映画「変な家」が3月15日から公開中。今作は、オカルト専門の動画クリエイター・雨宮(間宮祥太朗)がある一軒家の間取りが変だと相談を受けたことから始まるゾクッとミステリー。明らかに不自然な間取りの家を調べるうちに、ある死体遺棄事件が世間を騒がせる。ミステリー愛好家の設計士・栗原(佐藤二朗)と共に不可解の間取りについて調べる雨宮を演じる間宮にインタビューを実施。今作の役どころの裏設定や撮影エピソードなどを聞いた。

■ぜひこのミステリーを体感して

――「変な家」が絶賛公開中ですね。

ようやく映画が公開されて、うれしいですね。雨穴さんのWEB記事とYouTubeで上げられた動画をきっかけに書籍化された小説も、ものすごく人気の作品ですよね。今作は、小説を元に映像化していますが、実際に観てみないと、タイトルだけではどんな映画か全貌が分からないものになっています。

入口は、“間取り”っていう馴染みの深いものになっているので、自然と物語の世界観に入っていけると思うんですよ。後半にこんな出口から出ると思わなかったという面白さのある作品に完成しているので、ぜひこのミステリーを体感して欲しいです。

――間宮さんは“雨男”の名前で活躍するオカルトクリエイターの雨宮を演じていますが、ご自身はオカルトや怖い話など、お好きなんですか?

詳しいわけではないですけど、好きではありますね。あまり怖がりじゃないので。今はNetflixなど配信でも充実しているので、そういった動画をチェックすることもあります。

――今作の原案の雨穴さんの動画も拝見されたそうですね。

はい。最初、マネージャーから面白い動画があると勧められたんです。「20分の動画はちょっと長いから、今はいいよ」ってやんわり断ったら、出演する作品の原案だから観るように言われて。「それを最初から言ってよ〜」っていうやりとりをして観ました(笑)。

とにかく雨穴さんの語り口調が面白くて。これからどういう所に着眼していくんだろう…と続きが気になってしまう好奇心を掻き立てられる動画で20分があっと言う間でした。

■雨宮役は好奇心を軸に演じた

――雨宮は、マネージャーから引っ越し予定の一軒家の間取りが変と相談を受けたことから、この家の間取りの謎をYouTubeで取り上げようと追求していきます。役を演じるうえでのこだわりは?

僕が念頭に置いていたのは、“好奇心”を持っている人間に見せられたらということ。間取りが“変な家”の謎を暴いていこうとする雨宮がヒーローみたいに見えても違うなと思ったんですよね。真実を知りたいという好奇心を軸に演じました。

雨宮は、バズるような動画を生み出さなくてはいけないのに上手くいってない焦りの気持ちを持っていて。この変な間取りの家のネタをきっかけに自分のチャンネルが上向きになることで、自分自身のマインドも変えたいという気持ちもどこかあるんじゃないかな、と。

――なるほど。雨宮にはクリエイターとしても成功して、今の自分を変えたい気持ちもどこかにあるという裏設定が間宮さんの中にあったんですね。

「なかなか上手くいかないなぁ…」って思いながら毎日を生きていて、お金を稼ぐために納得いかない気持ちがありながらも適当な動画をアップしているんじゃないかなと。自分の中で、どこか惰性で生きている心のサイクルを変えたいと思っていて。そのきっかけが変な間取りの家によって生まれたから、この変な家に執着したんじゃないかと思います。

――前半と後半では印象が変わるキャラクターだと思いました。最初は、ネタのためなら何でもやるYouTuberという印象でしたが、後半はどんどんカッコいい印象になりました。

これは個人の意見ですけど、雨宮はカメラとかフィルターを通すと、普段とは距離感が変わってしまうところがあるんじゃないかなと感じました。危険な状況に置かれても、カメラを片手に回してしまう。目の前で現実に起きていることと、画面の中で起きていることの境界線があいまいになっているのかもしれないなと思いました。

――どんな時も撮影を止めないのは、すごいです。

自分と対象との間に1枚フィルターが入ることによって、突っ込んじゃいけない1歩を踏み込んでしまう勢いが発揮されてしまうのかもしれないですね。

――間宮さん自身もカメラが回っていれば、苦手なこともできてしまうという経験はありますか? 例えば、高所恐怖症なのにカメラが回っていれば高所でも平気…とか。

あまりないですかね。そもそも苦手なことがないんです。閉所がダメとか、高所がダメとかもなく。劇中では、うじ虫が至る所に出て来ますけど、もじもあれを手でつかむ演出があったとしても、全然平気です(笑)。何のためらいもなくできます。

――すごいです! 「カメラが回っていれば苦手なことも何でもできますよ」とおっしゃるのかと思ったら、苦手なことがないとは…。壁ドンとか、頭ポンポンとか、照れ臭い恋の場面は、本番じゃないと照れちゃってできないみたいなことはあります?

それは、カメラが回っていても、あまりできないです!(笑)。

■雨宮と栗原のバディ感は奇妙だけどかわいらしい

――変な家の一軒家は、間取りの問題もあってセットを組んで撮影したそうですが、どんな雰囲気のセットでしたか。

既存の家で、劇中に登場する変な間取りの家をみつけるのは、難しいですからね。セットだから、撮影前提で作られていて、間取り図のように上から俯瞰で撮ることもできました。美術さんがすばらしいクオリティで作ってくださったので、俳優部は雰囲気も作りやすく、演じやすかったですよ。

――セットとはいえ、怪しい間取りの家に身を置くと、恐怖感を感じるものですか?

僕はとくにですが…。佐藤二朗さんは感じていたみたいですけどね(笑)。僕は「これ、映像にしてカメラのフィルターを通して見ると怖いだろうな」とは、イメージは湧きましたけど。ちょっと怖いな、居心地悪いなという感情はなかったです。

――そうなんですか。それにしても、雨宮とタッグを組んで、間取りの真実に迫る栗原さん役の佐藤二朗さんとのバディぶりが絶妙でした。

雨宮と栗原さんのバディは、奇妙だけどかわいらしいものになったらいいなと、二朗さんや監督と一緒にいろいろ見え方を考えました。映画のストーリー上のものとは別の軸として、雨宮と栗原さんのふたりをずっと見ていたくなるものになったらいいなと思っていました。

■間取りを見て立体化したイメージを考えられる

――ちなみに間宮さんは、変な家での恐怖体験はありますか?

18歳くらいですかね、それぐらいの年齢から1人暮らしをしていたんですけど、これまでに間取りは変な間取りに出会ったことはないですね。

――普段、お部屋を選ぶ時、間取りは気にされますか?

めちゃくちゃ気にします。僕は間取りを見て立体化したイメージを考えられるほうですね。間取りを見た後に内観の写真を見るとだいたいここが生活導線になるのかな…っていうイメージが湧くので。

――事故物件かどうかは気にして調べることは?

それは気にしないです。今自分がいる場所、どこでも時間をさかのぼったら、戦などで誰か大勢の人が亡くなっている可能性はあるわけじゃないですか。本当に長いスパンで見ると、人の念がないまっさらな場所って存在しないんじゃないかなと思うので、あまり考えないです。

――なるほど。最後にタイトルにかけて最近、体験した変な出来事は?

ポルト国際映画祭でポルトガルに行ったのですが、現地でご飯を食べに行った時に変というか、ビックリしました。メニュー以外に出て来る付け合わせがものすごい量で。4品しか頼んでないのにテーブルがいっぱいになってしまったんです。「あれ? そんな頼んでないのに変だなぁ」と思いましたけど、いい変な話でした(笑)。

◆取材・文/福田恵子