NBAのシーズンも佳境を迎え、東西のプレーオフ争いとともに気になるのが、各個人賞の行方。MVPにはデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチが自身3回目となる受賞の有力候補に挙げられるなか、元選手のギルバート・アリナスは、過去2回は受賞に相応しくなかったと持論を展開している。

 ヨキッチと言えば、歴代4位となるトリプルダブル通算129回を誇る万能センターだ。2021、22年には史上13人目の2年連続シーズンMVPに輝き、昨季は8年目にして念願のリーグ優勝を果たして、ファイナルMVP(シリーズ平均30.2点、14.0リバウンド、7.2アシスト、FG成功率58.3%)の栄冠も手にした。

 今季もここまで74試合に出場して平均26.5点、12.4リバウンド、9.0アシスト、FG成功率57.9%と好成績を残し、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)やシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)らとMVPの座を争っている。
  ヨキッチが選出されれば自身3度目となるが、元NBA選手のアリナスはポッドキャスト『Nightcap』に出演した際、「(以前の受賞は)直近40年間でおそらくワーストのMVP受賞者」と発言。その根底には、「(MVPは)リーグトップか2位のチームから選ばれるべき」という考えがあるようだ。

 ただ、例外は2つあるとアリナスは言う。

「マイケル・ジョーダンはNBA全体7位(50勝32敗)でMVPになったことがある。その年(1987−88シーズン)、彼は平均35得点(35.0)、5リバウンド(5.5)、6アシスト(5.9)、3スティール(3.16)だった。オールスターMVP、最優秀守備選手賞、得点王、スティール王も獲得した。これはMVPだ。歴史的な年だから納得がいく。

 ラッセル・ウエストブルックがMVPになった年(2016−17シーズン)も、チームは全体10位(47勝35敗)だった。でも、(平均31.6点、10.7リバウンド、10.4アシストで)オスカー・ロバートソン以来のシーズン・トリプルダブルだ。アメージングさ」「しかし2020−21シーズン、ヨキッチのチームはリーグ全体で5位(47勝25敗)だった。彼の成績は平均26点(26.4)、10リバウンド(10.8)、8アシスト(8.3)。どこが歴史的なんだ? ビッグマンがもう少しでシーズン・トリプルダブルを達成するところだったということで、MVPは彼に与えられた。それがこのストーリーの内容だ」

 ヨキッチは、2020−21シーズンから3年連続でジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)とともに、MVPレースの1位、2位を占めてきた。21年はアリナスの言うように、ロバートソンとウエストブルックに続き、史上3人目の平均25点、10リバウンド、8アシスト以上を記録したことが評価されたと言える。

 しかしアリナスは「2度目のMVP(2021−22シーズン)、彼のチームは10位タイ(48勝34敗)だった。そのなかで、平均27点(27.1)、13リバウンド(13.8)、8アシスト(7.9)。何が歴史的だったんだ?」と、ジャマール・マレー(全休)とマイケル・ポーターJr.(出場9試合)が不在だったなかで奮闘した22年に関しても疑問視している。
  ポッドキャストにともに出演した元NFLスターのシャノン・シャープは、1962−63シーズンにウィルト・チェンバレンが平均44.8点、24.3リバウンドの成績でもMVPレースで7位(平均16.8点、23.6リバウンドのビル・ラッセルが受賞)、前年の61−62シーズンには平均50.4点、25.7リバウンドの怪物的スタッツでもチーム成績を理由に次点に甘んじた(同じく平均18.9点、23.6リバウンドのラッセルが受賞)例を列挙。

 アリナスは「ヨキッチの過ちではない。彼は自分に投票できないからね」と語っていたが、4月5日時点でナゲッツはNBA全体3位(53勝24敗)。60勝16敗で首位を快走するセルティックスはともかく2位以下は団子状態だけに、MVP争いも熾烈を極めそうだ。

構成●ダンクシュート編集部