男子テニス世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア/36歳)が、3月27日に更新した自身のSNSを通じ、約5年にわたって苦楽を共にしてきた元世界2位のゴラン・イバニセビッチ氏(クロアチア/52歳)とのコーチ契約を終了したと発表した。

 マリン・チリッチ(クロアチア/元3位/現1047位)やミロシュ・ラオニッチ(カナダ/元3位/現197位)、トマシュ・ベルディフ(チェコ/元4位/引退)など名だたるトッププレーヤーを指導した経験を持つイバニセビッチ氏は、2019年の芝コートシーズンにジョコビッチのコーチに就任。直後のウインブルドンでいきなり優勝に導くと、以降もジョコビッチの数少ない弱点であったサービス力の改善に大きく貢献した他、絶対王者の“精神的支柱”としても存在感を発揮してきた。

 ジョコビッチがイバニセビッチ氏と正式に契約した後に獲得した四大大会のタイトルは9。この数字を見るだけでもいかに2人のタッグが強固であったかがわかる。ただしイバニセビッチ氏にとって、長年無類の強さを示してきたテニス界のスーパースターを指導するのは、ある意味で至難の業だったといい、以前にはメディアの取材で「ノバクは天才だが、常に一緒に仕事をするのが簡単な選手ではない」と率直に明かしていた。

 イバニセビッチ氏がコーチに就いてからは順風満帆に来ていたジョコビッチだったが、今季は年明けから少々苦戦を強いられている。大会連覇を狙っていたシーズン最初の四大大会「全豪オープン」(オーストラリア)では準決勝でヤニック・シナー(イタリア/大会時4位)に敗退。休養を経て参戦した「BNPパリバ・オープン」(アメリカ/ATP1000)でも3回戦でラッキールーザー(予選敗者が繰り上がる措置)の20歳、ルカ・ナルディ(イタリア/大会時123位)にまさかの敗北を喫していた。 
  現在開催中の「マイアミ・オープン」(アメリカ/ATP1000)は「プライベートと仕事のバランスを取る」という理由で欠場。ここ最近はどこか勢いに欠けている印象を受ける中で何かを変えたかったのかもしれないが、もはやジョコビッチにとっては欠かせない存在だったイバニセビッチ氏との離別を予想していたファンはそう多くはないだろう。

 今回の投稿で「ゴランと僕は数日前に一緒に仕事するのをやめることにした」と報告したジョコビッチは、前コーチのマリアン・バイダ氏(スロバキア/59歳)に触れつつイバニセビッチ氏との思い出を回顧。最後にはかけがえのない恩師への感謝の言葉で締めくくった。

「ゴランをチームに誘った時のことははっきりと覚えている。それは2018年まで遡り、マリアンと僕が技術革新を図っていた時に、サービス力向上の魔法をもたらしたいと考えていた。

 でも実際には、我々はサービスだけでなく、たくさんの笑いや楽しさ、年間1位や記録破りの成果、さらにはそれから数えると12度もの四大大会優勝(および数回の決勝進出)もあった。コート上での相性には浮き沈みがあったが、僕らの友情は常に揺るがなかった(中略)。ボス、いつもありがとう。友よ、愛しているよ」

 現状イバニセビッチ氏側からは契約終了に関するコメントは出ていない。ジョコビッチの新コーチは誰になるのか、今後の動向に注目が集まる。

文●中村光佑

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