今季、アルファタウリから生まれ変わったビザ・キャッシュアップ・RB(以下RB)。新たな名称、カラーリング、2024年型マシン「VCARB01」のポテンシャルなど、注目点は多々あるが、角田裕毅とダニエル・リカルドのチーム内対決もそのひとつだ。

 単にチーム内の主導権争いというだけでなく、セルジオ・ペレスの去就次第によってはレッドブルのシート争奪戦としての意味合いもあると見られており、ともにシニアチームへの昇格が目標だと明言していることもあって、この「日豪対決」は非常に興味深いものになっている。

 昨季途中、ニック・デ・フリースの不振によって急遽、レッドブルのリザーブからアルファタウリの正ドライバーとしてコースに復帰したリカルドは、角田、リアム・ローソンら若きドライバーを抑え、最もレッドブルに近い位置にいるドライバーであるとの見方が大勢を占めているが、開幕した今季、2戦を終えた時点では、チームメイトである角田の後塵を拝している。
  開幕戦バーレーン・グランプリでは予選Q1、Q2ともに0.1秒ほどの差がつき、順位では11番手の角田に対し、リカルドは14番手に沈んだ。決勝は戦略の違いで終盤にチームメイトに追いつき、チームオーダーで先行するも、前を行くケビン・マグヌッセン(ハース)を抜くことはできず。さらに続くサウジアラビアGPでは、予選Q3進出で9番手につけた角田から、0.46秒も遅れての14番手と、タイム差は開いてしまった。

 ジッダでのレースでは、角田のはるか後方に沈んだだけでなく、スピンを喫する――それも彼がシートを奪いたいと考えているペレスの目前で――など、終始苦労してのフィニッシュとなり、「この週末では我々は100%機能していないところが幾つもあった。正直に言えば、この車には多くの欠点がある」と指摘していた。 英国のモータースポーツ専門メディア『THE RACE』は、ここまでのリカルドについて「(プレシーズンテストを見た限りでは)再びマックス・フェルスタッペンのチームメイトとなるためのミッションにおいて、適切なスタートを切るように感じられたが、実際は最悪なものとなった」と綴り、以下のように厳しく評している。

「将来のレッドブルのシート獲得のため、リカルドは今季、チームメイトである角田を、説得力をもって打ち負かすというタスクを与えられている。しかし実際のところ、開幕からの2週間では、明らかに角田がリカルドよりも優位に立っている」

 もっとも、リカルド自身は「我々は間違いなく、近い位置にいたと思う。ユウキは明らかに良い仕事を果たしたが、僕がそうでなかったとは断言できない。彼が特別快適だったわけではないし、逆に僕が特別苦労したというわけでもない。我々にはそれぞれの強みと弱みがあり、予選ではかなり均衡していたと思う」と語っており、チームメイトに対して出遅れたという印象は持っていないようだ。
  同メディアも、まだ2戦を終えただけであり、特にジッダのコースがかなりユニークな特性を持っていたことで、特定のドライバー(リカルドやメルセデスのルイス・ハミルトンら)には不利に働いたこともあり、「何かを結論付けるには時期尚早である。また、リカルドのレッドブルへの復帰の取り組みも危機的な状況にあるとは言えない」と指摘。昨季のメキシコGPでの素晴らしいパフォーマンス(チームの昨季最高結果となる7位フィニッシュ)からも、「実力があることをすでに示している」という。

 その一方で、レッドブルのヘルムート・マルコ顧問は、ルーキーでいきなり結果を出したオリー・ベアマン(フェラーリ)やモトGPのペドロ・アコスタ、そしてレッドブルのリザーブドライバーであるリアム・ローソンの名を引き合いに出し、開幕2戦で躓いた34歳のリカルドに対しては「早急に改善策を見つける必要がある」と指摘している。

 次戦は母国オーストラリアGPであり、リカルドは「メルボルンにはチームが良いパッケージを持ち込むはずであり、ここからが僕のシーズンのスタート」と意気込みを示している。奇しくもその1週間後、今度は角田が母国でレースを迎えるだけに、このラウンドはRBの2人のドライバーにとっては、今季の流れを決める重要なものになりそうだ。いずれのレースも見逃すことはできない。

構成●THE DIGEST編集部

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