皐月賞2024

[GⅠ皐月賞=2024年4月14日(日曜)3歳、中山競馬場、芝内2000メートル]

 牝馬の皐月賞(14日=中山芝内2000メートル)挑戦というと、一部ファンには2017年ファンディーナの悪夢(1番人気→7着)がよぎるだろうが…。今年のレガレイラにその心配は無用だ。これまで積み上げた「実績」と、その裏にあった“事情”に加え、畏敬の世界ナンバーワンホースとの共通項まで…。今週末、日本競馬史が塗り替わる――。

 牝馬による皐月賞制覇という偉業に挑むレガレイラ。過去の歴史を振り返れば、これがどれだけ困難であるかが分かる。

 グレード制が導入された1984年以降で1頭も勝っていないのはもちろん、1939年の第1回から振り返っても47年トキツカゼと、48年ヒデヒカリの2頭しか勝っていないのだ。

 ちなみに最後に牝馬が挑戦したのは17年のファンディーナ。同じ中山のGⅢフラワーCを5馬身差で圧勝したことから、なんと皐月賞では牡馬を抑えて1番人気に支持されたのだが、結果はあえなく7着に散った。

 が、しかし。今年のレガレイラならば、そんな偉業すらクリアしてしまうかもしれない。

 まずは実績面。前出ファンディーナは中山で重賞を勝っていたとはいえ、あくまで牝馬限定のGⅢ戦。距離も1800メートルだった。対してレガレイラの前走・ホープフルSは皐月賞と同じ中山芝内2000メートル。それも牡馬相手のGⅠだ。この時点でファンディーナとは“格”が違う。

 そのホープフルSの勝ちっぷりも圧巻だった。スタートで後手に回ると、道中は後方3番手から。おまけに4コーナーでは前がゴチャついてカニ歩きをしながら大外まで持ち出すロス。ようやく前方がクリアになったのは残り300メートルを過ぎてからだったが、そこからの爆発力がすさまじかった。あっという間に2番手まで上がると、最後は先に抜け出したシンエンペラーをかわしてフィニッシュ。ラスト2ハロン12秒0ー11秒5の上がり勝負を直線だけで差し切った切れ味は、まさに“ケタ違い”だった。

 それでいて担当の楠友廣助手は“反省”を交えながら当時を振り返る。

「2走前のアイビーS(3着)がメンタル的にのんびりした感じだったので、前回は強気に調教して気持ちを乗せていきました。結果、いい状態に持っていけて、勝利を収めることもできたのですが、レースではゲートを出た後の進みが悪くて、課題も残りました。引き続き舞台は同じですけど、ポジションを取れるに越したことはないと思うので、この中間は普段から動き出しの“一歩目”の質を上げられるように意識して調教しています」

 ちなみに、この楠助手は昨年まで“世界最強馬”イクイノックスも手がけていたのだが、最近のレガレイラを見ていて、イクイノックスを扱っていた時と似たような感覚を味わっているのだという。

「先月中旬にノーザンファーム天栄から帰厩して乗り進めてきましたが、当初は馬がすっとぼけたような感じだったんです。でも、2週前追い切りあたりから一気に馬が変わってきて、北村宏さんに乗ってもらった1週前追い切りでは時計、動きともに抜群の内容(南ウッド6ハロン81・3ー36・5ー10・9秒)。それでいてカイバ食いや毛ヅヤも良好で、まだ“余白”がありそうなのもいいですね。思い返せばイクイノックスもそうでした。オンとオフの切り替えが上手なんです。休養モードと競馬モード、馬房と調教場、トレセンと競馬場…。レガレイラもまさにそんな感じで『そうそう。こういう馬が“走る馬”なんだよな』って改めて思っているところです」

 主戦・ルメールの負傷離脱により、8日朝の時点では代わりの鞍上は不明。しかし、担当者の口から“世界最強馬”の名前が引き合いに出されたのなら、「たとえ誰が騎乗したとしても…」と考えても、決して乱暴ではないだろう。

 勝てば76年ぶりの快挙。日曜の中山競馬場では、歴史的瞬間をこの目に焼き付けたいと思っている。

計り知れない潜在能力をレガレイラ(手前)が中山で発揮する
計り知れない潜在能力をレガレイラ(手前)が中山で発揮する

著者:藤井 真俊