傾向解説

皐月賞と同じ中山芝2000mで行われる弥生賞。ただ、弥生賞勝ち馬の皐月賞制覇は2010年のヴィクトワールピサ以降出ておらず、同コースとはいえ求められる適性は微妙に異なります。本記事では血統面を中心に、弥生賞のレース傾向を整理していきましょう。

弥生賞と皐月賞は舞台こそ同じですが、求められる適性は同じではありません。これは、皐月賞がGⅠらしい多頭数のハイペースになりやすいのに対して、弥生賞は前哨戦らしい少頭数のスローペースになりやすいためです。「機動力が求められる弥生賞」「底力が求められる皐月賞」と覚えておくといいでしょう。

・良馬場時(過去10回)の前後半1000mラップ
弥生賞:61.5-59.7(後傾1.8秒)
皐月賞:59.4-59.5(前傾0.1秒)

血統面においても、中山内回りの芝中距離重賞ではNureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingが中心になることが多く、先週の中山記念(中山芝1800m)でもSadler's Wellsの血を持つマテンロウスカイが7番人気の低評価をくつがえして重賞初制覇を果たしました。

ただ、スローペースになりやすい弥生賞では同血脈よりも俊敏な血統が走りやすく、その代表例がディープインパクトなどが持つLyphardの血です。フランスのトップマイラーとして活躍した同馬は欧州馬の中でも軽いスピードに優れ、日本の小回り、かつ瞬発力勝負になりやすい競馬とも非常に相性のいい血統といえるでしょう。特に、近年はLyphardをクロスする馬の好走が目立ち、DanzigBlushing Groomなどの主要な血統構成が似ている血と組み合わせるパターンからも多くの好走馬が出ています。

血統別成績,ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Lyphard【8-7-6-37】勝率13.8%/連対率25.9%/複勝率36.2%/単回収率115%/複回収率94%
→クロス有【1-3-3-3】勝率10.0%/連対率40.0%/複勝率70.0%/単回収率28%/複回収率112%


血統解説

・シンエンペラー
母Starlet's Sisterは北米GⅠ・7勝の名牝Sistercharlieと2020年凱旋門賞馬Sottsassなどを出した優秀な繁殖牝馬で、本馬はSottsassの全弟という良血。母が持つMiswakiの3×3や父Siyouniから受け継ぐスピードが本馬の持ち味で、日本での瞬発力勝負にも一定以上の適性を示しています。また、日本では東京よりも中山向きの馬力型。中山芝2000mの舞台適性は高いとみていいでしょう。

・トロヴァトーレ
3代母ソニンクに遡る名牝系に属し、母シャルマントは秋華賞馬ディアドラの半妹。レイデオロ産駒の本馬は父に似てピッチ走法で、機動力のある中距離馬といった印象です。Nureyevの5×5などから底力も強化されており、やや晩成気味とはいえ、弥生賞でも皐月賞でも楽しみな一頭ではないでしょうか。

2024年弥生賞の有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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