難解なスプリント戦

今週末は中京競馬場でGⅠ高松宮記念が開催される。今年は悲願のGⅠ戴冠を狙うナムラクレアや昨年のスプリンターズSの覇者ママコチャ、前哨戦を完勝したルガルやトウシンマカオ、香港馬のビクターザウィナーなど多種多様なメンバーが揃った。確固たる存在はおらず、予想は難解を極める。

今回は高松宮記念の予想に生かすべく「芝短距離戦に強い種牡馬、騎手」をテーマにデータ検証を行う。なお今回の調査対象は過去5年の芝1400m以下のレースだ(参照するデータは2019年3月23日〜2024年3月17日)。


中京芝1200mならロードカナロア

芝短距離戦に強い種牡馬,ⒸSPAIA


<芝短距離戦に強い種牡馬>
ロードカナロア【267-209-167-1707】勝率11.4%/連対率20.3%/複勝率27.4%
ダイワメジャー【139-139-130-1217】勝率8.6%/連対率17.1%/複勝率25.1%
ディープインパクト【82-74-95-679】勝率8.8%/連対率16.8%/複勝率27.0%
モーリス【72-52-42-534】勝率10.3%/連対率17.7%/複勝率23.7%

まずは芝短距離戦に強い種牡馬について。

トップは2位以下に100勝以上の大差をつけたロードカナロア。産駒ではダノンスマッシュやファストフォースが高松宮記念を制している。上級条件、特に重賞で狙い目だ。JRA重賞では【22-17-15-162】で単勝回収率183%、複勝回収率107%とベタ買いするだけでプラスで、ファストフォース(23年高松宮記念12番人気1着)やボンボヤージ(22年北九州記念16番人気1着)など穴をあける産駒も多い。見かけたら紐に入れておいて損はないだろう。

また中京競馬場を非常に得意としており、特に1200mでは【22-11-8-107】で勝率14.9%、単勝回収率202%と大幅なプラス収支を記録している。22年高松宮記念17番人気3着のキルロードなど大穴を開けるケースも多い。今年の高松宮記念では産駒の出走はないが、来年以降のために覚えておきたい。

2位はダイワメジャー。自身は現役時代に1600〜2000m戦で活躍したが、産駒を見るとレシステンシアなどスプリント戦線にも有力馬が出ている。2歳戦に強く成績は【38-32-34-203】で勝率12.4%、単勝回収率104%。2歳OPに限定すると【3-4-4-6】で複勝率62.5%と信頼度が高い。また、小倉芝1200mで単勝回収率150%、阪神芝1200mで同330%、東京芝1400mで同121%とプラス域だ。

3位はディープインパクト。芝中長距離の活躍馬が多いのは周知のことだが、ダノンファンタジーやグランアレグリアなど短距離重賞での実績馬もしっかり輩出している。GⅠでは【1-1-0-5】とグランアレグリアしか馬券に絡めていないが、GⅡやGⅢでは【7-4-6-53】で単勝回収率313%、複勝回収率108%と妙味十分。場所別で見ると福島、東京、京都の3つの競馬場で複勝率が30%を超えており、その中でも京都は単勝回収率214%、複勝回収率129%と単複ともにプラスだ。

4位はモーリス。こちらもダイワメジャー同様、現役時代は1600〜2000mで活躍した。しかし産駒は、3歳でGⅠスプリンターズSを制したピクシーナイトや先日ファルコンSを制したダノンマッキンリーなど、短距離戦線でも活躍馬多数だ。新馬戦での信頼度が高く【13-7-8-65】勝率14.0%、単勝回収率235%。また距離延長ローテがプラスに働きやすく【7-4-3-48】で勝率11.3%、単勝回収率283%を記録している。

今週末の高松宮記念出走馬に該当する中京芝1200mの種牡馬別成績も紹介する。ナムラクレアやメイケイエールが該当するミッキーアイルは【3-4-0-17】で複勝率29.2%、ビッグシーザーやトウシンマカオが該当するビッグアーサーは【6-2-6-23】で同37.8%と優秀。ママコチャが該当するクロフネは【1-0-1-16】で複勝率11.1%、ルガルやシャンパンカラーの父ドゥラメンテは【0-0-0-13】と一頭も馬券に絡めていない。


短距離でもC.ルメール騎手

芝短距離戦に強い騎手,ⒸSPAIA


<芝短距離戦に強い騎手>
C.ルメール【94-84-44-212】勝率21.7%/連対率41.0%/複勝率51.2%
武豊【84-57-50-297】勝率17.2%/連対率28.9%/複勝率39.1%
松山弘平【78-67-44-442】勝率12.4%/連対率23.0%/複勝率30.0%
横山武史【72-61-63-343】勝率13.4%/連対率24.7%/複勝率36.4%

次は芝短距離戦に強い騎手について。

トップは94勝でC.ルメール騎手。過去5年で芝1400m以下のJRA重賞を9勝しており、タワーオブロンドンやグランアレグリアでGⅠスプリンターズSを計2勝している。平場では人気を背負いやすいこともあり妙味は薄いが、重賞では【9-5-4-15】で勝率27.3%と逆らいづらい。また、ほとんどの競馬場で複勝率50%前後と非常に高い好走率をマークしているが、中京コースは【6-3-2-27】複勝率28.9%と30%を下回っている。他の競馬場と比べればやや付け入る隙がある。

2位は武豊騎手。過去5年で芝1400m以下のJRA重賞を6勝している。意外にも最後に中央のスプリントGⅠを制したのは2007年高松宮記念のスズカフェニックスと10年以上遡る。函館、中山、京都の3場で勝率が20%を超えており、特に函館は【19-15-13-43】で複勝率52.2%と抜群の安定感。単勝回収率は117%とプラス域で、妙味も兼ね備える。武豊騎手が函館に遠征した際はスプリント戦に要注目だ。

3位は松山弘平騎手。過去5年で短距離重賞を5勝しており、GⅠでの最高着順は22年スプリンターズSのウインマーベルでの2着だ。下級条件での信頼度が高く、特に未勝利戦では【19-20-10-107】で勝率12.2%、単勝回収率146%を記録。京都外回り1400mと東京芝1400mで単勝回収率100%超えで、この2コースで狙いたい。

4位は横山武史騎手。上位4騎手の中で単勝回収率111%と唯一プラス。1-2枠or8枠に入った時の成績が良いのが特徴。1-2枠では【17-13-16-63】で勝率15.6%、単勝回収率159%、8枠では【15-7-7-55】で勝率17.9%、単勝回収率256%となっている。内枠からロスなく立ち回る競馬や他馬の影響を受けにくい大外枠からの競馬を得意としているのだろう。競馬場別では中山と函館が複勝率40%を超えており、特に函館では単勝回収率155%とプラス域だ。

今週末の高松宮記念に備えて中京芝1200mの騎手別成績も紹介する。トウシンマカオに騎乗予定のルメール騎手は【3-1-1-9】複勝率35.7%。ママコチャに騎乗予定の川田将雅騎手は【8-5-2-13】で同53.6%と非常に信頼度が高い。ルガルに騎乗予定の西村淳也騎手は【5-5-1-24】で同31.4%、ナムラクレアに騎乗予定の浜中俊騎手は【3-6-2-17】で同39.3%となっている。


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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