【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】「人生幸朗(じんせい・こうろう)・生恵幸子(いくえ・さちこ)」と聞いてピンと来る人は還暦より上の人になるか…。昭和後期、大阪を拠点に活躍した夫婦漫才コンビだ。「ぼやき漫才」で全国区の人気を誇り、決めぜりふ「責任者出てこい!」が耳に残っている。「理屈に合わんことが多すぎる」と愚痴る人生に代わって、今回は少しぼやかせてもらおう。

 東急東横線沿線の街に暮らし始めて20年近く。東京メトロ副都心線ともつながって新宿や池袋、さらにはその先に向かうにはとても便利になったのは喜ばしい限りだが…。

 最寄り駅には「特急」や「急行」が止まらない。これまでは別段不便を感じることもなかったが、今は少し事情が違う。昨年3月に東急新横浜線が開業し、相鉄線との相互乗り入れが始まったことで、「通過」また「通過」がグーンと増えた。筆者のように各駅しか止まらない地域に住む住民は正直複雑な思いを抱えているのではなかろうか。

 例えば、帰宅の時間帯。八丁堀駅から乗り込んだ東京メトロ日比谷線を中目黒で降りて東横線に乗り換えるが、以前は1本置きに「各駅停車」がやって来た。ところが今は2本続けて「通勤特急」やら「特急」やら「急行」がホームに滑り込んでくる。「各駅」組は指をくわえてやり過ごすしかないが、腹立たしいのは2本目の電車は意外とスカスカなこと。その後にやって来る「各駅」はその分満員状態になる。誰がダイヤを組み立てているのか知らないが、もっと実情に目を向けて欲しい。

 ぼやきついでにもう一つ。立ち寄りがない時は八丁堀駅で降り、JR京葉線に乗り換えて越中島のスポニチ本社に通勤する。京葉線には東京ディズニーランドやディズニーシーの玄関口「舞浜」があり、国内外からの観光客の利用が多い。

 ところがこの乗り換えルートにはエレベーターもなければエスカレーターもない。大きなキャリーバッグを手にした人が難儀している姿を頻繁に目にする。若い女性が重さに耐えかねて階段の上から落としてしまったシーンにも出くわしたこともある。ドタンバタンと落ちていく先には幸いにも人がいなかったから大事に至らなかったが、小さな子供でもいたら…と思うとゾッとした。

 改修には優先順位があると聞くが、いったい日比谷線と京葉線をつなぐ「八丁堀」は何番目くらいなのか。観光客が多く利用する路線。今年もゴールデンウイークが終わり、この経路の混雑も少しは緩和されるだろうが、できるだけ早めに手を打つべきではないか。ここは「各駅」ではなく、「超特急」のスピードが望まれる。政治家の裏金を改修費の一部にあてるのはいかがか。