アジアカップ終了後にアーセナルに再合流してから長くふくらはぎの負傷で戦線を離脱していた冨安健洋だが、プレミアリーグ第30節マンチェスター・シティ戦で復帰を果たしてからは、ここまで後半途中からの出場を繰り返している。

 左SBの交代要員として毎試合、約20分間ピッチに立つ彼は、相変わらず守備においては危なげなく役割を果たしており、現地メディアからは及第点以上の評価を受けているが、対照的に評価を悪くしているのが、スタメンとして同ポジションを担っているオレクサンドル・ジンチェンコだ。

 冨安同様にふくらはぎの負傷から復帰し、31節からヤクブ・キビオルに代わって先発出場を果たしてきたウクライナ代表選手については、アメリカのスポーツ専門サイト『The Athletic』が、「(0-2で敗れた33節アストン・ビラ戦で)ミケル・アルテタ監督がジンチェンコのプレーに苛立ち、頭を抱えたり、自身の太ももを叩いたりする場面が何度もあった」「彼は、混沌とした昨季のチームの名残のように感じられる」と、ネガティブに伝えている。
  同メディアは、左SBだけでなく、セントラルMF、10番ポジション、左ウイングと、攻撃面で多くの仕事をこなせる背番号35が、昨季はその上がりによってガブリエウ・マルチネッリら前線の選手にチャンスやスペースを生み出す効果的なプレーを果たしていたが、研究された結果、貢献度は低くなり、さらにその守備面での問題を相手に突かれるようになったと指摘した。

 まだ2年間契約を残しているジンチェンコの去就にも言及し、まだクラブとの交渉に入っていない彼が売却される場合の、左SBの駒の選択肢として、キビオル、冨安、ジュリアン・ティンバー、レンタル中のキーラン・ティアニー(レアル・ソシエダ)とヌーノ・タバレス(ノッティンガム・フォレスト)の名前を挙げ、日本人選手については以下のように綴っている。

「冨安はその役割に最も適していると思われるが、3月に負傷から復帰して以来、リーグ戦では先発出場していない。一方、ジンチェンコは90分を完走できないことが多い。アルテタ監督は、スペシャリストであるだけでなく、フィジカル面を維持できる左SBを必要としている」 一方、スポーツ専門サイト『GIVEMESPORT』は、ジンチェンコ、キビオル、冨安のここまでのスタッツを比較した上で、現時点では攻守両面でジンチェンコが上回っていることを紹介したものの、別記事では彼がデクラン・ライス、カイ・ハバーツら攻撃選手を効果的に活かせていないことを重視し、スタメンから外すことを主張。また、コメンテーターを務めるガンナーズOBレイ・パーラーの「このポジションは非常に重要だ。アルテタとエドゥSDが夏の移籍市場でSBを獲得することを信じている」とのコメントを紹介した。

 ちなみにジンチェンコは、チャンピオンズリーグ準々決勝バイエルン戦の第1レグ(2-2)では後半からの出場で比較的良いプレーを披露しているが、一方でスタメン入りしたキビオルはレロイ・ザネのスピードに苦しんでアーセナルの“最弱部”となってしまった。元々はCBのこのポーランド人選手も、アルテタ監督を完全に満足させることはできていない。
  その点、冨安について、アーセナルのクラブ専門サイト『PAIN IN THE ARSENAL』は「冨安は、とりわけ1対1の状況において、アーセナルが使うことができる最高の左SBだ」「冨安ならザネを孤立させられるだろう」と守備面での能力に太鼓判を押し、「彼は2024年に入り、アーセナルではまだ先発出場していない。しかし、大きな仕事を果たせる選手がいるとすれば、それこそが“トミ”だろう」と期待を寄せた。

 ここ数シーズンは、慢性化したふくらはぎの負傷が冨安の価値を高めるのを阻んでしまっているが、プレーのクオリティーでは今なお指揮官のファーストチョイスとなっているだけに、怪我から復帰した残りのシーズン、クラブが目指す逆転でのリーグ優勝に彼がどれだけの貢献を果たせるか、その起用法も含めて注目される。

構成●THE DIGEST編集部

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