三浦璃来&木原龍一インタビュー 後編(全2回)

「りくりゅう」こと、フィギュアスケートペアの三浦璃来と木原龍一にインタビュー。後編では、りくりゅう自身の変化や後輩ペアのこと、出演するアイスショーなど、ふたりの"今"について、リラックスムードで語ってもらった。

前編<りくりゅう「苦しいシーズンだった...」ネガティブになった木原龍一に三浦璃来がかけた言葉とは?>を読む


ふたりの関係性の変化について語った三浦璃来(右)と木原龍一(左)

【ふたりの関係性に変化?】

ーーおふたりがペアを結成直後、カナダ・オークビルのリンクでインタビューさせていただいてからあっという間に世界のトップに。ペアを組んでから今まで、変化したことはありますか?

木原龍一(以下、木原) 僕たち自身、世界のトップに行けると思っていなかったので、もちろんまだ道は途中なんですけど、こういった日が来るというのはあまり信じられないというか。ただ、まだまだ努力していかないと本当の意味で世界チャンピオンにはなれないと、今シーズンあらためて思いました。

 最初は僕のほうがリーダーシップをとっていて、まあ今もあるんですけど、最近は僕が尻に敷かれてきたなって。立場がだんだん弱くなってきているなと感じています(笑)。

三浦璃来(以下、三浦) 違う、違う(笑)。最初は敬語だったんですよ、ずっと。でも、壁がどんどんなくなってきたなと思います。

木原 本当に最初はいつも僕が「璃来ちゃん大丈夫?」と言っていたのに(笑)。

ーー最初のころは、三浦選手の忘れ物がすごいから木原選手がチェックしているとおっしゃっていましたね。

木原 今回も帰国する時に(三浦選手が)スーツをカナダに忘れてきて。

三浦 だから今、母のスーツを着ているんです(笑)。

ーー昨年、世界チャンピオンという立場になってから意識は変わりましたか?

木原 世界チャンピオンとして恥ずかしくない試合運びをしたい、チームメイトにも恥ずかしくない練習を見せたい。アスリートとしてどうあるべきかを見せたいという思いが常にありましたけど、それを実践するのはやっぱり難しかったです。

 ただ、今季、ケガから復帰してからは、本当に自分たちが見せたい練習、したい練習ができたかなと思いますし、コーチからも「復帰してからの気持ちの持ち方は本当にすばらしかった」と言っていただけました。

三浦 私は去年から(日本のペアの)後輩たちがよくカナダに練習しに来てくれるので、先輩として恥ずかしくない練習をしたいという気持ちを持って滑るようになりました。

木原 後輩の女の子ふたりがいるとやっぱりね(笑)。

三浦 「お腹減った〜」とか言わない(笑)。

木原 お腹が減って不機嫌になるとかそういうのは......。

三浦 不機嫌にはなってない!(笑)

木原 お姉さんらしくなりますよね。

三浦 (後輩の)2チームが日本に帰国したあとは「もうちょっとしっかりしてほしい」と言われます(笑)。

【ゆなすみ・さえルカの魅力】

ーーカナダでは三浦選手が後輩選手たちをとてもかわいがってお世話していると聞いています。おふたりから見て後輩のゆなすみ(長岡柚奈&森口澄士)と、さえルカ(清水咲衣&本田ルーカス剛史)はどんなペアですか?

三浦 若いので、すごくパワフルですね。

木原 若いって言っても世代一緒でしょ(笑)。

三浦 あはは。そうなんですけど、あの(平均年齢が)......ね!

木原 若いころからいい環境で、いいパートナーと滑るのはすばらしいことだなと思いますし、やっぱりみんなかわいいですよね。

三浦 さえルカは、ショートプログラムの『白鳥の湖』が個人的にすごくお気に入りです。表現の仕方が本当にすばらしいと思っています。ゆなすみのショートも好きで、笑顔とリズム感がすごくいいなと思って私は見ています。

木原 咲衣ちゃんは曲がかかると雰囲気が変わるんですよ。「彼女はふだん滑っている時と、プログラムを滑っている時はまったく別人だね、すごいね」とコーチやみんなも話していました。男子はふたりともまだ始めたばかりですけど、技術力は確かなものを持っていると思うので、すごく楽しみです。

三浦 女子はふたりともすごく努力家です。私自身はスロー3回転ジャンプの習得が遅かったんですけど、ふたりはシングル選手というのもあって、始めてすぐにスロー3回転ができていたのですごいなと思っていました。

木原 男子は見ていて、僕が通ってきた苦労の道を通っているんだろうな、と。彼らの苦労はものすごくわかりますし、ルーカスくんを見ていても、「ああいう時は自分にもあったな」と思いながら常に見ていますね。ペアは1日、2日でできるものではないので、彼らがこのまま努力し続けていったら、すばらしいものになるんじゃないかなと思っています。

 澄くんは本当に高い技術力を持っています。始めて数年で今のレベルを持っているので、将来すごく楽しみだなと思いますし、僕自身も彼らに負けないようにやっていかないといけないなと刺激になっています。

【帰国後に楽しみにしていたこと】

ーー日本のペアの将来がとても楽しみですね。今回の帰国で一番楽しみにしていたことや、やりたいことはありますか?

三浦 私は世界選手権が始まる前からずっとコメダ(珈琲店)に行きたかったので、さっそく行ってきました(笑)。

ーー何を楽しみにしていたのですか?

三浦 私、最近メロンソーダが好きなんです。一緒に飲んだよね。

木原 一緒に飲んでないよ。

三浦 一緒に飲んでたじゃん。

木原 僕はクリームソーダです。ソフトクリームが乗っている以外は一緒だけど(笑)。僕は帰国したら病院に行きたくて。整形外科とか歯科医院とか、海外だとなかなか通えないですし、絶対に治すんだという強い思いがあったので、今、毎日病院に行けているのが本当にうれしいです(笑)。

ーー病院以外には何かありますか?

木原 犬がすごく好きなので、実家の犬に会えるのを楽しみにしてました。食べ物はお寿司好きなので、お寿司。ただ、お寿司といってもコーン巻き(コーンの軍艦巻き)なんですけど、また食べたいなって思っています。「寿司じゃないじゃん」っていつも言われるんですけど(笑)。もちろんマグロとかも好きなんですけど、やっぱりコーン巻きがいちばん好き。

ーー三浦選手はお寿司では何が好きですか?

三浦 私はサーモンが好きです(笑)。

【アイスショーでサプライズあり?!】

ーー4月20日から始まる『ブルーム・オン・アイス』ではスペシャルサポーターをされると聞きました。アイスショーの紹介や、どんなことをするかを教えていただけますか?

木原 『ブルーム・オン・アイス』は本当にアットホームなアイスショーです。なかなかトップスケーターの滑りをあの近さで見ることはできないですし、なおかつグループナンバーや、ふだんはコラボしないスケーターのコラボが見られるので、見どころになっていると思います。ほかにもインターミッション(休憩時間)に何かサプライズイベントがいろいろあるかもしれません!

三浦 お客さんとの距離がすごく近いので、お客さんの目の前で踊ることを毎年楽しみにしています。それと、ペア女子の柚奈ちゃん咲衣ちゃんに会えるのがすごく楽しみです(笑)。

ーーペア女子3人でウォーキングアプリの『ピクミン ブルーム』にハマっているそうですね。

三浦 はい。ピクミンの話を延々としています。世界選手権や、咲衣ちゃんの世界ジュニア前にも「試合が終わったら3人で『ピクミン ブルーム』で歩きに行こう」という話をしていていました。

ーー木原選手は一緒にやらないんですか?

三浦 やってくれないんですよ。

木原 僕はやらないですね(笑)。

ーーアイスショーを楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

木原 今回は演技を披露することができず本当に申し訳ありませんが、スペシャルサポーターとして皆さまに何かお届けできたらなと思っています。

三浦 私のケガで滑ることができなくて本当に申し訳ありません。龍一くんが言ってくれたように、スペシャルサポーターとして皆さまに楽しんでいただけたらなと思っています。

【「情熱大陸」密着の裏側】

ーーおふたりに密着したドキュメンタリー番組『情熱大陸』が先日放送されましたが、反響はいかがでしたか?

木原 たくさんの方に見ていただけたみたいで本当にうれしいですし、この間、自動車免許の更新をした時、ハンコを押していただいた瞬間に(担当者が)「見ました」と。それで「あっ、ありがとうございます」ということがありました(笑)。テレビの力ってすごいなと思いました。また取材していただけるように、ふたりで頑張らなくてはと思っています。

ーーオンエアは見られたんですか?

木原 番組が始まる直前に璃来ちゃんから「取材してもらった時、めちゃくちゃ喧嘩してる場面あったけど使われたらどうしよう」って連絡が来て(笑)。

三浦 本当にドキドキで見ていました。

木原 いつも仲がいいんですけど、言い合いもするんです。テレビでそのシーンが使われたらどうしようって心配をしていたんですけど、放送が終わった瞬間に璃来ちゃんから「(使われていなくて)よかった」って(笑)。

三浦 そのシーンがなかったので安心しました(笑)。

ーー三浦選手が木原選手を褒めているシーンもありましたね。木原選手についてコメントしている時は、木原選手は近くにいなかったのですか?

三浦 その時はいなかったです。本人がいると言いづらいので。感想は?(笑)

木原 ありがたいです。でも、僕が璃来ちゃんを褒めているシーンがなかったよね。話したと思うんですけど......。

ーーでは、ぜひ今お願いします。

木原 いや、僕、たしか......。

三浦 いやって何!(笑)

木原 違うんですよ。(テレビ取材時に)璃来ちゃんのいいところを話したんですけど、その時に、"璃来ちゃんが助手席で「まぶしいからサングラスをかけるんだよ」って言っていたのに爆睡していたから、あれは絶対に寝るためにかけた"という話もしたのでカットされたんです、たぶん(笑)。いいことは言っていたんだよ、ちゃんと。

三浦 本当?

木原 うん。その時に何を言ったかは覚えていませんが、今シーズンは迷惑をかけることもありましたし、僕がネガティブになった時も常に励まして引っ張る言葉をかけてくれたので、立ち直るきっかけになったので本当に感謝しています。

 璃来ちゃんと組めてよかったなと思いますし、ここで終わっちゃいけないなともあらためて思ったので、これからも一緒に頑張っていきたいなと思います。

ーーペアを組みたての時から「相性がいい」とおっしゃっていましたが、おふたりを見るたびに本当に相性って大事なんだなと感じています。

木原 やっぱり相性ってあるんだなっていうのが正直な感想ですし、それぞれが「こうしたい」と思ったことを言わなくても滑りに出るので、そこはすごく合ってるんだなと思います。

三浦 スケートに関しては本当に相性って大事なんだなって思いますが、日常では全然合わないですね。正反対です(笑)。でも、そこは反対のほうがいいのかなとも思います。

木原 きれいにまとめると、お互いに支え合っているということです(笑)。

前編<りくりゅう「苦しいシーズンだった...」ネガティブになった木原龍一に三浦璃来がかけた言葉とは?>を読む

【プロフィール】
三浦璃来&木原龍一 みうら・りく&きはら・りゅういち 
2001年兵庫県生まれで2015年にシングルからペア転向した三浦と、1992年愛知県生まれでソチ五輪、平昌五輪に出場した木原が2019年にペアを結成。2022−2023シーズンはグランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権で初優勝し、年間グランドスラムの偉業を達成。2023−2024シーズンは、3年連続で世界選手権の表彰台に上がる。カナダを拠点に活動中。木下グループ所属。

著者:山本夢子●取材・文 text by Yamamoto Yumeko