愛知県の大村知事へのリコール運動を巡る署名偽造事件の裁判で、団体の事務局長だった男に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されました。  田中孝博被告(62)は、判決の4時間ほど前の19日午前10時20分頃、自宅から笑顔で現れました。 Q.判決を迎えるが心境は? 田中被告: 「温良恭倹、それだけです。まあ清々しい気持ちで、3年間でしたからね。逮捕されてから1000日、今日まで本当にありがとうございました」 「温良恭倹」=穏やかに謙虚に。孔子の言葉で心情を表しました。  事件の発端は、2019年の「あいちトリエンナーレ」です。

 従軍慰安婦問題などをテーマとした「表現の不自由展・その後」が炎上し、翌年には高須クリニックの高須克弥院長らが、トリエンナーレに補助金を出した大村知事のリコールの署名集めを始めました。

 河村市長も賛同し注目を集めたリコール運動ですが、集まった署名は必要な数の半分にとどまり、さらにその8割が無効と判断されました。

 その後、署名集めの団体のトップを務めた田中被告が、アルバイトを雇って大量の署名を偽造していたことが発覚したのです。

 前代未聞の「民意の偽造」として、地方自治法違反の疑いで逮捕・起訴された田中被告。  これまでの裁判で署名を代筆したと認める一方、「虚偽にリコールを成立させようとしていない」などと主張していました。

 19日の判決で名古屋地裁は、懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡しました。 <大村陽一裁判長> 「住民自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行で、高須院長の歓心を得て自身の政界進出への足場を作ろうとした動機は、厳しい非難に値する」    判決を受けた田中被告は取材に応じず、裁判所を後にしました。