修羅たちによる「最強」vs「最強」を描いた壮絶なバトルファンタジー「異修羅」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで見放題独占配信・YouTube・ABEMAで見逃し配信)。迫力のバトル描写はもちろんのこと、豪華キャスト陣が演じる個性溢れるキャラクターたちが織りなす重厚な人間ドラマも見どころの本作。3月6日に放送された「第十話」は、濫回凌轢ニヒロ(CV:高橋李依)と鵲のダカイ(CV:保志総一朗)の決戦が描かれた「消える厄災」。(以下、ネタバレを含みます)

■キアとの会話に、新たな一面を見せるシャルク

炎に包まれたリチア新公国の市街地。牢屋ではぐれた月嵐のラナ(CV:花守ゆみり)の行方を追っていた赤い紙箋のエレア(CV:能登麻美子)と世界詞のキア(CV:悠木碧)のふたりは、メイジ市兵と遭遇する。自分たちの街を焼かれた兵は、怒りの矛先をエレアたちに向けようとするも、そこへ現れた音斬りシャルク(CV:山寺宏一)に瞬殺されてしまう。さらにシャルクは、エレアたちがリチアの人間ではないことを見抜き素性を尋ねるが、逆にキアに「殺すことはなかった」と責められてしまう。キアのストレートで強気な言葉に思わず笑い声をあげたシャルクは、ふたりをそのまま見逃すのだった。

序盤、修羅であるキアとシャルクが接触するも、交戦には発展しなかった。「第六話」でソウジロウ(CV:梶裕貴)と戦った際のシャルクは、リチア兵たちとの問答に応じることもなく一方的に襲いかかってくるなど、やや戦闘狂らしい一面を見せていたが、今回は少し違っていたように思う。メイジ市兵を殺したところまでは同じだが、キアから「殺すことまではなかったと思うわ」と言われると、笑いながら「そこのお嬢さんの言う通りだった」となぜか納得してしまうのだ。傭兵を生業とするシャルクにとって、人を殺すことは当たり前すぎる行為で、その意味など久しく考えてもいなかったのだろう。物怖じしないキアのストレートな進言は、シャルクに一瞬だけ傭兵になる前、つまり人間だったころの心を思い出させたのかもしれない。最後にキアから名前を聞かれたシャルクは今の名前を明かさず「もうない 生きていたころの名前はな」と答えているが、これまでのシャルクであればこんな物言いはしなかっただろう。短い会話ではあったが、シャルクの新しい一面が垣間見えたシーンだったと思う。

■「盗賊」ダカイ、追い込まれるほどに本領発揮!

リチアの街中を暴れまわっていたニヒロは、噴水広場にてダカイと会敵。わずかな交戦から、ニヒロが魔族であり、ヘルネテンの内部にいることを察知したダカイは、魔剣や糸などで攻撃するも、硬い装甲の前にダメージが通らない。ならばと、ダカイはリチア兵に合図を送り、塔から魔具「冷たい星」を放って直撃させるが、ヘルネテンの装甲はこの攻撃も凌ぎきってみせる。もはや打つ手なしと思われたダカイだったが、ニヒロが張った蜘蛛の糸の反動を利用することでヘルネテンの背中へと貼り付き、さらにソウジロウが斬った傷に剣を突き刺すことで、ヘルネテンの開閉口を作動させる。こうして生身のニヒロと対面したダカイは、容赦無くその首を切り落とすのだった。

ダカイとニヒロの戦いは、前半は完全にニヒロのペースだった。これまでは多数のワイバーンや兵を同時に相手にしていたため、蜘蛛の糸を飛ばす遠距離攻撃と硬い装甲を生かした肉弾戦が主流だった。ところが今回は初めての本格的な一騎打ちということもあり、周囲に蜘蛛の巣を張り巡らせ、その内側で戦うという新たな戦闘スタイルを披露。さらに防御面でも魔具「冷たい星」の直撃にも耐えてみせるなど、難攻不落っぷりを発揮してダカイを追い詰めることに成功。実際、あと一歩だったのは間違いないが、最後はダカイの「盗賊」スタイルが牙を剥き、逆転負けを喫した形だ。ダカイは真っ向勝負で勝ち目はないと判断し、ニヒロの蜘蛛の巣やソウジロウが付けた傷跡を利用、さらには盗み持っていたヒグアレの毒剣を使うなど、何重もの策を用いてヘルネテンの装甲をこじ開けたのだった。ダカイのいちばんの武器は、「異界の身体能力」でも「ラズコートの罰の魔剣」でもなく、「略奪の観察眼」だということを改めて思い知らされたバトルだった。とくに、観察によってヘルネテンの全神経網を把握するという芸当は、おそらくほかの修羅には真似できないだろう。このふたりの激闘には、SNSでも「イケメン度がさらに上がっているダカイ。まつ毛まで美しい!」、「追い詰められるほどに楽しそうなダカイさん、やっぱ客人なんやね」との声があがる一方、「闇夜に光るヘルネテンの目にゾクゾクくる!」、「ヘルネテン、マジでどうやったら勝てるの?」、「やだニヒロ死なないで!!」、「貴重なセクシー担当がぁっ!!」と、ニヒロの活躍に喜ぶ声と退場を惜しむ声にあふれていた。

■エレアとラナ、緊迫感MAXの見事な芝居に注目!

牢屋から逃げ出し、ボロボロの身体を引きずるように塔を登っていくラナ。目の前で海たるヒグアレ(CV:杉田智和)の死んでいく姿を見たことで動揺するラナは、世界詞の恐ろしさに怯え、さらには眼前に広がるリチアの惨状を目の当たりにし、完全に錯乱状態となってしまう。彼女を追ってきたエレアの呼びかけも届かず、塔で拾った「冷たい星」を街中に向けて放つラナだったが、キアが世界詞の能力でそれを霧散させる。さらにキアは、街中に燃え盛る炎を一瞬にして消火すると、ラナに優しい言葉をかける。これまでの会話からキアとエレアの関係に気づいたラナは、エレアにだけ聞こえるよう小声で命乞いをする。するとエレアは僅かに微笑みながら「そんなこと 先生がするわけないじゃないですか」と答えるのだった。

終盤パートでは、キアの規格外の能力が発揮されるとともに、エレアとラナによるMAXにまで張り詰めた緊張感のある芝居が見どころだ。大人の事情を何も知らず、ラナを助けたいという気持ちだけで動くキアに対して、キアとの信頼関係を保ちつつもラナを殺そうとするエレア、そのふたりの関係性を知ったうえで命乞いを働きかけるラナと、その思惑は三者三様。とくにラナの命乞いのシーンは、自分の命が助かるかどうかの瀬戸際でありながらも、キアに聞かれないよう小声でエレアに訴えるというものだが、掠れた声のなかに死にたくないという必死さが滲み出ており、素晴らしい芝居だった。またそれを受けたエレアの「そんなこと 先生がするわけないじゃないですか」という返しがこれまたゾクゾクするほど圧巻で、両者を演じた花守ゆみりと能登麻美子には最大限の拍手を送りたい。SNSでも「ラナの声優さん凄すぎじゃない!?」、「ラストの先生のセリフが怖すぎる!」と、称賛の声が多くあがっていた。

「第八話」のヒグアレに続き、ニヒロが脱落した今回。とくにニヒロは視聴者人気も高いキャラクターだったため、その死を嘆く反応が多かったのが印象的だ。さて次回「第十一話」は3月13日(水)放送予定。期待して待とう。

■文/岡本大介