でも実は多くの場合、血圧は簡単な体操だけで下がるんです!

血圧が高くなる大きな原因のひとつに、血管が硬くなることがあげられます。そこで最近注目されているのが、血管を柔らかくする物質NO(一酸化窒素)です。NOにその働きがあることを発見した研究は、1998年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

このNOの分泌を効率よく増やす体操を、薬剤師/薬学研究者で予防医学の第一人者である著者が考案。年齢、体力を問わず誰にでもできる簡単な体操を、本書で公開します!