コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、天海杏菜さんの『いばらの鱗』をピックアップ。

本作は、女子高生と人魚との出会いを描いたメルヘンホラー。2023年12月7日に作者が「人魚に憧れた女の子の話」としてX(旧Twitter)に投稿すると、その不思議かつ恐怖の物語に1万以上の“いいね”が寄せられ反響を集めた。この記事では天海杏菜さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

■永遠の静寂と平穏に憧れて…女子高生が迎えるまさかの結末に反響

幼い頃からずっと“永遠の眠り”に憧れている主人公・さと子。絵本で読んだ白雪姫や茨姫が花に囲まれて眠っている顔を「いちばん幸せそう」だと羨ましく思い、母親にいつも「私もはやく死んで永遠に眠りたい」と言っていた。しかし、そんなさと子を両親が“精神の病気かもしれない”と心配したことで、さと子は「こう思うのはだめなことなんだ」「もう誰にも言わない」と自分の心に鍵をかける。

それから成長し高校生になったある日。学校の帰りにさと子はふと、人魚が川から顔を出しているのを見かける。翌日、友人にそのことを明かすも冗談と捉えられてしまうが、その帰り道、再び川を訪れると確かに人魚の姿があった。

さと子は人魚に「あなたは私が焦がれたもののまぼろしなのかな」と問いかける。すると人魚は歌を歌い、さと子に近づいて頬に触れる。そこで突然、近所の人に呼び止められハッとするさと子。気づけば人魚の姿は無く、近所の人からこの川で一年前に女子高校生が溺れて亡くなったことを聞かされる。

家に帰り、ネットで事件のことを調べると、さと子は川で亡くなったとされる女子高生の容姿が人魚と全く同じであることに気づく。しかしその時、“自殺”と検索しているパソコン画面を母親に目撃され、責められてしまうのだった。それでも「人魚になりたい」という思いが強いさと子は、幻想的な永遠の眠りを追い求め、人魚の元を再び訪れて…。

先の読めない展開とラストに待ち受ける予想外の結末に、読者からの反響が集まっている本作。X(旧Twitter)上では「とても美しい作品」「怖いけど素敵な話」「こういうの好き…」「ハッピーエンドみたいなバッドエンド」「皆バッドエンドって言ってるけどハッピーエンドでは?」など結末の捉え方についても様々な感想が寄せられ、話題となっている。

■「読者の方に驚いて楽しんでほしい」作者・天海杏菜さんが語る創作の背景とこだわり

――『いばらの鱗』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。

2019年ごろ、漫画賞に応募するために制作しました。(当時別名義で小さな賞をいただきました。)シンプルかつ印象に残る話を描きたい、と思ったのがきっかけだったと記憶しています。

――“永遠の眠り”を理想とする主人公・さと子のキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?

ストーリーが先行してできたので、それに合わせて読み味を妨げない、余計な情報のないビジュアルにしました。どこにでもいるような夢見る女の子です。

――本作をXに投稿後1万以上の「いいね」とともに、物語の結末がハッピーエンドなのか、もしくはバッドエンドと捉えるかなど読者からさまざまな感想が寄せられているのが印象的でした。今回の反響について率直なご感想をお聞かせ下さい。

個人的には、SNS映えする話ではないかも…と思っていたので、予想外の反響に驚いています。

たくさんの方に、いろんな解釈をしながら読んでいただけてありがたいです!主人公と同世代の方からの感想は、自分が大人になって忘れてしまった感情を思い出す気持ちになって、特に嬉しいです。

――本作の中で天海さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?

人魚が正体を表し、さと子に牙をむく場面です。漫画の雰囲気がガラッと変わるシーンは、自分の作品に限らず大好きなので!

――天海さんは現在『ガチ恋カウント2.9』(芳文社)と『南さんはあざといい子』(双葉社)を連載され、こちらも話題を集めています。それぞれの作品の見どころを教えていただけますか。

『ガチ恋カウント2.9』
素顔は内気な覆面女子プロレスラーと、そうとは知らずガチ恋するオタク女子。2人の関係性を中心に描くガールズプロレス4コマ漫画です。プロレスに興味のない人にこそ届いてほしい気持ちを込めて描いてます!

『南さんはあざといい子』
ぶりっ子に見える女性社員・南さんが実はめちゃくちゃいい子で、ドタバタしながら周囲の問題を解決していく…という、ハートフルコメディです。基本的に1〜2話完結で、スッキリ・ほっこりする読み味です!

両方ホラー要素はない明るい話なので、どなたでも安心して読んでいただけると思います。『ガチ恋カウント2.9』はまんがホーム(雑誌)もしくはCOMIC FAZ、『南さんはあざといい子』は各電子書店で配信中です。

――ホラーからコメディまで幅広いジャンルで漫画を描かれているようにお見受けしますが、創作活動全般においてのこだわりや特に意識していることがありましたら教えてください。

「読者の方に驚いて楽しんでほしい!」という気持ちは、ジャンル問わず共通しています。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

いつもありがとうございます。皆さまに恩返しできるよう、これからも頑張ります!