歌手の堀内孝雄(74)が6年ぶりのシングル「青二才〜わが友よ」を発売した。まるでアリスの新曲かのような軽快な曲調と、昨年10月に亡くなった盟友・谷村新司さんに語りかけるような歌詞。「チンペイさん(谷村さん)が作っても同じようなものになったんじゃないかと思います。昔からのファンの人も喜んでくれるんじゃないかな」と笑顔で語った。

 谷村さんが亡くなって半年。「早いですねえ」と感想を漏らしつつ、その喪失感を拭うこともなかなかできない。「折に触れて思い出してしまいますね。特にアリスの曲を歌うとふーっと姿が思い浮かぶんです。歌いたくなくなるくらい。必ず姿がふーっと出てくるんですわ」と、寂しそうな表情を浮かべた。

 歌うことが辛くなることがあっても、アリスの残されたメンバーとして気持ちを奮い立たせている。今も一日一回の発声練習は欠かさず、声質も声量も昔とほとんど変わらない。「別れの時に彼に言ったんです。君に恥じない歌を作っていきたい、もうちょっと頑張っていけると思うので君に恥じない生き方をしていきたいと思うので、すんませんけど、守ってくださいって」

 社会に寄り添うような歌をたくさん残した谷村さん。そのアティチュードを新曲でも受け継いだ。「コロナが終わったと思ったら、世界のあちこちで戦争があったり、地震があったり。またぼくらを取り巻くのは詐欺ばかり。一生懸命生きている人がバカを見るような気持ちになりそうになってもおかしくない。これはあかん。ぼくも含めてやけど、しっかり気持ちを入れて、生きていかんとあかん。そんなエールを込めたかったのが今回の新曲ですね」

 現在、アリスとして活動する準備も着々と進めている。「早いうちがいいとは思うんですけどライブをやってみたいですね。うまく映像と組み合わせられればいいなと思う。チンペイさんの替わりは誰もできないので、何かうまく工夫してできればいいかなとは思っています」

 アリスは81年に個々のソロ活動を優先し、活動を停止。その後限定的な再始動はあったものの、09年に“完全再始動”を宣言するまでは約28年にわたって活動停止状態だった。その空白期間を埋めるかのように精力的に活動してきた矢先の盟友の死。それだけに、堀内の中でもこれまでにないほどグループへの思いが強くなっている。

 「地方に行くとわかるんです。こんなところにも愛してくれていた人たちがいるのかって。もうフォーエバーですね。永遠です。そしてもう一度、アリスで一矢を報いたいですね」と力強くアリスの継続を宣言していた。(江良 真)