昨シーズンは3連覇を狙う野尻智紀、F1参戦目前のリアム・ローソン、トヨタの若きエース宮田莉朋の3人による激しいドライバーズタイトル争いに多くのファンが沸いた。

主催団体であるJRP(日本レースプロモーション)の様々な取り組みにより、サーキット来場者数も格段に増えたと聞いている。新参ファンもきっと、訪れた甲斐があったと満足しただろう。その中のチャンピオンを獲得した宮田と3勝を挙げ2位になったローソン、また2022年に2勝を挙げた平川亮の3人が不在となる2024年シーズン。主役たちが去り、白熱ぶりは昨シーズンほどではないのだろうか。

■ハイレベルな展開が予想

おそらく、そうはならない。むしろ、昨シーズンにも増してハイレベルな接戦が繰り広げられると予想する。

JRPの近藤真彦会長はオフシーズンのインタビューで「ヨーロッパからやってくるF1予備軍と国内トップドライバーとのぶつかり合いが、今シーズン1番の見どころ」だと語っていた。ローソン同様、F1参戦に必要なスーパーライセンスを既に取得済みのドライバーが今シーズン新たに2人初参戦する。海外のモータースポーツメディアも注目する2人の戦いは必見だ。

その1人目が岩佐歩夢。日本人だがカート卒業後はヨーロッパでキャリアを積み、F2で昨シーズン3勝を挙げF1にリーチをかけている。したがって凱旋帰国ではなく、まだ道の途中。今回のスーパーフォーミュラ参戦についても「チャンピオンになってF1に昇格するため」だと明言している。

ローソンやその前のピエール・ガスリーも同じ目的だった。2人目は昨シーズンのF2チャンピオン、テオ・プルシェール。2022年からはF1チーム、ザウバーのリザーブドライバーも兼任し、フリー走行でF1公式セッションデビューも果たしているドライバーだ。

つまり2人は今年ヨーロッパに渡った宮田や平川よりも現時点でF1に近く、同等以上の力があると考えて然り。野尻や坪井翔、牧野任祐といった昨シーズン上位の国内勢との攻防は、かなり白熱しそうだ。

■今シーズン話題の18歳

プルシェールはもちろん、岩佐もカート以外のレースを日本でほぼしたことがないが、昨シーズンのローソンの例でも分かるように、精巧なシミュレーションができる今、大きなハンデにはならないと考えられる。特に今週末の開幕戦の舞台は、鈴鹿レーシングスクール出身の岩佐が唯一走り慣れている鈴鹿サーキット。鮮烈なデビューを飾る期待は大きい。

そして、その2人にも増して今シーズン話題になっているのが18歳の女性ドライバー、Juju(野田樹潤)の参戦。彼女が13歳の頃のレースを見たことがある。その際、元F1ドライバーである父、野田秀樹のDNAを受け継いでいるからか非凡な才能があるとは感じたが、トップフォーミュラにまで到達するとは思わなかった。レーシングドライバーに必要なのはマシンを操る技術だけではない。

トップフォーミュラとなれば特に、強烈なGに耐えながら周回を続けるフィジカル面が重要であり、差別するわけではなく実際に男性と女性のフィジカル差は確実にあるからだ。オフシーズンテストではまだ、Jujuは戦えるラップタイムを刻めていない。しかしスピン、クラッシュを恐れることなく攻め続ける走りは予想以上だった。今週末、初の実戦で何を掴み、今後の進化にどう繋げるのか、2024年シーズンはこちらも大変興味深い。

2月に行われたスーパーフォーミュラの記者会見(C)前田利幸

著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。

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