北朝鮮戦に臨む日本代表をフカボリ!
北朝鮮戦に臨む日本代表をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第90回のテーマは、W杯予選の北朝鮮戦について。3月21、26日に北朝鮮とのW杯予選2連戦に臨む日本代表。ベスト8に終わったアジアカップ後、最初の公式戦を戦う日本代表に対して注目する3つのポイントを福西崇史が解説する。

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今週からインターナショナルマッチウィークに入り、日本代表は3月21(木)、26日(火)に「FIFAワールドカップ26アジア2次予選兼AFCアジアカップサウジアラビア2027予選」のグループB第3節、第4節で北朝鮮代表との2連戦を戦います。

まず注目したいポイントは、先日のアジアカップでの課題をどう修正しているか。とくに敗れたイラク、イラン戦で露呈したロングボール主体のサッカーに対して、どう対応するかというのは、北朝鮮を相手にする場合に急務となります。

もちろん、北朝鮮が実際にどういう戦い方をしてくるかは、試合のなかで感じながら対応するしかないと思います。それでも相手がロングボールを蹴ってくる展開になった場合に競り合ったあとのカバー、セカンドボールの回収、そのあとにボールをどうキープし、前進するか。

イラク、イラン戦ではボールを回収できなかったり、うまく前進ができなかったり、相手の思惑にハマって押し込まれ、失点を重ねて押し切られてしまった。アジアカップを経て、選手からの意見も出てきたなかで、森保一監督がどうまとめ上げるか。

アジアカップをメンタル的に引きずることはなかったとしても、日本にとってロングボールは嫌なことに変わりはないわけです。そこで受けに回ってしまうと何が起こるかわからないし、リスクを考えると自陣深くにボールを入れられると中盤の選手も守備的にならざるを得なくなります。

そこである程度、割り切ることが必要な場面もあるでしょう。つなぐのが難しいところでは、はっきりとクリアーで蹴り出し、その先で何を起こすかを考えることも必要です。日本の目指すサッカーをベースにしながら割り切って蹴ることができる臨機応変さも求められると思います。

もう一つの注目ポイントは三笘薫や冨安健洋、伊東純也ら主力選手が不在のなかでどう戦うか。とくに三笘、伊東という両ウイングが揃ったときは、その突破力を頼りにしてきましたが、その両翼が不在となったアジアカップでは攻撃が停滞してしまいました。

縦への突破力が落ちるのならば、それ以外の武器を模索することも必要です。久保建英や堂安律、中村敬斗をサイドで使うのならば、彼らが得意なサイドから中へ切れ込んでいくドリブルが生きるように周りのサポートが必須です。

伊東であればそれほどサポートを必要とせずに、個人の突破力で打開ができます。しかし、中へ切れ込んでいく彼らの場合は、相手を動かしてドリブルのスペースを作る動き、クサビのパスを入れて中へ侵入していくための中の選手の動きなど、周りのサポートがなければ効果的に突破が難しくなります。

サイドバックやボランチの追い越し、トップやトップ下の受ける動きなど、攻撃的な選手のキャラクターが変わった時に、その都度、チームとしてスムーズに攻め方を変えられるようにできたら理想です。

そういったなかで、個人的に田中碧がボランチからどれだけ攻撃に厚みを加えられるか。彼の上がっていくセンス、前線でのクオリティに注目しています。森保監督の采配はもちろん、選手たちがどのように意図して打開していくのか見ていきたいですね。

3つ目の注目ポイントは、選手たちのモチベーションです。アジアカップでモチベーションが低かったり、手を抜いたりという選手はいません。しかし、シーズン途中の欧州でプレーする選手はどうしても無意識的にブレーキがかかることはあったと思います。

クラブで優勝争いをしていたり、CLやELの出場権を争っていたり、ポジション争いをしていたり、怪我を抱えながら参加した選手もいました。クラブや選手個々の立場がそれぞれ違って、そのシーズン途中のなかでチームを離れなければいけないことによる焦りや不安があって当然です。

もちろん、選手たちは切り替えて日本代表に参加しているものですが、選手も人間なので無意識的に「怪我をしちゃいけない」「疲労をあまり溜めたくない」とプレッシャーを感じ、モチベーション的にもバラつきがあって難しい部分があったと思います。

しかし、今回はアジアカップの敗退後、最初の試合でW杯予選です。選手たちは国立競技場でファン、サポーターの目の前で、懐疑的な目や不安を晴らしたいと思っているはずで、立ち上がりから非常に高いモチベーションで入ってくれると期待しています。

北朝鮮はイランと比べればレベルは落ちますが、負けられないプレッシャーは大きいものです。第4節を平壌で戦うとなれば、また違ったプレッシャーもあるでしょう。まずはホームの第3節で「やはり日本は強いな」と思わせるくらい圧倒して勝ってほしいと思います。

構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜