データで見る「穴候補3頭」

今週末の中京メインは高松宮記念。4週連続GⅠの幕開けを告げる短距離決戦だ。JRA屈指の“荒れるGⅠ”という表情も持ち、特に直近5年では4度の3連単配当10万円オーバー。22年は278万馬券、19年は449万馬券も飛び出した。「尾張のうつけ者」がわずか3000の兵で今川義元の大軍を破るがごとき番狂わせが繰り返されている。

昨秋のスプリンターズS勝ち馬ママコチャを筆頭に、ナムラクレア、トウシンマカオといった強豪が集結したが、展開や枠順次第でいくらでも紛れる条件で上位人気安泰とは到底言いがたい。今回も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。


「オーシャンSの外枠に泣いた馬」を狙え! ビッグシーザー

まず1頭目はビッグシーザー。OP特別・リステッドを4勝している実力馬だ。昨秋は古馬との対戦で跳ね返されたが、そこから力をつけて淀短距離S1着、オーシャンS2着とステップアップ。GⅠの舞台で強敵たちに胸を借りる。

前走オーシャンSでの枠順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


高松宮記念で定番の穴パターンは「オーシャンSで外枠に泣いた馬が反撃する」というもの。発走後すぐにコーナーを迎える中山芝1200mは枠による有利不利が大きく、外枠勢は実力ほどいい結果を得られない。したがって高松宮記念で過小評価される=穴になる、という寸法だ。

実際、過去10年の当レースにおいて、前走オーシャンSで1〜4枠だった馬は【0-1-0-34】複回収率14%、5〜8枠だった馬は【1-1-4-20】複回収率493%。天と地ほどの差がある。また、不思議なことに外枠からオーシャンSを「勝った馬」は【0-0-0-5】と振るわず、敗れた馬が【1-1-4-15】複勝率28.6%、複回収率611%と高配当をもたらす。

となれば、5枠10番から2着のビッグシーザーはぜひ拾っておきたい。その前走は4角で両隣から挟まれてバランスを崩すような不利もあった。それでいて同斤量のトウシンマカオと0.2秒差なら、既に現役トップ層ともほぼ差はないのではないか。中京は2戦2勝、2歳レコードを出した得意舞台でもある。一発あっていい。

スプリントの強豪ひしめく香港からの刺客 ビクターザウィナー

2頭目はビクターザウィナーを取り上げる。香港からの遠征馬で、前走はGⅠのセンテナリースプリントを逃げ切った。

「スプリント大国」とも言われる香港競馬はその異名にたがわず短距離馬の層が厚い。しばしばJRAにも遠征してきては、日本馬相手に互角以上の戦いを見せてきた歴史がある。

香港馬のJRA芝1200m重賞成績(86年以降),ⒸSPAIA


1986年以降のJRA芝1200m重賞において、香港調教馬の成績は【3-2-1-13】勝率15.8%、複勝率31.6%、単回収率198%、複回収率136%。機械的に単複を買うだけでプラス収支だった。

特にアツいのは「日本初出走」のレースで【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%、単回収率358%、複回収率247%とインパクト大の数字だ。日本のファンに名が売れていない状態の方が馬券妙味にも富んでいる。

本邦初出走のビクターザウィナーは昨年の香港スプリントで4着。直線で一度は抜け出す場面を作り、スプリンターズS2着マッドクール、同4着ジャスパークローネには0.4秒先着を果たした。ホーム、アウェーの差があるとはいえ、単純計算ならママコチャやナムラクレアの上を行く可能性がある。それでいて伏兵の一角というオッズなら、握ってみるのも一興だろう。

馬場悪化なら高齢馬に妙味あり ロータスランド

ラストは7歳牝馬のロータスランドを選んだ。現時点で日曜の中京競馬場は雨の予報。もし予報通り馬場が渋るなら、この馬を後押しするデータがある。

高松宮記念(1200mのGⅠとなった96年以降)で7歳以上馬の成績は【4-1-5-106】複勝率8.6%と正直よくない。スピード能力は年齢とともに衰えやすく、短距離GⅠともなると若い馬に押されるのは自然の摂理だろう。

高松宮記念 7歳以上馬の馬場状態成績(96年以降),ⒸSPAIA


ところが道悪になれば話は変わる。前記のうち、良馬場だと【2-1-2-68】複勝率6.8%、複回収率37%だが、稍重〜不良馬場なら【2-0-3-38】複勝率11.6%、複回収率148%。馬場が渋ってスピードが要求されなくなると、高齢馬が逆に穴候補として浮上してくるのだ。

今年の出走馬で道悪歓迎の7歳以上馬といえばロータスランドを置いて他にいない。稍重〜不良馬場【3-2-0-1】の実績がキラリと光る。

2走前の阪神Cでは1400mとはいえ現スプリント王者のママコチャとハナ差。前走京都牝馬Sは外伸びの馬場で後方からイン突きを敢行し、上がり最速の6着だった。まだまだ大きな衰えは感じない。百戦錬磨の名手・岩田康誠を鞍上に迎えて態勢は万全。怖い怖い存在だ。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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