2024年5月30日(木)〜 6月4日(火)新国立劇場 オペラパレスにて、新国立劇場 2023/2024 シーズンオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』が上演される。

本公演は、モーツァルトが、男女の愛の真実を極上の音楽で描いたオペラ『コジ・ファン・トゥッテ(女はみんなこうしたもの)』。『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』と並ぶ、モーツァルトのオペラ代表作のひとつだ。

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より          撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より          撮影:三枝近志

二人の青年が恋人の愛情を試す賭けに挑戦、ついに女たちが誘惑に陥落するというストーリーが、女声二重唱、男声二重唱、男女の二重唱に三重唱、四重唱……と数々の重唱で綴られるアンサンブル・オペラの本作。今ではモーツァルト最高の恋愛喜劇として人気を博している。心の機微を伝える名曲揃いで、姉フィオルディリージの「岩のように」「お願い、許して恋人よ」、デスピーナの「女も15になれば」、フェルランドが愛を歌う「愛しき人の愛のそよ風は」といった美しいアリア、姉妹の「私はあの栗毛の方がいいわ」、クライマックスでついにフィオルディリージがフェルランドを受け入れる「間もなく私は婚約者の腕に」と、胸染み入る珠玉の音楽の宝庫でもある。

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より           撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より          撮影:三枝近志

『コジ・ファン・トゥッテ』は2組のカップルとこの恋愛ゲームの仕掛け人の老哲学者アルフォンソ、そして恋愛指南役の小間使いデスピーナと、6人の歌手皆が重要な役。いわば全員主役のアンサンブル・オペラ。姉妹役として出演するのは、『トゥーランドット』リュー、『仮面舞踏会』オスカル、『カルメン』ミカエラなどの役でミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラ、フェニーチェ歌劇場など著名劇場で大活躍するセレーナ・ガンベローニと、モーツァルトやベルカントを得意とするメゾソプラノで、このミキエレット版の2011年の初演でも同役を歌ったダニエラ・ピーニ。対する恋人の若者二人には、プエルトリコから世界第一線へ躍り出たテノールの新スター、ホエル・プリエトと、米国でキャリアを築きセイジ・オザワ松本フェスティバル『エフゲニー・オネーギン』を皮切りに重要な役に出演を重ね、評価も人気も爆発的に上昇中のバリトン大西宇宙。

フィオルディリージ役:セレーナ・ガンベローニ(ソプラノ)

フィオルディリージ役:セレーナ・ガンベローニ(ソプラノ)

ドラベッラ役:ダニエラ・ピーニ(メゾソプラノ)

ドラベッラ役:ダニエラ・ピーニ(メゾソプラノ)

フェルランド役:ホエル・プリエト(テノール)

フェルランド役:ホエル・プリエト(テノール)

グリエルモ役:大西宇宙(バリトン)

グリエルモ役:大西宇宙(バリトン)

小間使いデスピーナ役は、スーブレッド(『フィガロの結婚』スザンナや『こうもり』のアデーレなどの軽く快活なソプラノの役)はもちろん、『ペレアスとメリザンド』イニョルドや『ボリス・ゴドゥノフ』クセニアで高評を得るなど進境著しい九嶋香奈枝。哲学者ドン・アルフォンソ役はナポリ出身の実力派バッソ・ブッフォ、フィリッポ・モラーチェが出演する。

デスピーナ役:九嶋香奈枝(ソプラノ)

デスピーナ役:九嶋香奈枝(ソプラノ)

ドン・アルフォンソ役:フィリッポ・モラーチェ(バス・バリトン)

ドン・アルフォンソ役:フィリッポ・モラーチェ(バス・バリトン)

指揮は2020年のシーズン開幕公演『夏の夜の夢』を大成功に導いた飯森範親が務める。

指揮:飯森範親

指揮:飯森範親

また、演出を務めるのはイタリアの演出家ダミアーノ・ミキエレット。世界中のオペラハウスで大胆な演出を発表して話題を巻き起こし続ける売れっ子演出家で、その演出は、設定の読み替えで観客を驚かせながらも、登場人物の心理に寄り添った丁寧な読み込みで、作品の本質を捉えるものと高く評価されている。

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より           撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より          撮影:三枝近志

2011年に演出したこの『コジ』では、モーツァルトが指定した18世紀のナポリの海辺でなく、現代のキャンプ場を舞台に設定。斬新ながら、テキストに忠実な的を射た展開でモーツァルトの傑作に新たな息吹を吹き込み、開幕するや「キャンピング・コジ」の愛称で大人気となった。

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

幕が上がるとそこは針葉樹の巨木が立ち並び、苔の薫りまで漂うような深い森。この森は木漏れ日から夕暮れ、闇へと刻々と情景が変化し、思わず感嘆の声が上がるほどの美しく深遠な世界。ストーリーが始まるや、キャンプグッズに本物のクルマ、パンクなバイク野郎への瞬時の変身と、遊び心いっぱいの小道具やファッションが回転舞台に続々と登場するのも注目ポイント。リアルなだけでなく、時々仕込まれた舞台ならではのユニークな趣向も楽しさいっぱい。若者たちの喧騒に男女の見定め合い、テントの張り場所を巡る小競り合いに、水遊びに興じながらの恋愛談義、深い闇の中の焚火……「キャンプあるある!」の楽しい仕掛けが満載だ。

さらに観客を唸らせるのが、ミキエレットが提示した『コジ』の結末。老哲学者の思惑通り若い女が心変わりし、現場を押さえられた末に唐突に「目が覚めた」と男の懐に戻って大団円……という原作を引っくり返した結末の演出に、快哉を叫んだ観客は多数。

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』より         撮影:三枝近志

共感を呼んでやまないミキエレットの「キャンピング・コジ」は、劇場で、極上の音楽とドラマ展開をとことん楽しんでもらいたいエンターテインメント作品となっている。

【あらすじ】
青年士官のグリエルモとフェルランドは、美しい姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ婚約を交わしている。老哲学者のドン・アルフォンソにそそのかされ、ふたりは恋人の貞節について賭けをすることに。出征するふりをして偽りの別れを演じた後、別人に変装して姉妹を口説くふたり。姉妹の心は次第に揺らぎ、ドラベッラがグリエルモに、さらにフィオルディリージもフェルランドの口説きに陥落してしまう。入れ替わった2組のカップルの結婚式が行われるところに、軍隊(婚約者)の帰還が告げられる。