現地時間5月11日、NBAは今季のMVP投票を行なった100名のスポーツライター、放送関係者たちの投票内容を発表した。

 MVP投票は1位票が10ポイント、2位票が7ポイント、3位票が5ポイント、4位票が3ポイント、5位票が1ポイントとして換算され、合計ポイントが最も高かった選手が受賞者となる。

 今季はフィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビードが1位票73で計915ポイントを獲得し、初のMVPに選出されたことが2日に発表された。

 その一方で、2年連続MVPに選ばれていたニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)は1位票15を含む計674ポイントで2位に終わり、NBA史上4人目となる3年連続受賞はならず。1位票12の計606ポイントを集めたヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)が3位に入った。
  この3人は2シーズン連続でMVPの最終候補に入ったが、今季の投票結果の内訳を見てみると、エンビードが1位票73、2位票25、3位票2、アデトクンボが1位票12、2位票23、3位票65と、全100名から投票されているのに対し、ヨキッチは1位票15、2位票52、3位票32で99名と、1名から投票されていなかった。

 すると11日、米スポーツ専門局『ESPN』でNBAアナリストを務めるマーク・ジャクソンが『SiriusXM NBA Radio』にゲスト出演し、「私には生きていくうえで重要なことがある。それはミスをしたら認めることだ」と、投票での“過ち”を告白した。

「完全に私のミスだ。どうしてこんなミスをしてしまったのか考えているくらいだ。私は(MVP投票で)センター1人、フォワード2人、ガード2人に投票していたんだ」

 現役時代に正統派ポイントガードとして活躍したジャクソンは、今回の投票で1位にエンビード、2位にアデトクンボ、3位にジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)、4位にシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)、5位にドノバン・ミッチェル(クリーブランド・キャバリアーズ)へ票を投じていた。 テイタムは計280ポイントで4位、ギルジャス・アレキサンダーは計46ポイントで5位、ミッチェルは計30ポイントで6位に入っており、ジャクソンが投票した5選手のうち、ミッチェルを除く4人がオールNBA1stチーム(ミッチェルも2ndチーム)に選ばれたことから、彼らが高く評価されるのは決して的外れなことではない。

 ただし、MVP投票の場合、票を入れる5選手のポジションは指定されておらず、純粋に今季の最優秀選手にふさわしい順に投票することになっている。それを勘違いしていたジャクソンは、ヨキッチへ投票しなかったことを謝罪した。

「デンバー・ナゲッツに申し訳ない。ニコラ・ヨキッチにも申し訳ないことをした。彼は歴史上で見ても偉大な選手の1人であり、歴代トップ10のセンターに入る。私のミスだったことを認めるよ。もし私の投票を取り上げたいなら大歓迎だ。私がミスしてしまったのだから」

 謝罪とともにヨキッチを称えたジャクソン。もし彼がヨキッチへ1票入れていたとしてもMVPの結果が変わったわけではないが、投票した有識者の1人として、公の場でミスを認めた。

 その上でジャクソンは、「私はそれでもMVPとしてジョエル・エンビードへ(1位票を)投じていただろう。ヤニスとジョーカー(ヨキッチの愛称)は2位と3位だ。彼らにはその価値が十分ある。彼は申し分ないシーズンを送り、歴史を作り続けている。私は自らのミスを認め、この場で謝罪する」と語っている。
  3年連続MVPの偉業は逃したものの、ヨキッチは今季も平均24.5点、11.8リバウンド、9.8アシストに、フィールドゴール成功率63.2%、3ポイント成功率38.3%、フリースロー成功率82.2%とハイレベルなスタッツを残し、ナゲッツをウエスタン・カンファレンス首位の53勝29敗(勝率64.6%)に牽引。

 5年連続でプレーオフに進出したチームは、ファーストラウンドでミネソタ・ティンバーウルブズを4勝1敗で下し、カンファレンス・セミファイナルでもフェニックス・サンズを4勝2敗で撃破。2020年以来、3年ぶりのカンファレンス決勝進出を飾った。

 ヨキッチはサンズとのシリーズで平均34.5点、13.2リバウンド、10.3アシストの平均トリプルダブルを達成。これはカンファレンス・セミファイナルに出場している全8チームの選手の中でいずれもトップの成績となっている(現地11日時点)。

 ヨキッチ自身は、個人タイトルよりも、初のNBAファイナル進出、そして悲願の初優勝に向けて集中しているに違いない。

文●秋山裕之(フリーライター)