UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝が4月9日(現地時間)からスタート。世界トップクラスのハイレベルな攻防が楽しめる。そのなかで優勝するのはどこのクラブか。3人の識者に予想をしてもらった。

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CL準々決勝がスタート。ベリンガム(左)のレアル・マドリード対ハーランド(右)のマンチェスター・シティに大注目だ photo by Getty Images

◆準々決勝組み合わせ 
(※左側のチームが第1戦のホーム) 
アーセナルvsバイエルン
(1stレグ4/9、2ndレグ4/17) 
レアル・マドリードvsマンチェスター・シティ
(1stレグ4/9、2ndレグ4/17) 
パリ・サンジェルマンvsバルセロナ
(1stレグ4/10、2ndレグ4/16) 
アトレティコ・マドリードvsドルトムント
(1stレグ4/10、2ndレグ4/16)

◆準決勝(1stレグ4/30,5/1 2ndレグ5/7,8) 
アトレティコ・マドリードvsドルトムントの勝者 vs パリ・サンジェルマンvsバルセロナの勝者  
アーセナルvsバイエルンの勝者 vs レアル・マドリードvsマンチェスター・シティの勝者

◆決勝(6/1)

【マンチェスター・シティに連覇の可能性】

杉山茂樹(スポーツライター)

◎本命=マンチェスター・シティ 
〇対抗=アーセナル 
△穴=レアル・マドリード

 抽選の悪戯で、有力チームがトーナメントの山の一方に集まってしまった。レアル・マドリード対マンチェスター・シティ、アーセナル対バイエルン。優勝チームはこの4チームのなかから出ると思われる。

 2連覇を狙うマンチェスター・シティにとっては茨の道だ。準々決勝、準決勝で戦う相手のほうが、決勝で戦う相手より強そうだと見る。それでも、際どく勝ち上がってくるのではないか。CL史上(1992−93シーズン以降)、レアル・マドリードに続き連覇を達成するチームになる可能性が高い。

 戦い方に余力があるというか、幅の広さ、選択肢の多さという点で、ほかの3チームに勝る。プレミアリーグの優勝争いと日程が重なっても、持ちこたえられそうな総合力がある。

 だが、準々決勝のレアル・マドリード戦は、バルセロナ出身のジョゼップ・グアルディオラ監督にとって大きな関門だ。ライバル対決といっても過言ではない。過去2シーズンともに準決勝で対戦。昨季は大勝したが、一昨季は接戦をものにされている。受けて立つ側に回った今回、従来のしぶとさにチャレンジャー精神を加えることになるレアル・マドリードをどうかわすか。事実上の決勝戦と言ってもいいかもしれない。

 アーセナル対バイエルンは、アーセナル優位とみる。アーセナルもマンチェスター・シティ的な多彩さがある。バイエルンは逆に幅が狭い。接戦になった場合の分かれ目だと見る。

 パリ・サンジェルマン対バルセロナ、アトレティコ・マドリード対ドルトムント。この4チームは、抽選結果を喜んだのではないか。どのチームにも決勝進出のチャンスが大いにあるからだ。順番をつけるならばパリSG、バルサ、アトレティコ、ドルトムントの順だ。順当に行けば、決勝に駒を進めるのはパリSGとバルサの勝者と考える。

 パリSGのルイス・エンリケ監督は、バルサの元選手であり元監督だ。バルサが最後に欧州一の座に就いたのは、そのルイス・エンリケが監督を務めていた時代(2014−15シーズン)だ。因縁深い戦いになる。

 そこから10年でバルサは凋落。今回も優勝争いの6番手だ。欧州サッカーの先進的なポジションをマンチェスター・シティにすっかり奪われた状態にある。その流れは今季も継続するのか否か、目を凝らしたい。

【準々決勝に事実上の決勝戦がある】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

◎本命=マンチェスター・シティ 
〇対抗=レアル・マドリード 
△穴=パリ・サンジェルマン

 準々決勝で激突するマンチェスター・シティとレアル・マドリードの優勝候補対決が、事実上の決勝戦と言っても過言ではないだろう。

 とりわけディフェンディングチャンピオンのシティは、グループステージから無傷の8連勝中。確かに対戦相手に恵まれた部分は否定できないが、内容的にも申し分のない戦いぶりで、総合力でマドリーを上回る印象だ。

 エースのFWアーリング・ハーランドも、昨シーズンほどではないまでも、ここまで6ゴールを量産。途中からピッチに登場する選手も豊富かつハイレベルで、2連覇の可能性は十分にある。

 ただ、その前に立ちはだかるのが、百戦錬磨のカルロ・アンチェロッティ監督が率いる難敵マドリーだ。主力に故障者が続出している今シーズンだが、指揮官の巧みな選手起用と采配で、ここまで公式戦2敗という驚異的な強さ。

 守護神ティボー・クルトワやDFダビド・アラバの不在は痛いが、DFエデル・ミリトンの復帰など、ラストスパートに向けた準備は整いつつある。キーマンのMFジュード・ベリンガムがシティ戦でも勝負強さを発揮すれば、タイトル奪還が視界に入るはずだ。

 ダークホースは、まだCLの優勝経験がないパリ・サンジェルマンと見る。グループステージでは不安定さを露呈したものの、ラウンド16のレアル・ソシエダ戦ではFWウスマン・デンベレを中央でフリーマンにする新戦術を披露。その後の国内リーグ戦でもその戦術をブラッシュアップしており、例年になく、個の力に頼らず、チーム戦術で勝つ術を身につけつつある。

 大黒柱のキリアン・エムバペが今シーズン限りで退団することが確定しているだけに、それが"メイク・ミラクル"の起爆剤となる可能性もあるだろう。

 準々決勝のバルセロナ戦を乗り越えることができれば、準決勝で対戦するのはアトレティコ・マドリードとドルトムントの勝者。決して勝てない相手ではなく、現段階でも4シーズンぶりの決勝進出は現実的な目標と言っていい。

【ビルドアップの軸、攻撃の切り札の有無で見ると...】

西部謙司(サッカーライター)

◎本命=マンチェスター・シティ 
〇対抗=アーセナル 
△穴=アトレティコ・マドリード

 8強ともなると実力伯仲。逆に言えば、図抜けて強いチームもない。ここにレバークーゼンとリバプールがいればより混沌となったが、今季はCLにはいないのでシティを本命とした。

 準々決勝で対戦するレアル・マドリードは難敵だが、ここを勝ち抜ければチャンスは大きいのではないか。大黒柱のMFロドリが健在、MFフィル・フォーデンの成長、DF陣の充実と穴がない。

 対抗はアーセナル。かつてグアルディオラ監督のアシスタントコーチだった、ミケル・アルテタ監督が率いていて、互いに手の内を知り抜いている。センターフォワードにやや不安はあるものの、勢いに乗れば面白い。FWブカヨ・サカ、FWガブリエウ・マルティネッリ、MFマルティン・ウーデゴールのコンビネーションがいい。初優勝はハードルが高そうだが、狙うなら今季だ。

 穴はアトレティコ・マドリード。ここ数年で攻撃力は増し、看板の堅守も残していて一発勝負で力を発揮しそう。準々決勝は比較的与しやすいドルトムントと、くじ運もいい。攻撃型のチームばかりが残っているなかで、守備的な戦い方でも力を発揮できるのはアドバンテージになるかもしれない。

 試合序盤の焦点になるハイプレスvsビルドアップの構図において、ビルドアップの軸になれる選手がいるかどうかはポイント。ハイプレスが整理されたことで、可変だけではビルドアップ側の優位性はないからだ。

 その点で、ロドリのいるシティ、MFデクラン・ライスがいるアーセナルは安定感がある。アトレティコはDF陣のパスワークがよく、可変なしでハイプレスを外せる技術を持っている。

 この点で、パリ・サンジェルマン、バイエルンのビルドアップは怪しく、ドルトムントは相当苦しい。MFトニ・クロースやMFエドゥアルド・カマビンガのいるレアル・マドリーに問題はないが、相手がシティなので展開は劣勢になりそう。

 プレスの強度が落ちてくる60〜70分以降は、攻撃の切り札の有無が問われる。FWアーリング・ハーランド(シティ)、FWハリー・ケイン(バイエルン)、FWキリアン・エムバペ(パリSG)、FWロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)がトップ4だが、このなかでも総合力ではシティが有利と見る。