テレビアニメ「百千さん家のあやかし王子」(毎週金曜深夜0:00-0:30、TOKYO MXほか/ABEMA・Huluほかで配信)の第11話が3月15日(金)に放送された。『思ほゆの棚』で葵の過去の全てを知ったひまりは、那智によって閉ざされた葵たちのいる空間にたどり着く。那智との因縁の対決は観る人が手に汗握るような臨場が溢れた。

■「百千さん家のあやかし王子」とは

本作は、漫画雑誌「ASUKA」(KADOKAWA)にて、2013年から2019年にかけて連載され、累計発行部数110万部以上、10言語で翻訳・出版されるなど海外でも人気を集めている硝音あやによる漫画が原作。亡き両親の遺言状により、山奥の日本家屋を相続することになったヒロイン・百千ひまり(CV:川井田夏海)と、そこに住み着くあやかしたちとの生活が描かれる。

2015年には実写舞台化もされ好評を得た“あやかし系和風ファンタジー”がこの度、満を持してアニメ化された。「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」のボブ白旗が監督を務め、「うちの会社の小さい先輩の話」の蒼樹靖子がシリーズ構成を担当。アニメーション制作はドライブが担当する。

■ひまりの窮地を救ったのはまさかの人物!

万物の記憶が眠る蔵『思ほゆの棚』で、両親の思い出を知ることよりも、葵(CV大塚剛央)の棚を選んだひまり。すると目の前に葵が幼き日の姿で現れる。記憶の彼方に飛ばされたひまりは、そこで葵の過去を知ることとなる。

仕事で家を空けることが多かった父親と、病気でほとんど寝たきりだった母親に育てられた葵。けれど、今よりもやんちゃだった葵には一緒に遊んでくれる“お姉ちゃんたち”がいた。彼女たちが現世の住人ではないと知ったのは母親が亡くなった時だ。「もしかしたら母さんは何か感じていたのかもしれないけど、あの子たちは僕にしか見えない子供たちだった」と葵は振り返る。

その子どもたちも消え、ふさぎ込んでいた葵のために父親が連れてきたのは新しい母親。継母は明るい人で最初は上手くいくと葵も思っていた。けれど、ある日を境に彼女の肩に黒いものが見えるように。見えない継母には自分を怖がらせようとしていると思ったのだろう。一方、自分が悪意あるあやかしに狙われていることに気づいた葵は、両親や友人である日高(CV:山下誠一郎)とも距離を取るようになる。結果的に妊娠中で神経質になっていた継母との関係も悪化してしまった。

そんな時に出会ったのが、那智(CV:羽多野渉)だ。自分と同じくあやかしが見え、ある種の業を背負った苦しみを分かち合える人と出会えてどれほど嬉しかっただろう。けれど、その那智から「君がいなくなったらみんな幸せになるのかもしれない」と言われ、百千家に向かった。お母さんと仲直りしようと一度は引き返した葵。けれど、「お前なんていなくなれ」と継母のお腹からあやかしの声がし、自分のせいで兄弟をあやかしにしてしまった恐怖や罪悪感から逃げるように再び百千家へ。そして、御守様に指名された葵の過去の全てを知ったひまりは、その苦しみに思いを馳せ、涙を流した。

葵への思いを新たに、葵の記憶から出ようとしたひまりだったが、幼い葵が操るあやかしに追いかけられる。生まれながらに業を背負い、そのせいでいつも一人ぼっちだった葵。
必死で逃げるひまりだったが、「いなくならないで。そばにいて」という声に後ろ髪を引かれる。その時、目の前に現れたのは鳥居さん(CV:佐藤未奈子)だった。かつてひまりのおかげで成仏することができた彼女は恩返しするかのように、ひまりの手を引いて出口まで送り届ける。まさかの援護に感動する視聴者が相次いだ。


■少年漫画さながらの迫力ある那智との戦いにハラハラドキドキ

強力な助っ人のおかげで葵のもとに辿り着いたひまり。ここまで鳥居さんだけではなく、火車(CV:八代拓)、猫ばぁば(CV:本田貴子)、八渦(CV:阿部敦)にも助けてもらった。あやかしが人を助けたというひまりに、那智は驚きを隠せない。彼にとって、あやかしは自分を苦しめる存在でしかなかったからだ。

那智は自分と同じように人と少し違う力を持つがゆえに親から疎まれ、誰からも理解されない苦しみを知る葵を“もう一人の僕”と称する。けれど、ひまりは葵がそれでもあやかしを恨むことなく、笑顔で彼らと暮らしてきたことを知っている。

「葵は辛いことを全部飲み込んで笑える強い人なの!だから那智先生、あなたとは違う!」

そんなひまりの言葉に逆上した那智は彼女を攻撃するが、すんでのところで葵が助ける。葵は那智の術を無理やり解いたのだ。呪い返しで傷ついた体で「望まぬ力を背負わされても、決して不幸ではいないと教えてくれた家族がいる……」と那智に訴えかける葵。その大切な家族を守るため、葵は鵺に変身し、紫(CV:立花慎之介)と伊勢(CV:小野友樹)とともに那智と戦う。

那智が率いる無数の式神たちを水や炎の力で次々と片付けていく紫と伊勢。その少年漫画さながらの激しく迫力のあるバトルシーンが注目を集めた。追い詰められた那智は自分にかけた術が制御できなくなる。人とは思えぬような雄叫びをあげ、目からは血を流す那智。鬼へと変貌しようとするその姿はあまりに恐ろしい。暴走を極め、このままでは百千家が破壊されてしまう。もはや鵺が祓わざるを得ない状況に陥るも、ひまりは那智のことも諦めきれなかった。

初めて会った時に相談に乗ってもらったひまりは、那智が本当は優しい人であることを知っているから。那智から心の中の鬼を切り離すべく、「出てけー!」と叫ぶ。結果的に、那智の暴走は収まるが、呪い返しを受けてしまうひまり。すると、葵は初めて出会った時のようにキスで妖気を吸い込む。ひまりは息を吹き返し、家族みんなで笑い合った。どんなことがあっても切れぬ絆。きっと那智はそれを求めていたのだろう。気づくと那智は姿を消していた。一人で山を下る姿が切ない。どうか彼が己の間違いに気づき、葵のように心やすらぐ場所が見つかりますようにと願わずにはいられなかった。

これまでの出来事が繋がる感動的な回となった第11話。クライマックスに向けて映像の臨場感も増し、画面の前の視聴者も手に汗を握ったはず。SNSでは、「色々なことがこの回に繋がってて良かった」「ひまりかっこいい〜!信念が全くブレない子だから本当に見てて気持ちいい主人公だわ」「那智の今後が気になるけど、良い妖や人間に出会って欲しい」「葵とひまりの甘い雰囲気も見れたし満足」という声が上がっている。

次週はついに最終回。平穏が訪れた百千家で、ひまりと葵の関係がどう変化していくのかが気になるところだ。

■文/苫とり子