Z世代の間でブームになっているという、オールドコンデジ。スマホで手軽に高画質な写真が撮れる令和の時代に、なぜ古い機種のカメラが流行っているのだろうか。オールドコンデジに関する著書も出版しているフォトグラファー・鈴木文彦氏に、その理由を聞いた。

Z世代はレトロデジタル=エモと刷り込まれている?


最近、古い機種のコンパクトデジタルカメラ、通称「オールドコンデジ」が若者世代の間で流行しているという。Instagramでも「画素数が低くても意外といい写りです」「カメラのデザインに一目惚れ」「好きな雰囲気の写真がたくさん撮れます」などのコメントが見受けられ、多くの人がオールドコンデジでの写真撮影を楽しんでいるようだ。

そもそも、オールドコンデジとはどのようなものなのだろうか。

「オールドコンデジに明確な定義はありませんが、スマホ登場以前のコンデジは『オールドコンデジ』と括っていいと思います。コンデジは主婦や子どもにも浸透しているアイテムだったのですが、スマホの普及により淘汰されてしまいました。今では数千円で購入できますが、当時は何万円もしていたカメラですから。意外としっかり映るし、良い写真が撮れるんですよ」(フォトグラファー・鈴木文彦氏、以下同)


おすすめのオールドコンデジは富士フィルムの「FinePix」シリーズ。フィルムメーカーならではの色の良さが魅力


そんなオールドコンデジが若者世代から注目を集めている理由について、鈴木氏は次のように語る。

「ひとつは、カメラを持ち歩いて構えて撮るという体験の貴重さだと思います。“ながら”で撮影できてしまうスマホでは味わえない感覚ですよね。もうひとつは、一万円くらいですべての機材が揃ってそれなりのものが撮影できるという手軽さ。趣味で数十万円のカメラやレンズを購入するのは、なかなか厳しいですから。こんなに安いのに、ちゃんと撮影できて、形もカッコいいカメラを発掘するという“掘り出し物感”も面白いですよね。

あとは、やはりレトロな写りの良さですかね。決して鮮明ではない、レトロデジタルな描写に魅力を感じるのでしょう。特にオールドコンデジで撮影した動画はかなりレトロな仕上がりになるので、Instagramのリール投稿によさそうですね」

あえてレトロな写りを好む若者たち。それは、幼い頃の“刷り込み”が関係していると、鈴木さんは推測する。

「今の10代〜20代前半の方々は、初期のコンデジや、フィルムカメラで撮影した写真がまだ家にある世代ですよね。画質の粗いデジタルな写真や映像を幼い頃から目にしていて、それらがなんとなく懐かしいものというか、エモーショナルなものとして刷り込まれているのではないでしょうか」


カメラはしまい込むのが一番ダメ


実際に、昔使っていたオールドコンデジを見つけて使用したい場合、どうすればカメラとして問題なく使用できるようになるのか?

「まず、ほぼ100%バッテリーは劣化していると思ってください。メーカー純正のものを改めて探すのは難しい場合もあるので、対応する形のサードパーティの購入をおすすめします。『ロワジャパン』から出ているものがサードパーティーの中では信頼性が高いと思います。

また、記録メディアも新品での入手は難しい古い形式のものがほとんど。稀に中古カメラに入ったままになっている場合もありますが、リサイクルショップなどで見つける必要があります。オールドコンデジはスマートメディアのみ対応のものも多いのですが、SDカードよりもデータが飛びやすいと言われています。湿気と静電気をできるだけ避けるようにしてください。


バッテリーを留めるツメ部分が壊れてないかもチェックする必要あり


なお、SDカード対応とされているものでも、今のSDカードとは異なる『初代SDカード』しか使えない場合もあるので注意が必要です。いずれにしても説明書は残っていない可能性が高いので、都度ネットで調べながらセットアップを行ってください」


『オールドデジカメ・ファン』(玄光社)より


初心者に向けて、カメラの基本的な管理方法についても伝授してくれた。

「カメラは湿度が大敵です。米びつのような密閉性の高いケースに、乾燥剤と一緒に入れておくのがいいでしょう。あと、しまい込んで電源を入れないのは一番ダメ。レンズを駆動させると空気が入れ替わり、それだけでカビ予防になりますから、定期的に動かしてあげてください。中での膨張や液漏れを防ぐために、使い終わったら電池とバッテリーは必ず抜いてくださいね」


フラッシュを使ってハイコントラストに撮ろう


ちなみに、オールドコンデジを購入するとしたらどこがおすすめ?

「ハードオフ、リサイクルショップ、フリマアプリなど色々ありますが、一番安心なのはカメラ屋さんですね。カメラ屋さんは、安いジャンク品でも『保証なし』という意味でのジャンク品の場合もありますし、お店で状態を手に取ってチェックしてから買うことができます。また、店員さんが色々と説明してくれるのでカメラ初心者でも買いやすいと思います。


形が香水瓶のようでかわいい、オールドコンデジ界のコレクターズアイテム「CONTAX i4R」


「掘り出し物感を楽しみたいなら、街のリサイクルショップやフリマアプリもいいかもしれませんが、特にフリマアプリは『電源入ります』と書かれているものに注意してください。電源は入るけれど、肝心の撮影はできないようなこともあります。最低でも『基本動作確認済み』と書かれているものを買いましょう」

最後に、オールドコンデジならではの写真を撮るコツについて聞いてみた。

「機種が古ければ古いほど画素数は少なく、いわゆるレトロな写りにはなりますが、その分、暗い部分がつぶれ、明るい部分が飛びやすくなってしまいます。なので、明暗差が少ないフラットな明るさのものを撮影するのがいいですね。フラッシュはがんがん使って、ハイコントラストに撮影したほうがカッコいいと思います。最近はあまりフラッシュを使った写真を撮らないと思うのですが、あえて真正面からバチッと光を当てて撮る写真もエモーショナルで面白いですよ」

「DIGITAL現場監督 DG-5W」を使用。写真/鈴木文彦


取材・文/渡辺ありさ