自分の死後、遺された家族に迷惑がかからないよう生前に身辺整理を行う「終活」。今や高齢者の常識となってもいるが、そんな終活における異色のサービスが話題だ。北関東を中心に33店舗を展開する「利根書店」は、「男の終活サービス」と称して、セクシーDVDの買取りサービスを行なっているという。同店を運営する株式会社プリマベーラの広報プロデューサー・亀井彬氏に話を聞いた。

まるでオトナの娯楽のデパート

――ここ利根書店深谷店(取材店舗)は、大きいですね。学校の体育館くらいの広さの店内に、書店なのに、本やDVD以外にアダルトグッズも豊富に揃っていますね。

亀井彬(以下同) 
扱う商品の多くがアダルト関連の書籍、DVD、グッズです。アダルトDVDの他にもTENGAやラブドールといったアダルトグッズ、あとバイブローター、ローション、コスプレ用の衣装なんかもあります。書店としては珍しいですね。

――アダルトのリユース品には、懐かしさもあって、ついつい見入ってしまいます。とても1日で回りきれないですね(笑)。

かつてお世話になった女優たちのパッケージに思わず足を止めて、ノスタルジーに浸るお客さんも多くいますね。もう2度と見ることはないと諦めていたお宝作品に出会う可能性もあるので、軽く1〜2時間探して帰るお客さんもいます。

終活における大人アイテムの難題

――どんなお客さんがいらっしゃるんですか?

40〜70代が7割。そのうち男性が9割で、女性やカップルが1割といったところです。40〜50代ですと比較的まじめでおとなしそうな方が多いですね。会社帰りに来てくださるサラリーマンもいます。

お年寄りにも多く来店していただいていて、散歩のコースに入れてくださっている方や、朝10時の開店前に来て、オープン待ちをしてくださる方もいます。

高齢の男性の中には、店長と話をするのが楽しみで毎日のように来店してくださるお客さんがいました。毎回DVDを買っていたのですが、数年後、そのお客さんが亡くなられた際に、多くのDVDが未開封だったことを奥さんから聞きました。会話のために律儀に毎回購入されていたわけです。忘れられない思い出ですね。

――さて本題ですが、「男の終活サービス」とはどういったサービスなんですか?

家族に内緒でコレクションしていたアダルトDVDの処分をお手伝いするサービスです。お客さんの手元にあるDVDを買取り、再販します。

終活の一環ということでご本人からの依頼のほかに、亡くなった男性の遺族から「遺品に大量のアダルトDVDがあるが、どうしたらいいかわからない」というお問い合わせが月に何件もあるんです。

数が多いとゴミとしてそのまま出すわけにもいかず、といって通常のリユース店もなかなか引き取ってくれないので、遺された家族は相当心理的負担が大きいのです。

――買取りは店舗への持ち込みの他、どんな方法があるんでしょうか?

2015年より、インターネットで登録し自宅から宅配便で送るという買取りサービスを本格的に始めました。来店が面倒くさい、対面だと恥ずかしいという方でも気軽に利用していただけます。

ダンボールを用意してもらって、それに入れて送ってくださるだけで査定、入金が可能です。こちらからダンボールをお送りすることもできますし、その際の送料や梱包キッドの料金も無料です。DVDに傷があっても買取りしています。

――反響はいかがですか?

男の終活だけで集まったわけではありませんが、1年間で160万本の買取りを行っています。中古が96万本、新作が64万本です。

残された家族に降りかかる災難

――お客さんはどんなことがきっかけで男の終活を?

基本的には、年を取り、自分が生きているうちに家族にバレずに売りたいというお客さんが多いです。介護施設や老人ホームに入所する前に処分したいとか、親族との同居をきっかけにという方もいました。

――本人ではなく遺族からの依頼も少なくないということですが……。

旦那さんが亡くなったときに、大量のAVが突然目の前に現れて、どうしたらいいかわからず、半ばパニック状態の女性が相談が来ることもあります。10〜20枚程度なら処分もできますが、何百、何千という単位になると、お手上げです。

電話口でホッとしたのか泣いているご婦人もいました。「助かりました」という声もよくいただいています。それだけ心理的負担が大きいんです。

――印象に残っている依頼はありますか?

40代の男性からDVDを8000枚を買取りました。叔父さんのコレクションで、病気で入院したときにお見舞いに行ったところ処分を頼まれたそうです。叔父さんが亡くなったタイミングで連絡をくれたんですが、お葬式までに親戚に知られないように処分したいとのことでした。

通常、出張での買取りサービスは行なっていないのですが、叔父さん、甥っ子さんがともに常連で、店からご自宅までが近かったので特別に受け取りに行きました。2トントラックで運ぶほどの量でした。

――8000枚はどうやって保管されていたんですか?

1人暮らしをされていて、家の2階に置いてあったそうです。私たちが行ったときには、すでに100円ショップで売っているシューズケースにDVDが収められて、玄関からキッチンまで続く廊下にずらりと背丈くらいの高さまで埋め尽くされていました。作業をしている途中、近所の方がお線香を上げに来て、「バレてしまう!」と慌てましたね

――最高は何枚ですか?

1万4000枚ですね。ダンボールで70箱でした。旦那さんが亡くなってから、奧さんと娘さんが発見して、相談してきました。そのままDVD店ができるレベルの数でしたね。100万円を超えるくらいの買取り価格になりました。

買取で一攫千金を狙えるソフトは? 

――お店で人気のあるジャンルは?

今は新人セクシー女優の質がアイドル並ですので、デビュー作は人気です。あと熟女系は安定して支持を集めています。有名女優のプライベートSEX系、むっちり、ぽっちゃりで爆乳&童顔系も人気です。またゲイ、ニューハーフなども一定の人気がありますね。

――査定の基準は?

各ジャンル専門のスタッフがいて、ネットでの取引価格を参考にして値段を決めています。基本的には販売から時間が経つと値段が下がります。

――高値で買取りされるのは?

一世を風靡した人気AV女優モノや希少なお宝級の作品は高くなることがあります。また新品の販売価格が1万円以上する高い商品は査定価格が低くなりづらいです。

あとは野外の露出系などのマニアックなジャンル。買取りしていないお店が多い金髪白人モノものも高値です。ちなみに「洗髪」という女優さんがただただ自分の髪を洗うという作品や霊姦(幽霊を強姦)といった突飛なジャンルも買取りしています。

――中古AVのお得商品ってありますか?

野菜のシールが貼ってある中古のDVDは、777円、666円、555円、444円とお手軽な値段で提供させてもらっています。最安値は333円です。月ごとに高い商品がワンランク安くなる変動相場制にしてあります。

ケースなしDVDに需要が!

――ケースのないDVDも目についたのですが……。

お客さんの要望で、ケースなし中古DVDを販売するようになりました。新品を購入するお客さんでもケースが不要だという方もいます。車のカーナビで鑑賞している方が多いようで、パッケージは車内で保管するのにかさばる上、家族にもバレやすいからだとか。

――今後はどんな展開を考えていますか?

成人向けのアニメDVDにハマった世代の終活需要が高まると予想しています。あと弊社では、以前「カレー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、累計出荷数が1万食を達成した「絶倫カレー」の新作「辛口」が4月に販売されました。こうしたお客さんに喜んでいただけるエンターテインメントをどんどん発信していきたいと思います。


取材・文/集英社オンライン編集部