日本時間5日早朝、米国・チャーチルダウンズ競馬場にて、第150回ケンタッキーダービー(GI・ダ2000m)が行われる。

「スポーツの中で最も偉大な2分間」とも称される米国競馬の祭典。今年はフォーエバーヤングテーオーパスワードと2頭の無敗馬が参戦。日本調教馬として悲願の初優勝となるか、それとも地元米国勢が返り討ちを果たすのか、その結末を予想する。

■期待の日本の大将格、懸念点は臨戦過程か

デビューから無傷の5連勝、現在の3歳ダート戦線では大将格ともいえるフォーエバーヤングが、日本調教馬として悲願のケンタッキーダービー制覇に挑む。

昨年、全日本2歳優駿で後続に7馬身差をつける圧勝劇でGI制覇を果たすと、今年は海外を転戦。2走前のサウジダービーでは、勝ちパターンに見えた2着馬を、残り100m付近から猛然と追い詰め、図ったような差し切り勝ち。UAEダービーでは、好位からねじ伏せる形で快勝し、2か国のダービー馬に輝いた。

戦術的にも、レースに合わせて先行もできれば後方からも運べる自在型。レーティングも出走メンバー中2位タイで、主催者発表オッズでも4〜5番人気と、現地でも注目を集めており、過去にケンタッキーダービーへ挑戦した日本馬に比べると、最もチャンスがありそうな存在だ。

問題は、アメリカのダートの質が本馬に合うかどうか。加えて、前走がUAEダービーだった馬が、これまでに19頭が出走し、一度も馬券圏内に入ったことがないという点。それでも、幾度となく海外の扉をこじ開けてきた“世界のYAHAGI”なら、偉業を成し遂げてもおかしくないだろう。

もう1頭の日本馬、テーオーパスワードは伏竜Sを制しての参戦。その先行力は魅力的で、現地で騎乗している木村和士が鞍上という点も応援したくなるが、キャリア2戦でケンタッキーダービーを制した例は、1883年以来出現しておらず、かなり高いハードル。天皇賞・春を制したテーオーロイヤルと同馬主の本馬が、その勢いに乗ってどこまで戦えるか、馬券とは別に注目したい。

■ムラ駆けのフィアースネスより安定性のシエラレオーネ

馬券を検討する上では、やはり地元米国勢を中心に考えたい。その中で、まず注目すべきは、レーティング最上位、重要な前哨戦と位置づけられているフロリダダービーで、レース史上最大となる13馬身半差で大勝したフィアースネスだろう。

その勝ち方のみならず、勝ちタイム1分48秒22も優秀な数字。コロナ禍で秋開催となった2020年を除く過去9年で、フロリダダービーで1分50秒を切って勝った馬は4頭いるが、いずれもケンタッキーダービーでは3着以内の上位入線を果たしており、大いに期待できる。

とはいえ、絶対的な信頼度があるかというと懸念点もある。まずは、先行タイプで17番枠からスムーズに先行できるかという点。さらに、ムラのある戦績も気にかかる。デビュー2戦目のGIシャンペンSでは、先行できずに20馬身以上離された7着に大敗。2走前のGIIIホーリーブルSでは、圧倒的1番人気に支持されて3着に敗れるなど、脆さも兼ね備えている。デビューから勝ち→負け→勝ち→負けを繰り返しており、順番通りなら今回は負けの番となるが、果たしてどうなるか。

安定性を考えると、フィアースネスと人気を二分するシエラレオーネを上位に考えたい。こちらは脚質が追い込み型。多頭数の今回、2番枠からの発走で、馬群に包まれる展開になった際にどうなるか微妙なところ。

だが、2走前はドボドボの不良馬場となったGIIリズンスターSで、豪快な追込一気で重賞初制覇を果たすと、前走は良馬場のGIブルーグラスSで、4コーナーから外めを進出し、直線では1頭だけ他馬とは違う脚色で鮮やかな完勝劇。馬場状態を問わずに、堅実に末脚を伸ばせる点は世代随一だ。

管理するC.ブラウン師は、エクリプス賞調教師部門を4度受賞。ブリーダーズCは通算18勝も挙げている名匠だが、ケンタッキーダービーは一度も勝てていないだけに、今年は千載一遇のチャンス。陣営も並々ならぬ思いで仕上げてくるはずだ。

■波乱の使者は前哨戦敗戦組にあり

馬券はシエラレオーネを中心に組み立てたい。フィアースネスは強力で、フォーエバーヤングも圏内の可能性は高いが、JRAで馬券が発売された2019、22、23年と、かなり波乱の結果が続いており、人気を考慮すると妙味は薄いので押さえ程度に、思い切ってバッサリ切ってしまうのも手だ。

波乱を呼ぶのは、近年の傾向では各前哨戦で敗れた馬たち。まず昨年のケンタッキーダービー馬メイジの全弟ドーノックだ。前走のブルーグラスSではシエラレオーネに完敗して4着に敗れたが、2走前のレムゼンSでは競り勝っており、シエラレオーネに唯一土をつけた存在。2走前のファウンテンオブユースSは好時計で制し、兄に続いて大舞台で本領発揮を期待したくなる。

2020年を除く過去9年の連対馬で、4頭が連対を果たしているルイジアナダービー組からは、2着に敗れたオナーマリーを推奨。GI勝ちこそないものの、2歳時にチャーチルダウンズ競馬場で行われたGIIケンタッキージョッキークラブSを快勝しており、コース適性は高い。

ジャストアタッチは1勝馬で重賞勝ちもないが、レーティングはメンバー中4位と上位に位置している。前走ブルーグラスSでシエラレオーネの後塵を拝したが、その先行力は大いなる武器。2018年の北米三冠馬、父ジャスティファイから、そろそろケンタッキーダービー馬が誕生しても何ら驚けない。

そのほか、近2年で連対馬を輩出しているジェフルビーS組から、エンドレスリーも一考。今回がダート初出走となるが、2011年のアニマルキングダムが同様のケースで優勝しており、6戦5勝という好成績なら十二分に好走できる資格はある。

また、西海岸を代表して参戦するストロングホールドも未知の魅力があり1票。GIIIサンランドパークダービー、GIサンタアニタダービーを連勝中と勢いもあり、ほぼ初対戦となる今回のメンバー相手に、一泡吹かせる可能性も十分だ。

ケンタッキーダービー2024 結論・買い目

◎(2)シエラレオーネ ◯(1)ドーノック ▲(7)オナーマリー △(8)ジャストアタッチ △(14)エンドレスリー △(18)ストロングホールド

馬連流し(5点) 軸:2 相手:1、7、8、14、18

◆著者プロフィール

石川豊●いしかわゆたか 20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。