◇プロボクシング4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ 王者・井上尚弥<12回戦>WBC1位ルイス・ネリ(2024年5月6日 東京ドーム)

 「モンスター」が「パンテラ(黒ヒョウ)」を狩った!34年ぶりの東京ドームボクシング興行で、4団体統一世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(31=大橋)が挑戦者ルイス・ネリ(29=メキシコ)を6回1分22秒、TKOで下し、4本のベルトを守った。東京ドームで日本人初のメインイベンターとして、日本人にとっての最大のヒールである“悪童”を倒し、元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏の敵討ちに成功。初の世界王座奪取から節目の10年、4万人超の観客の前でボクシング史に名を残す歴史的1勝を挙げた。

 試合後の記者会見で右まぶたを赤く腫らしながらも「1ラウンド目にダウンを喫しましたが、最終的にはKOして勝つことできた。自分の中でいいキャリアが築けたのかなとも思います」と語った。

 初回、左を出した尚弥に対し、ネリの左フックがヒット。井上は初ダウンを喫した。しかし2回は左フックを逆に当てて、ネリからダウンを奪った。お互いに強打が当たる距離での応酬に東京ドームでは、どよめきと歓声が交錯した。

 4回は互いにノーガードで向き合い、挑発する場面もあったが、徐々に、尚弥のパンチがヒットしていった。5回には、再び尚弥が左フックでダウンを奪うと流れをつかんだ。6回には右のパンチがクリーンヒットし、ネリをマットに沈めた。

 初ダウンについては「ダメージはさほどなかったけど、パンチの軌道がちょっと読めなかった。1ラウンド目ということもあって、ダウンはしましたけど、引きずることなく2ラウンド目からポイントを計算していこうかなと。そこは冷静に戦うことができました」と話した。「出だし、ちょっと気負っていた部分あったと思うので、ダウンして冷静に立て直すことができた。あのダウンがあったからこそ、あの戦い方ができたのかな」とも話した。

 大橋秀行会長は、試合後の会見で「内緒にしていたが…」といって衝撃の事実を明かした。セミファイルのWBO世界バンタム級タイトルマッチは挑戦者の武居由樹(27=大橋)が王者のジェーソン・モロニー(33=オーストラリア)を判定で破り、新王者となった。21年に立ち技格闘技のK―1から転向した武居は日本人初のK―1とボクシングでの世界王者となったが「実は尚弥と武居でスパーをやって(武居が)コテンパンにやられて、駄目かと思った。最終12ラウンドみたいになったので、あれがいい経験になって、あれでチャンピオンになれたと思う。桑原は負けてしまったが、またすぐ頑張ると思うし、3人のチャンピオンが一致団結してくれた。本当にありがとう」と語った。